スクールロイヤーは学校現場と仲良くできるか
専門家連携のいろはのい、キホンのキと、それが本当にまるっきり微塵も分かっていない一部の弁護士たちに幾らかの怒りとありったけの嫌味を込めて。
教育現場に嫌われるロイヤーたち
教育現場に限らずだけど、他の専門家から嫌われる弁護士というのがいる。
自分が弁護士の頃、「現場が弁護士を受け入れてくれない。保守的だ。」みたいなニュアンスでそんな話をされることがあり、まぁそういうもんなのかなと自分も受け止めていた。今の教育委員会で働き始めるときも、自分もそんな鼻つまみ者にならないかとめちゃくちゃビクビクしていた。
ところが、こうして一年以上続けている現在、もちろん意見の対立もあったりするが、相談はそこそこ受けられている状態が続いているし、私の仕事に職場や上司を通じてクレームを出されたことは一度もない(ミスして謝ったことはある)。職場に恵まれたこともあるけど、なんにせよ結果的に自分にとっては全くの杞憂であった。
そんな経験を経た上で、最近、他所から嫌われる弁護士の話を改めて聞いていくと、よくよく嫌われる理由がわかった。
こいつら、すげぇ偉そうで失礼なんだ。
よその専門領域に土足で上がる弁護士たち
なにも言葉遣いが偉そうなわけではない。例えばこんな例だ。
多少脚色はしておくが、実際にあった話。とある弁護士が新しい取り組みを検討したいというので、意見を聞かれ、こんなやりとりがされた。
相手:有志の弁護士でこんなこと始めてみたいんだけど、せきねさん似たこと既にやっているよね?よかったら、意見聞かせて欲しい。
せきね:あーそれやるならカウンセリングとか心理とか福祉の専門的な知識いりますよ。きちんとやるなら弁護士だけでやるならリスクがあります。専門家の研修受けるか、常時裏方で待機してもらう形で体制組めたらやってください。自分のところは他の専門家に何度も助けられたし、いなかったらと思うと本当にゾッとします。
相手:うーんそうかぁ。私は弁護士だってカウンセリングとかやってもいいと思っているし、自分なりに色々心得あるつもりだからそこは大丈夫かなぁー。ありがとう。
(せきね:は?)
もしあなたが、「法律って六法に書いてあるし、インターネット調べれば大体わかるから弁護士要らないよ、ありがとう」って言われたらどう思いますか??素人がなんも分かってないのに甘く見るな、こちとらプロでやってるんだぞ、下手すると取り返しつかないことになるぞって思いますよね???
どうして、自分は資格もなく他の専門分野をきちんとできると思ってるの??そもそも研修さえやろうともしないの??弁護士って神様なの???他の仕事舐めてるの???
と、まぁ今思い出しても、他の専門家に対する失礼さ、そのことが全然わかっていない無自覚さ、厚顔無恥さ、なんの疑問も感じていないセンスの無さに同業者として本当に情けないやら、他分野のお世話になっている専門家に申し訳ないやら、はらわたが煮えくりかえりやがるのですが、こういうことを爽やかな笑顔で悪びれなく言ってくる弁護士が一定数いるわけです。ほんと嫌になる。
専門家、一歩外でりゃただの人
法律って、色んな分野に定めがあるので、弁護士はその資格を持って、ほとんどの分野に首を突っ込むことができる。しかしだからといって、一人でその分野で専門的な正しい判断が出来る訳ではけっしてない。他人の専門領域では、条文の上を綱渡りしながらふらふらと進んで、首を突っ込み、そこから見える景色から警告したり、指示をするだけだ。弁護士が専門性を全開にして自由に能力を発揮できる場所は、やはり裁判だろう。
もちろん、自身の専門性を深める中で、その周辺領域の専門知識に触れたり独学をすることもある。また、弁護士の思考能力があれば、限られた情報でもそれらしい判断を合理的に導ける。ただその判断も、その道の専門家には遠く及ばない。前提とすべき専門的な知識が足らず考慮要素に欠けていたり、そもそも他の専門家特有の捉え方やスキル、ノウハウというのがある。そこさえも弁護士のスキルと自分の能力で補えるのだと思っていたら,本当に傲りでしかない。と思うのだが、先の通りしれっと他の専門家の意見を聞かなくても問題ない、と言ってのける弁護士が現にいるのだ。なんとなく、あちこち首をつっこんだり、深く覗いているうちに万能感に酔っているんだなと思う。それでも基本はあくまで、餅は餅屋、左官の垣根だ。
土足で上がったいじめ予防授業
弁護士特有?の、この配慮のなさへの違和感は、実は弁護士になる前から感じていた。
もともと子ども関係の問題に関わりたかった自分は、司法修習生の頃に、弁護士会の実施するいじめ予防授業を見学させてもらった。そのときに、なんとなく違和感があり、その授業を実施しているグループには一度見学したきりで、足が向かなくなっていた。
なんでなんだろうなーと思いながら、学校の先生をやっている友達と呑んだ時に、こんな授業見てきたんだよねという話をしたら、第一声がこれだった。
「いじめが悪いってことは私たちも言えるよ。児童指導ということなら私たちの仕事の範疇だし、今の内容なら私も話せる。なんで弁護士が私たちの仕事をやってるの?」
言われて気づいたのだけど、その授業では、なぜ弁護士が来たのか、弁護士だから話せるテーマがなんなのかについて全く説明も内容もなかったのだ。ちなみに自分は幸運なことにその後,まさにこの辺りを丁寧に意識した授業に出会えたので,そちらの団体の授業を師事している。
大事なのは相互のリスペクト
不満まじりに色々書いてしまったが、結局は専門家同士、相手の領域へのリスペクトが大事なのだ。
弁護士も、せめて次の内容は最低限の礼儀として身につけて欲しいなと思う。
①相手の領域は素人で、圧倒的な立場の差があるのだという意識を持つ。(頭を下げる)
②相手の領域について踏み込んで意見をするときには、その法的根拠や依拠する専門性を明らかにしてから話す。(自分の専門性をきちんと起点にして、相手の領域への意見を出す)
③相手の領域は,原則、最終判断は相手がするものだという前提で話す(相手方の専門性に基づく裁量)。唯一の例外は、その判断が裁量逸脱と言えるほど著しく不合理な場合のみ(法的に違法となりかねないから法律の専門家として強く意見が言える)。
そんな気遣って関わらないといけないのか?自分は弁護士だぞ?とムッとなる人は,多分自分と仲良くなれないと思う。
私は、人の家に入る時はまず、頭を下げるものだと思っている。そんな私を見て視線が低いとのたまう人は、私から見れば頭が高いな、と感じるだけの話。
そして、どちらが好意的に受け止められるかは、家主に聞いてみればわかるはず。私は学校現場に頭を下げてお邪魔して、ついこの前もお菓子を出されながら談笑しつつ相談を受けている。