占星術における月のはなし(2)
占星術において、月は主に二つの象意を基本に持っているとされる。
その一つは月は生まれてから7歳までの年齢域をカバーし、初期の生育歴、つまりは人生の出発点から獲得してきた人格の特性を示している事にある。月のサインと他の天体とのアスペクト、また月が位置するハウスの状態から人が幼少期に養育者(必ずしも実の親とは限らない)とどのように関わり、与えられた環境でどんな育ち方をしてきたかを読み解く事ができるのである。
月の発光は太陽光の反射によるもので、他の恒星の光も同様に反射していると言われる。その性質から占星術において月は、人の受け身で他力的な側面を示すとも言われる。少なくとも生後すぐから学童期(小学校入学以降)に入るまでは、他者からの養いと保護は生存と成長に不可欠な要素であり、その分彼らから受ける心身への影響も最も大きな時期となる。
そのような時期に自分を取り巻く世界から模倣したこと、あるいは身近な人たちとのやりとりの中から吸収し身につけた習慣、人や環境に対するprimitive(原始的・初歩的)な情動反応パターンを月は表していると占星術では考える。月の年齢域は自我が未発達で知的肉体的な伸びしろの時期も含まれており、育ちの重要性という点では発達心理学的に見ても矛盾のない捉え方と言える。
月星座やハウスは、人が慣れ親しみ安心できる環境や条件を示す。そして子供時代に限らずストレスを回避するために人が無意識に行っている”癖”も垣間見ることができる。月が示す人の習慣は一旦身についてしまうと意識化すること自体が難しく、本人が意図して変えようとしない限りは生涯維持されていく。特に何も考えずともそうすることが当たり前な振る舞いとして表現され、安心、安全を維持するためのオートマティックな心の働きと捉えることもできるのである。
発達心理学の概念と月の占星術的特性をもう少しすりあわせていくと、幼少期の心理的課題の一部を月が担っている事にもなる。それは愛着と承認欲求の二つであるが、それらは後にもう少し詳細に取り上げたいと思う。