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2023年ジャパンカップ回顧

イクイノックスとリバティアイランドの2強対決の様相は天皇賞の結果からイクイノックスの1強模様に一変しました。イクイノックスに対してリバティアイランドがどこまで戦えるのか、また逆転はあるのかという見方が単勝オッズから明らかでした。
三連単のオッズは1着イクイノックス2着リバティアイランドから流して3着ドゥデュース、スターズオンアース、ダノンベルーガ、タイトルホルダーの順で売れていました。2020年ほどは安くならないのでは、と見ていたのですがイクイノックスとリバティアイランドの序列は付いているという評価が大勢を占めており、かなり安いオッズになったな、という印象です。


パンサラッサと2020年のキセキ

宣言通りパンサラッサが逃げました。1000mの通過57.6秒は過去最速。2020年のジャパンカップで大逃げする形になったキセキは57.9秒で駆け抜けています。今年のジャパンカップの馬場差は-2.0で2020年は-1.3です。今年の馬場の方が多少軽さはありました。
パンサラッサが1000mまでに刻んだラップは12.7-11.3-11.5-11.0-11.1。キセキが1000mまでに刻んだラップは12.7-10.8-11.8-11.3-11.3。両者の違いは2F目にあり、浜中騎手がある意味制御わ放棄したことにより繰り出された10.8というタイムが明らかに異質です。それと比較するとパンサラッサはコントロールされた中でハイペースを刻んでいました。キセキが次の1000mを11.5-11.8-11.9-12.1-12.3の59.6秒で踏ん張っているのに比べ、パンサラッサは11.5-12.0-12.1-12.1-12.4と1:00.1とやや踏ん張り切れなくなっています。
最終的はパンサラッサは12着2:24.0上がり3F38.7。キセキは8着2:24.1上がり3F38.9と同じようなタイムにまとまっているのは面白い結果です。
同じキングカメハメハの系統でも、キセキの父ルーラーシップの方が長い距離は得意です。2020年の馬場の方が今年ほど軽くなかったことを考えるとキセキの強靱さが上回るとはいえますが、ロードカナロアを父に持つパンサラッサは不向きな条件の中をよく頑張りました。
2020年大逃げをしたキセキがアーモンドアイとコントレイルとデアリングタクトの戦いに強い彩りを与えた様に、今年はパンサラッサの大逃げが上位に来た強い馬たちを際立たせたと思います。
ハイペースで逃げる馬がいると、レースに紛れが起こりにくくなり真っ向からの力勝負が観れて良いですね。

○ダノンベルーガについて

対抗評価としたダノンベルーガですが、良い結果になりませんでした。調教師、鞍上ともに2000mよりも2400mの方が向くというコメントをしていましたが、結果的には天皇賞よりも着順を下げています。天皇賞でのイクイノックスとのタイム差は0.6秒から1.4秒に広がりました。
パンサラッサが1頭飛ばし2番手のタイトルホルダー以下は1000mの通過は60秒ほどかかっており、決して早いペースではありませんでした。ダノンベルーガは11番手から上がり3F33.8秒とヴェラアズールと並び3位の早さでしたが、2番手以下のペースを考えれると位置取りが後ろ過ぎだったようです。
名手モレイラ騎手にしては積極性に欠ける騎乗でもあったと思います。
天皇賞は消耗度合いの大きいレースだったことは間違いないですが、それにしてももう少し頑張れなかったものだろうか。

▲ドウデュースについて

6番手追走は戸崎騎手が勇気のある競馬をしたと思います。後方に構えて直線だけで勝負するようなイメージでしたが、4着に粘った結果は前に位置したことが結果として好プレーになりました。
6番手から上がり3Fは33.7秒とイクイノックスに次ぐタイムでした。集団の前目に位置しながら早い上がりを使えたところは、馬が成長していることを表していると考えています。
戸崎騎手もテン乗りの天皇賞から順位を上げられたことは安堵したでしょうね。
次走は有馬記念になりそうです。天皇賞にしてもジャパンカップにしても馬にとってはきついレースとなっているためどこまで回復できるか陣営の腕が試されます。
主戦の武騎手も怪我の状態があまり良くないのか復帰が遅れています。有馬記念までに間に合うといいんですけどね。

