閉鎖病棟24時|保護室 No.0
インターネット検索欄に『精神病棟』などと打った時、次いで出てくるのは『怖い』『扱いひどい』。おそらくこの記事にたどり着いた人々も、期待してる。『怖い話』。
が、しかし、なるたけ愉快なのをお送りすると決めている。
ようこそ、閉鎖病棟24時。
このコラムは、今日も現場で働き続けている精神科医(病棟医)と精神科ナースへ敬意を込めて発信する。
保護室とは
精神科病棟の中でも、閉鎖病棟がある。
閉鎖病棟の中でも保護室がある。
分厚い壁とトイレしかない部屋。
上記の場合、入れられる部屋。
45人看る病棟で、6部屋あった。『あの人保護室行ったらしいよ』とか『あの人保護室から出てきたばかりやから危ない』とか他の患者にも噂される場所。
色々ある保護室タイプ
壁:かなり分厚い。どんどんと叩いても、自分の手に痣ができるだけのレベルで頑丈。持ち込める武器的なものは、食事の時の割り箸やスプーンのみなのに、なぜか壁に『ドラえもんたすけて』と書いてて、それを彫った人の気持ちがしんしんと心に沁みた。
トイレ:看護師さんに流してもらうまで、置いておくもの。匂いはもうしょうがない。健康観察のためにだし、汚物でないものを流してしまう人もいるため、自分では流せない仕組み。ただ、大をしたのに、汚物の申告のタイミングを逃してしまい、流されずに、その日のメニューがカレーだった日のことは一生忘れない。
病院の構造:完全個室と、横の患者さんの顔は見えないが声は聞こえる(鉄格子の奥が看護師の通る廊下)、2つのタイプがある。私は圧倒的に後者タイプの方が好きだ。寂しさが紛れる。メンバーに恵まれると、カラオケ大会などが始まり、愉快である。が、大きなデメリットがある。自分が正常になってきた時、隣の人が一番悪い状態だったりするとその独語で眠れない。
この世の天国も地獄も自分の心が決めるのだ。そして地獄に行くも天国に行くも、選んだのは自分だ。
ただ、病気という地獄に向き合った時、その人に寄り添う医療がある。その医療のおかげでその場が天国に感じたりする。そんな感動的な看護をたくさん受けてきた。医師や看護師にとっては、患者と話す言葉が通じなかったり、認知症の方が悪気もなく廊下に落とした汚物を片付けたり、厳しい現場だ。なのに機能し続けている。社会から受けた恩、健康になって社会に還元したいものだといつも思う。
つづく