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2020年8月 国立新美術館

2020年8月、MANGA都市TOKYOを観に国立新美術館へ。
国立新美術館を訪れるのは2016年のMIYAKE ISSEY展以来。

はじめに

この展覧会は、2018年冬にパリのラ・ヴィレットで開催された「MANGA⇔TOKYO」展の凱旋展とのこと。

美術館に向かう電車の中で本欄展覧会に関する記事を幾つか読んでいたのですが、その中でこちらの記事を読んではっとさせられました。

本企画展はおそらく、クールジャパンの一環として構想されたものではないかと思います。そしてこの企画展、一度会期が延期になっていて、本来は2020年7月8日(水)~2020年9月22日(火・祝)に行われるはずのものでした。この会期を考えるに、これは東京オリンピックで日本を訪れる観光客向けに構想されたものだったんだろうなあと思われます。国外に対して大々的に日本の持つ新しい文化を見せようというときに、この現状が起こってしまったのだと考えるととても切ない。
・・・しかしその裏に、本来あったはずの東京オリンピック、それに基づいたPRがあったのだと想定するととても切ない気持ちになります。

そうですよね、タイミング的にも展示内容的にも、オリンピック目的の訪日外国人に向けての企画展だったんだろうなと思います。

東京でオリンピックで開催することの意義などは色々と意見が分かれることもあるかと思いますが、私は東京という都市が大好きで、世界の他の主要都市と比べても遜色ない場所だと思うので、その東京の魅力を外国の方に伝えられる機会が(少なくとも今回は)失われてしまったのは非常に悲しいです。

ちなみに、私は漫画はそこそこ読むものの、アニメは観ないですしゲームもやらないので、本記事でご紹介する内容もあっさり目であることを予めご了承ください。

イントロダクション

パンフレットに記載されている本展覧会の概要です。

日本のマンガ・アニメ・ゲーム・特撮は、都市<東京>の特徴や変化を、鏡のように映し出してきました。本展は、こうした作品と東京の関係を、大きく3つのセクションに分け、多数の原画や映像と都市模型でたどります。セクション1《破壊と復興の反復》では、災害などで幾度も破壊されながらもその度に復興を遂げてきた東京の歴史と体験から生まれた作品を、セクション2《東京の日常》では江戸から現在にいたる東京の姿とそこで生きる人々の営みを描いた作品を紹介ます。そしてセクション3《キャラクター vs. 都市》では、そうした作品からたくさんのキャラクター達が現実に現れ、都市風景の一部となっている様子を取り上げます。ようこそ、MANGA 都市 TOKYOへ。

こちらで言及されていませんが、本展覧会の目玉はやはり会場入ってすぐ目に入ってくる、1/1000 の縮尺で再現された東京の都市模型です。幅約 17 メートル、長さ約 22 メートルと巨大な模型になっています。ちなみに、本作品は写真撮影が自由になっています。

マンガ・特撮・アニメの映像を映しながら、舞台となっている場所を模型上に照明を当て指し示すという展示で、スタートは「AKIRA」のシーンから始まり、舞台が変わる度に「ーーー>東京駅」といった形で先に場所を占めし、その後該当作品の映像が映し出されます。

「ーーー>佃島」と表示された瞬間に、「ということは次はアレだな」と期待しながら画面を見ていると、やはり「3月のライオン」でした。

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ご存じ「シン・ゴジラ」の「内閣総辞職ビーム」も登場します。写真あまり綺麗に撮影できていませんが。

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ピッカーん、されてます。

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セクション1: 破壊と復興の反復

江戸時代の火事、関東大震災、第二次大戦時の空襲と破壊される度に復興を遂げていく東京が描かれているマンガ・映画・アニメが展示されています。

言わずもがなの「AKIRA」ですが、同じ大友克洋が手掛けた「火要鎮」も江戸時代の度重なる火事を表現している作品として展示されています。映像が非常時美しく魅せられてしまい、本作品が収められている「SHORT PEACE」を帰宅後レンタルして鑑賞致しました。感想はこちらの記事に。