△リバティアイランドとスターズオンアース

リバティアイランドの走破タイムは2:22.5、スターズオンアースが2:22.6と枠順と斤量を考えるとスターズオンアースの強さを感じます。斤量の軽さを活かしたところはありますがリバティアイランドも当然ですが強い馬です。ドゥデュースよりも馬体的にマイル色が強くなっているのはむしろリバティアイランドの方なのでは無いかと思い、ダノンベルーガとドゥデュースの逆転を信じてみたのですが甘い考えでした。
2020年との馬場差が0.7あることを考慮するとアーモンドアイの走破タイム2:23.0からはやや劣るとも言えます。ここにアーモンドアイがいたらと考えると、リバティアイランドとスターズオンアースの追撃をアーモンドアイを凌ぐだろうと思います。ただそこまで大きな差は無いですので、今回の2,3着を締めた2頭の牝馬は歴代牝馬の中でも間違いなく上位に入る馬です。
リバティアイランドは今回は負けにはなりましたが相手が悪すぎただけであり、アーモンドアイを超えるかどうかはこれからの成長次第ですから楽しみの大きい馬ですね。
スターズオンアースはそこに立ちはだかれる馬です。来年の古馬戦線はこの2頭に加えドゥレッツァやプレイディヴェーグあたりが中心になると見ています。

◎イクイノックスについて

圧倒的でした。イクイノックスの走りですが天皇賞でも感じたように、今回の走りも見るものを感動させる走りだったと思います。
2020年のアーモンドアイの比較でも、上述したようにペース的にはほぼ同じような流れでキセキとパンサラッサが逃げていましたが、アーモンドアイがキセキを捕えた位置は2200mを過ぎた後でしたがイクイノックスは2200mより手前でパンサラッサを抜き去っています。
2020年と今年の馬場差0.7秒を考慮しても、イクイノックスはアーモンドアイより0.5秒早いタイムです。競馬のタイム比較というのはそれほど単純なものでは無いことをわかった上ですが、アーモンドアイを相手に0.5秒差=約3馬身を真っ向勝負で突き放せる馬にイクイノックスが相応しいかといえば全くもって相応しいです。
レース前にも記載しましたが私がこれまで競馬を見てきた馬の中で、最も強い馬はイクイノックスです。最強馬論争といえば、ディープインパクトなのかオルフェーヴルなのか、はたまたアーモンドアイなのか、で侃々諤々になる話題でしたが、イクイノックスはその論争に終止符を打つ馬です。
発表されたレーティングは133となりましたがもっと上の評価をしてもいいように思います。
父キタサンブラックはほぼ逃げていましたが菊花賞や天皇賞秋は差してますし、先行して抜け出すようなレースもきっとできたはずです。それを一回りスケールアップさせた馬が、その子であるイクイノックスです。キタサンブラックやアーモンドアイより明らかに強い馬と言う馬はそういませんし、今回のジャパンカップの走りをされたらディープインパクトやオルフェーヴルでも捕えきれないはずです。
フランケルやフライトラインに匹敵できるかで言うと、さすがにそこまでは言い切れないですがそれに続くぐらい強い馬であることは間違いないと思っています。

最後に

イクイノックスの引退が発表され、有馬記念に参戦しないことが確定しました。有馬記念に勝てば1着賞金に加え秋古馬三冠達成の奨励金2億円を加算して7億の賞金を加算できるのですが体調が万全にならないことを理由にあっさり引き際を決めてしまいました。
ジャパンカップ前にもこのレースで引退になることは漏れ聞こえていたことですし、私も早く引退して次の仕事に向かった方が良いとは思っていました。これだけの馬が命を失わずに馬産の世界に向かうことは喜ばしいことです。
有馬記念はイクイノックスが不在となりますが、それでもなかなかの好メンバーが揃いそうです。イクイノックスがいなくなることで馬券妙味も高くなりそうですから、ここで身を引いてくれたことは有馬記念を面白くしてくれたと思ったりします。
かつてシンザンを追い越せ、という言葉がありましたがイクイノックスを追い越してくれるような馬がいずれまた出てくるのでしょうが、私が生きている内にその姿を観ることが果たしてできるんでしょうか。

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