シャコガイに学ぶ驚異的な光合成効率の秘密
太陽光エネルギーを最大限に活用する光合成システムとは?これは長年の課題でした。植物は太陽光エネルギーのわずか数%しかバイオマスに変換できず、その効率の悪さが課題でした。しかし、熱帯の海に生息するシャコガイはほぼ100%に近い効率で光合成を行っている可能性があることが、最近の研究で明らかになりました。
シャコガイは体内に共生する単細胞藻類の光合成によってエネルギーを得ています。これまでの研究で、シャコガイの組織は入射光を効率的に利用できる特殊な構造を持つことが分かっていました。
今回、米国の研究チームはシャコガイの組織構造に着想を得て、光合成の効率を最大化する新しい物理モデルを開発しました。このモデルはシャコガイの組織を上面で光を散乱し、側面に均一に光を分配する円柱構造として単純化しています。側面には藻類が配置され、散乱光を効率的に吸収できるようになっています。
研究チームはこのモデルを用いて、様々な光条件下における光合成効率を計算しました。その結果、このモデルは従来のランダムな藻類の配置と比較して、最大12倍も高い光合成効率を達成できることが示されました。さらに、シャコガイが外套膜を膨らませたり縮ませたりすることで、円柱の形状を変化させ光の散乱を調整することで、さらに高い効率を達成できる可能性もあるといいます。実際、研究チームは生きたシャコガイを観察することで、外套膜の膨張と収縮によって藻類カラム間の距離が変化することを確認しました。
興味深いのは、このモデルがシャコガイの組織だけでなく、他の光合成システムにも応用できる可能性がある点です。例えば、針葉樹林は樹木が円柱、雲が光の散乱体として機能することで、シャコガイと同様のメカニズムで光合成効率を高めている可能性があります。
今回の研究成果は、藻類バイオ燃料の効率的な生産や持続可能なバイオマス収穫のための土地利用の最小化など、将来の光合成システム設計に重要な指針を与えるものとして期待されています。特に、シャコガイの組織構造を模倣したバイオリアクターの開発や太陽光発電材料への応用など、幅広い分野への応用が期待されます。
引用元
タイトル:Simple Mechanism for Optimal Light-Use Efficiency of Photosynthesis Inspired by Giant Clams
URL:https://journals.aps.org/prxenergy/abstract/10.1103/PRXEnergy.3.023014
著者:Amanda L. Holt, Lincoln F. Rehm, and Alison M. Sweeney
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