親猫に頼まれて子猫を助けた話
とある天気の良い休日。
自転車で裏通りをのんびり走っていると、猫の大きな鳴き声が
聞こえてきた。
切羽詰まったような鳴き方で道路をうろうろとあちこち歩いている。
車に轢かれそうで危ないなぁと思っていると、もう1匹の小さな鳴き声に
気が付いた。
「もしかして、子猫とはぐれたのだろうか?」
自転車から降りると、親猫が鳴きながら近づいてきて
「子猫が見当たらないんだ。探してくれ。」
と言わんばかり。
親猫の鳴き声へ答えるように心細そうな小さな鳴き声がする道路沿いの
狭い側溝の奥を覗いてみると、案の定いた。
しかし、子猫がいる奥の方は側溝に蓋がされていて人は入れない。
自分ではどうにもならないと
「すまんが力にはなれん。」
と親猫に言い残してまた自転車で走り始め、その後に用事を済ませたものの
あの子猫が気になって仕方がない。
そこで先ほどの猫の所へ戻ってみると…
相変わらず大きな声で鳴きながら道路をうろうろする親猫。
鳴き声が弱くなった子猫。
子猫を探すと、先ほどの狭い側溝からオープンで広く、深い側溝へと
転落し、もぞもぞしている。
側溝は幅、深さとも1mちょっと位。
水は流れていて、5cm程度と浅いが靴は浸水するだろう。
ただ、強度アップのためかコの字の底両端の立ち上がりは
直角ではなく、斜めに補強が付いているので、そこに足を
載せれば靴が水没せずに済むはず。
後は自分の脚の長さ次第。
やはり親猫が近づいてきて
「なんとかしてくれ。助けてくれ。」
と鳴きついてくるので意を決し、小猫のいる深い側溝に降り、反対の
補強部分へ向かって片脚を思い切り広げて足を載せようと試みる。
ぎりぎり届いたので、子猫の首根っこを掴んで一度道路へ持ち上げるが
親猫の方へふらふらと歩いて行った所へ車が来たら轢かれてしまうので
すぐに自分も側溝から上がり、子猫をまた掴んでおく。
親猫が子猫の姿を見て道路の真ん中で鳴き続けている所へちょうど
車が走ってきたのに親猫が逃げないので車は手前で停止。
子猫を掴んだ人が側溝からいきなり表れて驚いたかもしれないけれど
頭を下げつつ道路を渡り、親猫へ子猫を渡して一件落着。
親猫は子猫を咥えてあっという間にいなくなったので
特にオチはありません。
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