海洋表層温暖化と台風に関する研究(独創性・創造性、着想、研究のための準備、これまでの研究活動)
昨日の続きです。
計画書の中で何を研究するかを明確に記載することは大事なのですが、どうして申請者でないとその研究が実施できないのかをアピールできるとよいと考え、
○台風を特徴づける重要な説明変数の1つである海洋貯熱量を通じて、海洋環境場の特徴や変動を解釈し、大気環境場との関係性を解釈する研究手法は、世界の中でも研究代表者のみが実施し得る試みであり、新しい台風海洋相互作用像を築く点で創造性がある。
と作文しました。「新しい台風海洋相互作用像」は「新しい海洋貯熱量の提案」につながっていて、現在取り組んでいるところです。
□本研究の着想に至った経緯や、関連する国内外の研究動向と本研究の位置づけ
に関しては、2019年に私のまわりで起こった出来事(令和元年房総半島台風と令和元年東日本台風)があまりにも大きく、さらに気象集誌・SOLA合同特集号「2018年・2019年の台風」の編集委員長をやっていたこともあり、正直追い風だったと思います。
研究計画を立てる上で、準備段階として、何をどこまで行っているのかを具体的に記載できると研究を遂行する上で役立ちます。
a. 気象庁55年再解析(JRA55)及びその後継データセット(JRA3Q)
b. 長期海洋再解析データセット(FORA)及び後継となる気象庁海洋客観解析データ
c. Remote Sensing System社 マイクロ波海面水温(日別値)
d. 気象衛星ひまわり8号データセット及び関連プロダクト
と記載したのですが、この他長波放射や降水のデータセットも収集しています。a.についてはERA5も使っていますし、b.は海洋研究開発機構のJCOPEデータを主に使っている状況です。使用しているデータは異なるものの、実施している研究内容は一緒です。
この他、私の武器としては自身で開発した非静力学大気波浪海洋結合モデルがあるというところでしょうか。もちろんこれを動作させるための環境も必要です。
今回研究計画の具体は記載しないのですが、これまでの研究活動として、以下の論文をあげました。本研究実施に関係しそうなものというよりも、申請書で書かれている研究計画を遂行する能力があることを示すためにリストを作成しました。
研究環境としては、これだけのデータを整備し続けることと大きな計算を実施するということで、既存の設備では到底間に合いません。そこで研究環境の中でディスクや計算機資源が必要なことをアピールしました。
とはいうものの、採択されても申請額の6割であり、かつここ数年電気代の高騰や国外の戦争等の事情で円安もあって、研究実施内容は見直すことになってしまいました。もう1つの難題はオープンデータのポリシーですが、これは別の機会に。