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スバールバル沖のクニポビッチ海嶺で初の熱水噴出孔フィールドを発見

2024年4月26日、ドイツ・ブレーメン大学などの研究チームはノルウェー領スバールバル諸島沖のクニポビッチ海嶺で、熱水噴出孔フィールド「ヨーツン」を発見したと発表しました。これは、全長500kmにも及ぶクニポビッチ海嶺で初めて発見された熱水噴出孔フィールドで、その形成メカニズムや生物活動の解明に大きな期待が寄せられています。

熱水噴出孔とは海底から熱水が噴き出す場所のことです。熱水はマグマの熱で温められた海水が岩石と反応することで生成され、様々な金属やガスを含んでいます。熱水噴出孔周辺にはこの熱水に含まれる物質をエネルギー源とする特殊な生物が生息していて、独自の生態系を形成しています。

熱水噴出孔は世界中の海底で見られますが、その多くはプレートの拡大速度が速い中央海嶺に集中しています。一方、クニポビッチ海嶺のような超低速拡大海嶺はプレートの拡大速度が遅いため、熱水活動も活発ではないと考えられてきました。そのため、これまでクニポビッチ海嶺では熱水噴出孔は発見されていませんでした。

今回の発見は、2022年7月にドイツの調査船「マリア・S・メリアン号」による調査で実現しました。研究チームは、海水中のメタン濃度と酸化還元電位の異常から、熱水噴出孔の存在を示唆する兆候を発見しました。その後、無人探査機(ROV)を用いた海底調査を実施した結果、水深約3000mの地点で熱水が噴き出す複数の噴出孔を発見しました。

「ヨーツン」と名付けられたこの熱水噴出孔フィールドは、活発なブラックスモーカーや低温の熱水が噴き出すチムニーなど様々なタイプの噴出孔で構成されています。ROVによる観察では噴出孔周辺に、熱水に特有の微生物やチューブワームなどの生物が生息していることも確認されました。

さらに、研究チームは噴出孔から噴き出す熱水を採取し、その化学組成を分析しました。その結果、ヨーツンの熱水は他の熱水噴出孔と比べて、メタンやアンモニウムの濃度が非常に高いことが明らかになりました。これは、ヨーツンの熱水が海底下の堆積物と強く反応していることを示しています。

引用元

Bohrmann, G., Streuff, K., Römer, M. et al. Discovery of the first hydrothermal field along the 500-km-long Knipovich Ridge offshore Svalbard (the Jøtul field). Sci Rep 14, 10168 (2024). https://doi.org/10.1038/s41598-024-60802-3
URL
 : https://www.nature.com/articles/s41598-024-60802-3

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