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Black Bottom Stomp
「ブラック・ボトム・ストンプ」は1925年にジェリー・ロール・モートンJelly Roll Mortonによって書かれたジャズ・ナンバー。トラッドジャズの大スタンダードである。
ストンプ stompとは「速いテンポと激しいビートの曲や歌。軽快なダンスで、ミュージシャンもダンサーも演奏中に実際に足を踏み鳴らしていた」ことからつけられた(Gallichio, 2019)。
ジェリー・ロール・モートンのリハーサル方法
モートンのバンドの録音がこの曲の模範となっている。モートンのアレンジが秀逸でかれのバンド、レッド・ホット・ペッパーズでクラリネットを吹いていたオマー・シメモン Omer Simeonが録音に前にモートンの家に集まりリハーサルをしていたときのことをつぎのように回想している。文中に出てくるウォルター・メルローズはモートンと一緒にシカゴで音楽の出版会社を経営した人物。
[ジェリー・ロール・モートンの家でリハをしていると、ウォルター・メルローズはかれの店からたくさんの楽譜を持ってくるんだ。]おれたちが演奏する曲のほとんどはジェリーが前もってアレンジしていて、メルローズが出版したものだった。ジェリーは、[曲中で]おれたちが気に入った箇所に印をつけていた。楽譜はすぐ手に取れるところにおいてあって、つねになにかを書いたり細かい修正を加えたりしていた。ジェリーはソロにかんしてはおれたちに全部任せていたんだけど、バッキングやハーモニーや短いフレーズなどはかれがすべてアレンジしていた。一緒に演奏するのもすごくやりやすかったし、かれはやりたいことをすべてちゃんと説明してくれた。録音の前にジェリーの家で2、3回リハをするんだけど、メルローズが5ドル払ってくれるんだ。リハで給料をもらったのは後にも先にもこれがはじめてだったな。
こうしたリハーサルとモートンの的確なアレンジと指示によってブラック・ボトム・ストンプはバンドにとってのはじめてのヒットとなった。
録音
Jelly Roll Morton's Red Hot Peppers (Chicago September 15, 1926)
Jelly Roll Morton (Piano); Omer Simeon (Clarinet); George Mitchell (Cornet); Kid Ory (Trombone); Johnny St. Cyr (Banjo); John Lindsay (Bass); Andrew Hilaire (Drums)
4/4のドライブ感の強い録音。とくにニューオーリンズ・ジャズからシカゴ・ジャズへの過渡期の録音と言えるかもしれない。とくにここで聴けるクラリネットはまさにニューオーリンズ・ジャズといった感じ。さまざまに分析される録音だが、ここで展開されるクラリネットのソロとバンジョーのソロがすき。
Andrew Oliver and David Horniblow (London, September 24 2018)
Andrew Oliver (Piano); David Horniblow (Clarinet, Bass Saxophone)
2019年のタイムス誌のジャズアルバム・トップ10にも選ばれたThe Complete Morton Projectでの録音。素晴らしい。二人だけのシンプルな構成なんだけど、音はとてもダイナミックですさまじいスイングになっている。アンドリュー・オリヴァーは、イギリスとアメリカの両方で活動していて現在のトラッド・ジャズに志向するジャズ・ピアニストのなかではもっとも活躍している人物の一人かもしれない。デイヴィッド・ホーニブロウはレディングの出身でかれもまたヨーロッパのトラッド・ジャズ界隈で大活躍している。ここではクラリネットとベース・サックスの両方を吹いていて素晴らしいソロを聴かせてくれる。
参考文献
Gallichio, Shelly. (2019, June 25). “New Orleans: The Land of a Thousand (Jazz) Dances” The Syncopated Times. https://syncopatedtimes.com/new-orleans-the-land-of-a-thousand-jazz-dances/
Jasen, David A. & Jones, Gene. (2002). Black Bottom Stomp: Eight Masters of Ragtime and Early Jazz. Oxon: Routledge.
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