当然存在は前から知っている「帝都物語」。こちらも東京を表象している映画ということで、Amazon Primeビデオで無料(2020年8月30日現在)で提供されているので観てみたのですが、よくわからない感じの映画でした。石田純一さんが出演していますが、若い!佐野史郎さんはあまり変わらない!映画の中で本展覧会と似たような白色の東京の模型も登場します。

映画の後半で登場する銀座のシーンですが、ロケなのかセットなのか気になって調べてみたところ、Wkipediaによると、セットとのこと。

昭島市の昭和の森で総工費3億円、45日間を費やして、銀座4丁目交差点から新橋方面の街並みを150メートル、3000坪にわたって再現[10]。銀座通りを走る市電[注 1]も2000万円を使って製造された。銀座のオープンセットでは、のべ3000人のエキストラを起用。時代考証の細緻さが注目を浴びた。

「帝都物語」の映画自体はよくわからないものでしたが、この巨大なセットを観れただけでも一見の価値はあったかなと思います。

他にも、「人狼 JIN-ROH」や「千年女優」といった作品も気になったので、時間を見つけて観賞しようと考えています。

セクション2: 東京の日常

破壊と復興の中で、人々はどのように生活してきたのかを描いた作品が展示されているセクションです。

大まかに言って、江戸時代 -> 幕末、明治 -> 戦後 -> 高度経済成長期 -> 成長期後の「終わりなき日常」といった枠組みのなかで作品が紹介されています。

ここで展示されていて「読みたいな・観たいな」と思った作品は次の7つ。

「愛と炎」、「34歳無職さん」、「花のズボラ飯」、「『坊ちゃん』の時代」、「秒速5センチメートル」、「残響のテロル」。

あとは「あしたのジョー」。原画と複製原画が展示されているのですが、画の迫力・構成の力強さに驚きました。漫画読んでみたいと思うのですが、きっとコミックスのサイズと紙質になると、原画の迫力は損なわれてしまうんだろうな。。。

セクション3: キャラクター vs. 都市

最後のセクション。私はキャラクター好きというわけではないので、ここのセクションはさらりと流しながら観覧。

まとめ

巨大な東京都市模型と3つのセクションで構成されている本展覧会は非常に展示作品も多く、料金も「一般 1,600円 / 大学生 1,200円 / 高校生 800円」とリーズナブルで間違いなくお勧めです。(注:観覧にあたっては事前予約&支払い必要です。)

作品数の多さから、比較的観るスピードが速い私も全て観るのに50分程かかりましたので、観覧の際はお時間に余裕をもって計画されることをお勧めいたします。

「君の名は。」含めて新海誠作品、一度も観たことがないのですが、本展覧会で紹介されていた、「君の名は。」、「秒速5センチメートル」、「言の葉の庭」の東京の描写がエモ美しかったので、次の週末にこれらの作品を一気に鑑賞しようとかなと思います。

おまけ

本展覧会の準備業務についての報告書が公開されています。

MANGA都市TOKYO ニッポンのマンガ・アニメ・ゲーム・特撮2020 中間報告書

展覧会開催の背景、作品選定の進め方などが語られているキューレーター方々の会話部分を読むと、展覧会を振り返りながら楽しむことができますので、文章読むのが苦ではない方にはお勧めです。

最後に「トラベラーズ・アイ」について言及されていた箇所の引用を。

海外旅行から帰ってくると、まるで自分が異邦人になったような気持ちで自国を見てしまうトラベラーズ・アイと言われる感覚を持つことがありますが、「MANGA都市TOKYO」展にはそういった効果も生まれうるのではないかと期待しています。フィクションを通じて東京という都市を見直すことによって、旅行者たる来場者は、現実の都市にも新たな発見ができる。その効果は、展示品がパリから戻ってきたことによって一層高まると思います。

海外旅行は無論、国内でも遠出が決して簡単でなくなってしまった今、フィクションを通して「トラベラーズ・アイ」を得て、日常の中に今まで見つけられていなかった差異を見出し、驚き・感動し・楽しむっても悪くない。

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