変わる?学校から仕事への第一歩 (第5回 「七・五・三」現象)
※ 本稿は、一般社団法人スクール・トゥ・ワークの2019年1月21日付ブログ記事「変わる?学校から仕事への第一歩 (第5回 「七・五・三」現象)」に加筆・修正を加えたものです。
一般社団法人スクール・トゥ・ワークの設立を記念して、当団体の活動の目的と背景を知ってもらうために、当団体の代表理事の古屋さん、監事の小松さんと事務局スタッフで非大卒人材の奥間さんと、座談会形式で、「変わる?学校から仕事への第一歩」の連載をお送りしています。
「七・五・三」現象・・・入社後3年で中卒は7割、高卒は5割、大卒は3割辞める!
小松:
第5回のテーマは「七・五・三」現象です。この若手の離職率が高いのが日本の特徴ですが、ここにスクール・トゥ・ワークを議論しなければならない理由があると思います。古屋さん、改めて「七・五・三」現象についてご説明をお願いします!
古屋:
はい。日本の「学校から職業社会へ」を考える際の最大のポイントの一つが、この「七・五・三」に代表される若者の早期離職問題ですね。「七・五・三」とは新卒の3年以内離職率を指します。
これが中卒、高卒、大卒で差があるという話を一言でいうと七・五・三になるんですね。つまり中卒は3年で7割、高卒は5割、大卒は3割辞めるということです。2000年過ぎから一般的に言われるようになったのですが、現在でも概ねこの傾向は続いています。
小松:
いやぁ、随分たくさん辞めますね(苦笑)。奥間さんの周囲はいかがでしょうか?
奥間:
僕の周りでも高卒で就職した人は半分以上が3年以内で離職しています。最初の会社を辞めてからは、アルバイトや派遣社員などの非正規雇用の形で働いている方が多いように感じます。
小松:
古屋さん、統計的にはどのような状況でしょうか?3年で辞めた人がその後どこに行ったか。データはありますか?
古屋:
実はこの点のデータは整っていません。厚労省の統計も沈黙しています。一方でお話を聞くと、物流拠点でピッキングをしていたり、食品加工のお仕事をしていたり、飲食店で働いていたり、とスキルの必要ない軽作業に従事しているケースが見られます。
こういった仕事はテクノロジーによって比較的早期に置き換わる考えられますから、日本の限られた人手を活かす観点でいうとかなり「もったいない」状態ですね。
小松:
そうですね。少子高齢化社会の日本では若者は貴重ですからね。もったいないと思います。 前回、古屋さんは、この「七・五・三」問題は教育関係で知らない人はいないと思うとおっしゃっていましたが、学校や行政関係者で、この問題を解決するような動きはないのでしょうか?
古屋:
非常に難しい質問です。行政では内閣府の青少年白書をはじめ、「七・五・三」問題の言葉を使って日本の早期離職が特殊な状況にあることを提起しています。
一方で、政策的支援は若者自立挑戦プラン以来、マッチングに関する支援がメインで、定着に対する大きな対策は行われていないと言えます。この理由の一つは「マッチングは公的サービスで、その後の定着は企業の責任で」という考えが根底にあります。
つまり、離職は企業と個人の関係の問題であり、そのため、むしろ企業における人材定着支援はビジネスとしては大きな分野になっているのです。
もう一つの理由は、日本のスクール・トゥ・ワークシステムそのものにあります。日本の学生は具体的な職業体験を経ずに直接一つの企業とマッチングします。
このありかた自体が「こんなはずじゃ・・・」といったミスマッチを生みやすい構造にありますし、一定程度辞めていくのは個人的にはむしろ若者の労働マーケットが健全であることを示していると思います。
問題は、単に「多くの若者がミスマッチなところに就職している」ことではなく、その背景にある「若者にキャリアや職業について考える機会を提供できていないために、材料なき選択になっている」という点ではないでしょうか。
小松:
おっしゃるとおり、この問題は原因が一つではない複雑な問題のように思います。「マッチングは公的サービスで、その後の定着は企業の責任で」という考え方については、まさにその考え方の結果が、この現状なのかなと思います。
高卒就職者の就職率は98.1%と驚異的に高いものの、4割ほどの高卒就職者が3年以内に離職しているわけです。そのまま考えれば、高校卒業後の3年後を基準に考えると、約6割の就職率なわけです。
ここの橋渡し、スクール・トゥ・ワークに問題意識を持たないとこの数字は改善されないのだと思います。 あと、古屋さんのおっしゃるとおり、若者のキャリア観の醸成は必須でしょうね。ここは私たち、スクール・トゥ・ワークががんばりましょう(笑)。
一般社団法人スクール・トゥ・ワーク
一般社団法人スクール・トゥ・ワークでは、学生及び早活人材(非大卒人材)に対するキャリア教育事業等を行っています。
私たちは、キャリアを選択する力の育成を通じて、未来を生きる若者全てが安心・納得して働き、その意欲や能力を十分に発揮できる社会の実現を目指します。
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