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占星術における月のはなし(6) 月の並列化現象


 占星術を学び始めて丸10年になる。一番最初に自分のネイタルチャートの計算をし、手書きで図を作成した時のことは今もよく覚えている。太陽星座が牡羊座というのは高校生の頃から知っていたが、ほかの天体がどの星座にあるかなんて勉強を始めるまで全く知らなかった。完成した誕生図を見ると月が天秤座で8ハウス。その時の教科書と図を交互に見ながらネイタル月が何を意味しているかを知った時、なぜすぐ人目を気にしたり人に対してよそよそしい態度を取ってしまうのか、自分を牡羊座っぽくないと思う理由が少しだけわかった気がした。


 最近になるまで、私は月にそれほど関心を持っていたわけではなかった。月星座に重きを置く考え方についてもどちらかというと中立的なスタンスで、私自身はバランスが大切と意識していたし、標準的な月の定義や解釈に疑問を持つこともなかった。昨年の終わり頃の早朝、言葉でうまく言いあらわせないような神秘的な体験をするまでは。


 その日の朝目覚める直前に、私はどう考えても今まで全くみたことのない場所にいる、はるか遠い過去世の自分の姿を夢で見ていたのであった。その映像の中に月は輝いていたが何か違うな…と感じた瞬間、月は太陽系の他の恒星とは誕生のプロセスも性質も全く異なることを突然思い出したのである。単なる夢で片付けてしまうにはあまりにセンセーショナルな映像で、おぼろげな意識の中でだから月は他の天体とは同じ法則は成り立たない、見方を変えないといけないと考えたのであった。


 振り返ればこの出来事から月に対する私の考え方や解釈の仕方はかなり変わったと思う。しかしそれ以前に昨年マドモアゼル・愛先生から月に対する見解をたびたび伺っていたことも変化の引き金になっていたのかもしれない。初めてその内容をセミナーで聞いた時、それまで私が知り得た事柄とかけ離れていてそれを理解することも咀嚼することもできなかった。しかしあの出来事の後当時の講義内容を改めて読み直した時に、私が夢の中で思い出した事とかなりの部分重複しており、メモに残した先生のお言葉がすんなり入ってきたのである。それから今に至るまで過去の鑑定データを含めた月読みの見直しを行っており、その作業の中で私なりに考えたことをこうやって少しずつまとめているのである。


 これからも事情が許す限りは週2〜3程度のペースで月について書いて行きたいが、内容はテキストのようなテーマに沿って順番に書く形式にはならないだろうと思う。その時々で取り上げたいと思ったことをランダムに書いて、ある程度数が増えたらまとめて編集していずれは資料として残せたらいいなと考えている。もしそうなれば一冊の本のような形式ではなく、それぞれ独立した小冊子のような、読んでくださる方々それぞれに関心のあるところだけ単独でも読めるような形にできれば十分だと思う。


 前置きが長くなってしまったが、今回は太陽と月の比較から私自身が理解したことについて述べる。一般的な月の解釈とは多少外れているかもしれないが、個人のネイタルチャートのデータを見比べていて気づいた月の特性である。幸いなことに、私の身の回りには太陽と月が共通サインである人が多く、その違いを実生活の中でいろいろな視点から観察することができた。それに基づいた知見であることを前もって記しておきたい。


 もっともデータ数が多いのとわかりやすいので、双子座の太陽と月を例として取り上げたい。多世代にわたる一般的な特徴として、双子座サインの太陽も月も、基本的に好奇心が強く、調べることも自分が知識として得たことを他者に伝えるのも上手い。情報収集も早く、他の人が知らない間にニュースをいち早くキャッチするのも大抵双子座クラスタである。他者と共通した趣味や関心のある話題で盛り上がれるし話の引き出しも多い印象がある。語彙の的確さや言葉の使い方の巧さも双子座の強みだと思う。



 探索行動も似ていて物知りなのは同じだが、太陽星座と月星座の違いは月の方が深みがあまり感じられないところにある。例えるなら海岸近い浅瀬で貝を集めるか、深めの海に潜って貝を取ってくるかの違いと言えばわかりやすいかもしれない。どちらも役に立つ情報を教えてはくれるが、学びに幅も深さも求める太陽星座に比べると、月星座の方は幅広くはあるがあまり深く掘り下げず全体的にあっさりしたようにも感じられる。もちろん例外もあるし他天体が月と関わりを持つと月はその影響をうけるので単純に結論付けることはできないが、第三者が話を聞いていてもっと知りたいと好奇心を刺激されるのは、どちらかと言うと太陽星座の方が多い気がする。



 さらに太陽星座と月星座の差は、自分が知らないことを他者から言われた時の反応の違いにも現れているように思う。太陽星座の方が未知の事柄に抵抗が少なく、誰に対しても言われれば一応は最後まで聞く姿勢を示すことが多いが、月星座は話の内容に関心は示すもののどこか表面的な応対であったり、相手や気分次第で自分で調べるからいいと早々に話を切り上げたりする場合もある。もしかしたら月星座の方は未知に対する不安が好奇心を上回るのか、あるいは自分なりの学びのプロセスを崩したくないのかもしれないとも思う。


 他のサインでも同じように太陽と月星座を比較してみると、月には個人の能力や月星座の特徴を“並列化“する働きを持つのではないかと思えてくるのである。あくまでも観察に基づいた仮説に過ぎないが、月星座の能力はそこそこ伸びるが突出はせず、どこかで頭打ちになっている感じがするのと、同じ月星座同士を比べると横並びのする感じが否めないのである。そして太陽星座が“そうあること“に生きがいを見出すのに対し、月星座は“そうなること“が目標になっているようにも感じられる。先ほどの双子座の例なら、太陽は“考える、学ぶ“ことを生きがいとし、月は“考える、学ぶ人になること“が目標というところだろう。


 また並列化を“非個性化“と言い換えることもできるかもしれない。月星座の能力は個人が目標とする人物並みに達することはできても違いをもたらすには至らず、皆と同じ安心を提供する代わりに個としての伸びしろの芽をいつしか摘んでしまっているのではないかと思うこともある。月が関わるスキルや能力は全く身につかないとは考えにくいが、それを人生の中心に据えようとするとものすごく苦しい道になるような気もするのである。


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