2020’sの若者キャリア論(その2) 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)
※ 本稿は、一般社団法人スクール・トゥ・ワークの2019年5月25日付ブログ記事「2020’sの若者キャリア論 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)②」の転載です。
2020年代の若者キャリアはどうなっていくのか。今回は、非大卒向けキャリア支援サービスの「サムライキャリア」などを運営する株式会社前人未到の牛島悟さんと対談します。
前回 2020’sの若者キャリア論(その1) 牛島悟(前人未到CEO) × 古屋星斗(スクール・トゥ・ワーク代表理事)
古屋:
興味深いです。若者のキャリアを研究していて、最近若者のキャリア観がかなり変わってきていると思っています。ですが、大企業の人事とかがそれに追い付いていけていないと思っています。ある大手商社なんですけど、20代が退職しすぎていて、そしてその多くがベンチャー企業に行くというのを聞きます。
でも、企業の人事の偉い人はなぜ辞めていくか分からないそうなんです。大手商社さんなんかは30歳時点の平均年収が1,000万円前後ですし、ベンチャーに行くと2割から3割以上下がるのになぜ辞めていくか理解ができない。
ただ、辞めていく彼らに話を聞いていくと明らかに合理的な理由で辞めていくんですよ。理由は、ずばり「安定志向」。自分のスキルを様々な場所で身に付けることによって、それが安定につながると彼らは答えるんですよ。
牛島:
私もそのお話はあると思います。私は「時間軸」で見られていないっていうのが問題だと思っています。
古屋:
そうですね。また、もし商社に100%フルコミットではなくて、他に20%その他にも20%みたいな選択肢があれば若手の選択は異なると思います。つまり、今の大企業がやろうとしていることは、若者に「国債を100%買え」と言っているようなものなんですね。
大企業だけでキャリアを作るという国債のような長期安定的だけどあんまり期待ができない仕事を。投資家で国債だけ買う人は馬鹿ですよね(笑)。
普通は、「国債も2割買うけど、JASDAQの株も2割買って」みたいな、その発想に近い感覚が出てきているのではないかと。大企業はそういう子たちに対して阻むことはするのですが、応援するということはしないんですよね。
そして、優秀な人材をため込んでいて非常にもったいない。私はその中でももったいないなと思うのが高卒の子たちで、毎年17万人くらい就職しているのですけれども、その内の4割が3年以内に離職してしまうんですよ。
それが凄くもったいないなと思っていて、よく女性の方やシニアの方たちの活用は世間で言われるんですけど、「人材の第3の埋蔵金」だと私は思っています。
牛島:
当たり前ですが、仕事において大事なものは学歴ではなく経験じゃないですか。高卒の子たちってファーストキャリアにおいて、サービスの高度化が起きていないっていうのが最大の要因だと思うんですよね。
少し適当な例えですけど、高卒の子が草取りの仕事をしていて、大卒の人は営業に行きます。これだと、営業の人は草取りもできるじゃないですか。でも、草取りの仕事の人は営業はできないんですよね。それでこの二人を比較すると、本当はできないわけじゃないけど「やらせてないしできない」と判断するわけなんです。
個々に明確に線が引かれている。ファーストキャリアでまず、職務領域を選べないというのが問題になっていますよね。そこを解消するだけで、インパクトは起こるのかなって思いますね。結局その営業職のような経験をすることが選べるだけで、高卒者の進路選択に大きな影響がありますよね。
古屋:
確かにおっしゃるとおりですね。大卒で製造業に就職する人は10%程度なのですが、高卒で就職する人は40%もいるんですよね。これは普通に、産業構造などからの論理的な説明ができないじゃないですか。
何かしらの「引力」が働いているからこうなっているわけで、社会全体を見ると、製造業の就業者ってもはや15%程度なのに、なぜか高卒者は半分近くの人が行っているのだと疑問に思いますよね。
牛島:
そうですね。理由としては地方から見たときに地方の雇用を守るというのと、もう一つは、先輩も行っているし、先生も推し進めるので疑う余地がないということだと思うんですよね。
この前お笑い芸人の高卒の人が就職する際に、先生から強烈な「クロージング」を受けたというのをインタビュー記事で読みました。そこでの内容が、15社くらいリストがあって、半分製造業のもう半分が飲食みたいな感じで、「早く選ばないと先輩にも後輩にも迷惑がかかるよ」みたいなことを教師から言われたらしいです。
古屋:
私も聞いたことがあります(笑)。なんかそれって大学の理系の研究室に似ていますよね。3年以内に辞めたら後輩が来られなくなるみたいな。推薦が取れないっていう話ですよね。
あと、私は教師の方々の大多数が、民間を経験したことないのに進路指導を行うのは限界があるのではないかとも思っています。
牛島:
それは私も思います(笑)。教師の95%が民間未経験ですから。
古屋:
そうですよね。先ほどの高校生の問題ですが、今後偏差値の高い通信高校なんかが増えてくると思います。クラーク高校やN高なんかは学校全体ではまだそれほど高くはないのですが、偏差値が突出して高い子たちがいるんですよね。例えば、桜蔭中学出身の女の子がN高に入っているんですよね。
普通に学ぶより、自分のやりたいことやった方がいいと考えるような子たちが入ってきているんですよね。それで、N高生に聞くと最近流行っているのがクラウドファンディングなんだそうです。
クラウドファンディングで学費を集めるのが流行っているそうです。ある子は沖縄県出身で親から仕送りなど一銭ももらっていません、それをYouTubeにアップしてクラウドファンディングで募集をかけているそうです。日頃はオープンスペースのカフェなどで勉強をしている。そんな子たちが出てきている。
そこで一つ思ったことが、ハッシャダイに行くような子たちやサムライキャリアに行くような子たちもそうですが、何らかの「きっかけ」になるようなものがあると思うんですよね。
それが「人」だったり、「情報」だったりする。今までの高校生は「人」経由で就職していたと思うのですが、今の子たちって人以外にも面白いブログを読んだとか、Twitterがきっかけとなったというか、「きっかけ」の強度が弱くても、今までとは違った動きやキャリアを築く子たちが多いなと思いますね。
牛島:
そうですね、私も個人側、ユーザー側の意識が先に変わってくると思います。そっちの方が早く変わると思っていて、今って情報開示されているので、リテラシーが高い子供が非常に多くなってきているんですよね。
それと今の子たちはSNSが日常にありますが、SNSって日常にありながらも、見たことのない世界の情報があふれているという点では、非日常なんですよね。その非日常と日常のギャップが昔よりも、行動するきっかけに大きく関わっていると思います。
株式会社前人未到 代表取締役社長 牛島悟
福岡出身、新卒で大手メーカーに入社。その後スタートアップ、メガベンチャーにてTOPセールス。AI系ベンチャー企業上場を牽引後、起業。
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク 代表理事 古屋星斗
1986年岐阜県多治見市生まれ。大学・大学院では教育社会学を専攻、専門学校の学びを研究する。卒業後、経済産業省に入省し、社会人基礎力などの産業人材政策、アニメ・ゲームの海外展開、福島の復興、成長戦略の立案に従事。アニメ製作の現場から、仮設住宅まで駆け回る。現在は退官し、民間研究機関で次世代の若者のキャリアづくりを研究する。
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、学生及び早活人材(非大卒人材)に対するキャリア教育事業等を行っています。
私たちは、キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。
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