スクールロイヤーはいじめ対応の救世主になるか

リーガルマインドは大切だけど、そもそもいじめ防止対策推進法どこまでわかってる?って話。

ニッチないじめ防止対策推進法

前回の話の通り、スクールロイヤーの働き方についてはまだはっきり決めていない文部科学省だけれども、業務内容として、少なくともいじめに関する相談対応をすることは文部科学省も明確に期待している。

しかし、弁護士といっても日本に存在するの法律を全て知っているわけではない。司法試験に受かった弁護士の卵は、受験科目のいわゆる六法については一定のレベル以上の知識があるわけだけど、それ以外の法律についての理解度はバラバラだ。そして、いじめ対応のあり方を定めたいじめ防止対策推進法というのは、興味関心分野として自ら積極的に勉強するか、あるいは、学校のいじめに関する相談を受けなければ一生読まなくてもおかしくない分野である。

リーガルマインドだけでは戦えない、いじめ防止対策推進法

この法律をよく知らなくても、弁護士の他の法律の知識や交渉術で押しきれられるかというと、そこは経験的にもハッキリとNOだといいたい。1番の理由は、社会通念上のいじめのイメージと法律上のいじめの定義がかけ離れまくっている、という特有の問題があることだ。

現場で実際色々対応するときには、このいじめという言葉のイメージを取っ払って考えないといけないくらい、法律上のいじめの定義は広い。そして、それが原因で現場で混乱もするし、保護者も混乱する。そこをきちんと交通整理するとともに、なぜこんな定義がかけ離れまくっているのかきちんと理解し、説明し、説得し、然るべき調査や対応方法をスクールロイヤーは提案しないといけない。

そして、この辺理解して、悩んで運用していかないと、「せきねさんの所では、どうやっていじめの報告しないで対応済ませてるんですか?」みたいな質問が平気で出たりする。(断じていうが、これは私がいない他の自治体の方から言われた質問!)

弁護士が変なお墨付きを与えたり、微妙であったり、最悪間違った手続をするのは本当に危険!本来そこをチェックして、気づくべき弁護士が気づかずそれっぽくできちゃうところも、単独でのスクールロイヤー制度の怖さでもある。いじめ防止対策推進法についてよく知らない弁護士は、本当にスクールロイヤーやめてほしいと感じている。

欲しいのは、知識だけではなく知恵

そもそもいじめ防止対策推進法が変なんだ!という意見も確かによく聞くけれど、法律の定義がしっかり解釈の余地がないくらい定められているので、その定義と趣旨を理解して、「その定義の前提でどうやるか」を思考放棄したらダメだとおもう。そもそもそのあたり思考放棄してしまったら、加害であれ被害であれ、怒れる保護者たちに正面から立ち向かい、議論、説得することができない。

法律の内容が明らかにおかしいというのなら、法律を変えるべきだけど、今は今の定義と運用が法に定められてる。少なくとも自分のところは、その定義や法律の定めに乗っかった上で「どうやるか」を模索しながらやってきている。そしてこの現場事情と法律の定めの調整機能こそが、スクールロイヤーに問われている資質なんでないかと最近感じている。なので、実態を踏まえた上で法に沿った対応をどのようにやるのか、というアイデア、知恵がないと、スクールロイヤーとしては片手落ちだと思う。


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