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ギボシムシの骨片が明らかにする、棘皮動物の骨格の起源海の生物進化の謎に迫る

海底でひっそりと暮らす奇妙な生物であるギボシムシ。その小さな体に隠された微小骨片が海の生物進化における大きな謎を解き明かす鍵を握っているかもしれません。

モントリオール大学の研究チームは、8種類のギボシムシの骨片の形状と鉱物組成を詳細に分析しました。その結果、ギボシムシの骨片は炭酸カルシウムの3つの多形(カルサイト、アラゴナイト、バテライト)すべてで構成されていることが判明しました。これは、ギボシムシの骨片が多様な鉱物組成を持つことを示す初めての発見です。

棘皮動物との意外なつながり

ギボシムシはヒトデやウニなどの棘皮動物とともに、棘皮動物上門と呼ばれるグループに属しています。棘皮動物は体中にカルサイトでできた骨片を持ち、それらが組み合わさって複雑な骨格を形成していることが知られています。

今回の研究でギボシムシの骨片もカルサイトでできていることが明らかになったことから、ギボシムシと棘皮動物の骨格の起源は同じであり、進化の過程で共通の祖先から分岐した可能性が考えられます。

共通祖先の姿を求めて

研究チームは棘皮動物上門の進化系統樹を作成し、骨片の鉱物組成をマッピングしました。その結果、棘皮動物上門の共通祖先は微小で球状のカルサイト骨片を持っていた可能性が高いことが示唆されました。

この祖先はエディアカラ紀(約6億3500万年前~5億4100万年前)に生息していたと推測されます。その後、カンブリア紀(約5億4100万年前~4億8540万年前)に入ると棘皮動物の系統では骨片が大きく複雑化し、互いに組み合わさって体を覆う骨格へと進化していきました。一方、ギボシムシの系統では骨片は微小なままであり、多様な鉱物組成を持つようになりました。

骨片の機能と進化の謎

ギボシムシの骨片の機能はまだ完全には解明されていません。しかし、骨片が体の表面近くに存在することから、外敵から身を守る、海底で体を支える、代謝産物を貯蔵する、血液のpHを調節するなどの役割を果たしている可能性が考えられます。

引用元

タイトル:Acorn worm ossicle ultrastructure and composition and the origin of the echinoderm skeleton
URL:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.220773
著者:Charles Larouche-Bilodeau and Christopher B. Cameron

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