現場の声を届け、施策に繋げる。「学校の現実を議員さんに伝える会」イベントレポート
School Voice Project は、100名を超える現職・元教職員メンバーの参画によって2021年春にスタートしたプロジェクトです。ミッションは、「学校現場の声を見える化し、対話の文化をつくること」。
私たちがつくりたい「対話の文化」は、学校の中だけに限りません。学校の外には届きづらい声を社会に届けることで、ともにより良い教育をつくっていくことを目指しています。
2022年2月6日は、大阪大学の佐藤功研究室、高校の先生が中心の研究サークル「大阪高生研」の方とともに、「学校の現実を議員さんに伝える会」を開催しました。5名の大阪府議会議員の方(全5会派から1名ずつ)と、大阪府の教職員や学生の方など総勢34名が参加する会となりました。
より良い教育をつくることを目的に、安心して参加できるルールを共有
冒頭で元高校教員で現在は教員養成に携わっている佐藤教授より、イベント開催への思いについて、「教職員の声は社会に届きづらく、議員は学校の現状を知りたいと思ってもなかなか知ることができない。立場はそれぞれだが、共通の目的は大阪のより良い教育をつくること。全国のあちこちで教職員と議員が語り合える場ができれば、さまざまなことが変わってくるのではないか」とお話がありました。
続いて、大阪高生研の城塚さんより、参加者の皆さんが安心して参加できるように、守ってほしいルールのアナウンス。
「『さまざまな考えをもつ方が集まって、みんなでよりよい大阪の教育をつくっていこう』を趣旨とする会です。『この人は○○党だからいい、悪い』と党別で語るような発言や『敵』を叩きのめそうというような発言、『言質をとった』などはお控えください。情報源の秘匿・プライバシー保護について、ご自身のSNS等への掲載も含め、配慮をお願いします」
その後、School Voice Project呼びかけ人の武田から、事前に大阪府下の教職員の方に答えていただいたアンケートの結果を参加者の皆さんに共有。人員の配置に関する予算や人事の仕組み、教育方針についてなど、現場の実情を訴えるさまざまな声が集まっていました。
▼ アンケート結果のまとめはこちらよりご覧ください。
インクルーシブ教育の推進に伴う課題や、チャレンジテストへの懸念も
アンケートの結果を共有したあとは少人数のグループに分かれ、それぞれの立場で感じていることを議員の方に伝えました。
インクルーシブ教育の推進に力を入れてきた大阪府では、特別支援学級に在籍する児童・生徒の多くが通常学級で過ごしており、実質的には通常学級の児童・生徒数が1学級40人を超えることもあるそう。そのような現状に対し、負担の大きさを訴える声が目立ちました。
大阪府の取り組みの1つでもあるチャレンジテストについては、「その結果で学校や教員を評価するのはやめてほしい」「ペーパーテストで点数が取れる子どもを育てることが良い教育とされる風潮がある」などと、実施や運用に対する懸念の声が聞かれました。
スクールソーシャルワーカー(SSW)を務める方からは、児童・生徒が性教育を受けるための制度が整っておらず、それによって望まない妊娠に繋がったり、加害者となるリスクがあることが伝えられました。性教育を充実させるためには、外部講師を招くための費用の確保が必要だと言います。また、スクールソーシャルワーカーやスクールカウンセラーは配置の重要性が高い一方で、待遇が不十分である点も強調して伝えられました。
参加した議員の方からは、「苦労を感じた。教育は過渡期にあり、新型コロナウイルスの流行によってさまざまな問題が浮き彫りになった」「教員の不足が何より問題。各学校に専任で配置できる人員を確保したい」「性被害が拡大しており、性教育を促進していくべき」など、教職員の一人ひとりの声に耳を傾け、丁寧に答えられていました。
参加された方の声
< 教職員より >
< 議員の方 >
まとめ
School Voice Projectとしては初の試みとなった、教職員の方と議員の方の対話の場づくり。想像以上に多くの方にお集まりいただき、それぞれの立場を尊重し合いながら思いを聴き合う時間をつくることができました。
学校現場の実情がうまく議員に伝わらず、現場の思いが届かない状態で政策決定がなされることは少なくありません。今回のような対話の場は、議員の方に学校の実情を知ってもらうことに繋がり、前向きに現場の課題を解決できる可能性が高まります。今後は大阪に限らず、全国の都道府県で開催していくことを目指しています。
イベントの様子は朝日新聞デジタル、日本教育新聞電子版でも取り上げていただきました
School Voice Project は、学校現場の声を集めるWEBアンケートサイト「フキダシ」を運営しています。特徴的なのは、数値的なデータだけではなく、現場の「声」を丁寧に聴く質問が含まれているところ。集まったアンケートは、公式note「メガホン」で発信しています。
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(文:建石 尚子)