住処を巡る戦いの行方は?シオマネキたちの争い
限られた資源を巡る競争は種間または種内において激化し、個体数の減少や絶滅に繋がることが懸念されています。
オーストラリアのダーウィンにあるイーストポイント沿岸保護区では近年、興味深い現象が観察されています。これまで単一種で生息していたシオマネキの一種であるアウストルカ・ミヨベルギ(Austruca mjoebergi)の生息域に、より大型のタブカ・エレガンス(Tabuca elegans)が進出してきています。
これまで、異なる種のシオマネキは泥の質や干満の差など、環境への適応の違いによって住み分けをしていると考えられてきました。しかし、今回のケースのように環境の変化によってこれまで接点のなかった種が出会った時、どのようなことが起きるのでしょうか?
豪国立大学などの研究チームはこの2種のシオマネキを対象に、異種間における競争の影響を調査しました。
大型種タブカ・エレガンスの侵略
調査の結果、タブカ・エレガンスは積極的にアウストルカ・ミヨベルギの巣穴を奪おうとする行動が見られました。実験では、タブカ・エレガンスは75%の確率でアウストルカ・ミヨベルギを巣穴から追い出し、自身の住処としていました。
興味深いことに、タブカ・エレガンスは攻撃対象を選ぶ際に、相手が同種か異種かを区別していないことが明らかになりました。通常、シオマネキは体の小さな個体を攻撃対象とすることで、戦いに勝利する確率を高めようとします。しかし、タブカ・エレガンスはアウストルカ・ミヨベルギの体格差に関わらず、攻撃を仕掛けていたのです。
隣人関係:新規参入と定住後の変化
新たにタブカ・エレガンスが隣人として現れた場合、アウストルカ・ミヨベルギは同種が隣人となった場合と比べて、より多くの威嚇行動を示すことがわかりました。しかし、戦闘時間や激しい戦闘に発展する回数には大きな違いは見られませんでした。
また、既にタブカ・エレガンスが隣人として定着している場合、アウストルカ・ミヨベルギは巣穴間の距離が同種同士の場合よりも離れていることが明らかになりました。これは、タブカ・エレガンスがより広い縄張りを主張していることを示唆しています。
一方で、定着後のタブカ・エレガンスは巣穴の中で過ごす時間が長くなる傾向が見られました。これは、アウストルカ・ミヨベルギにとって採餌や求愛活動の時間が増えることを意味しますが、巣穴の外で活動する時間は、同種が隣人の場合と比べて、有意な差は見られませんでした。
引用元
タイトル:Territorial battles between fiddler crab species
URL:https://royalsocietypublishing.org/doi/10.1098/rsos.160621
著者:H. L. Clark and P. R. Y. Backwell