群れの中心は安全? イモムシの生存戦略に新たな発見
生物が群れを作る理由は行動生態学の大きなテーマです。群れることで捕食リスクが減る「希薄効果」は有名ですが、群れのどの位置にいるかでその恩恵は異なる可能性があります。英国ブリストル大学の研究チームは人工のイモムシを用いた実験で鳥による捕食リスクが群れの位置によって異なることを実証し、さらに警告色がこの効果を強めることを示しました。
ハミルトンが提唱した「利己的な群れ」仮説では、個体は周囲を仲間で囲むことで捕食者に狙われる確率である「危険領域」を最小限に抑えようとするとされています。つまり、群れの外側にいる個体は捕食リスクが高く、中心にいる個体はより安全ということになります。これは「周縁捕食」とも呼ばれ、シミュレーションや一部の動物実験で支持されていますがイモムシなどの昆虫では十分に検証されていませんでした。
そこで研究チームは人工イモムシを用いて鳥による捕食リスクを調べる実験を行いました。人工イモムシは無毒だが警告色のないものと、無毒で警告色のあるものの2種類を用意。それぞれを、6匹ずつ集めた「群れ」と群れから離れた場所に置いた「単独」の2つのパターンで配置し、鳥がどのように捕食するかを観察しました。
その結果、群れの外側にいるイモムシは中心部に比べて捕食される確率が有意に高くなりました。これは、鳥が群れの外側を狙い撃ちしていることを示していて、「利己的な群れ」仮説を支持する結果となりました。さらに興味深いことに、警告色のあるイモムシの場合群れでいると単独でいるよりも捕食される確率が大幅に低下することが判明しました。これは、警告色の効果が群れでいることで増幅され、鳥が積極的に群れを避けるようになるためと考えられます。
この研究はイモムシの群れ形成行動における位置取りの重要性と警告色がその効果をさらに高める可能性を示した点で画期的です。今後、より詳細なメカニズムの解明や他の捕食者に対する効果など、さらなる研究が期待されます。
引用元
タイトル:Selfish herd effects in aggregated caterpillars and their interaction with warning signals
URL:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsbl.2024.0050
著者:Rami Kersh-Mellor, Stephen H. Montgomery and Callum F. McLellan