Stay Homeだから生まれたチャレンジ「みんなでソロさんぽ!」
みなさまこんにちは!世田谷コミュニティ財団、代表理事の水谷衣里(みずたに えり)です。
今日は私から、Stay Home期間中にプロボノチームの皆さんとチャレンジした、「みんなでソロさんぽ」について、ご紹介です。
(1)「みんなでソロさんぽ」とは?
「みんなでソロさんぽ」は、コロナ禍の真っ最中の2020年春に始まりました。
リアルで会えなくても、街を楽しみ、人とつながることを目指して始まった企画です。
この企画は次の3つのステップからなります。
▼Step:1 オリエンテーション
Step 1はZOOMで開催する「オリエンテーション」です。
オリエンテーションでは。世田谷の街の地形や街道の成り立ち、地域に眠る風景資産の歴史について、レクチャーを受けます。
講師は世田谷コミュニティ財団 理事の千葉晋也さん。株式会社 石塚計画デザイン事務所 東京事務所 所長でもある千葉さんは、世田谷の地域風景資産の発掘と発信に、長く関わっている方でもあります。
▼Step2:ソロさんぽ
Step2は「お散歩」です。
参加者の皆さんは、それぞれのペースで、家の近所を歩き、写真を撮影します。
取った写真は「みんなでソロさんぽ」のFacebookグループでシェア。
参加者同士でどんどん、コメントをして、みんなでわいわい盛り上がります。
▼Step3:シェアリング
Step3は、「シェアリング」です。
シェアリングでは再びZOOMを使い、オンラインで開催します。
シェアリングでは、Facebookに投稿された写真を見ながら、参加者めいめいが「ソロさんぽ」で発見した街の風景をシェアします。
(2)どうして開催したのか?
“Stay Home”が求められていた2020年春。
世界的な感染症拡大の中で、家族以外の人と会うことは、自粛するムードが広がりました。
しかし私たち世田谷コミュニティ財団は、「まちと繋がる」「人と繋がる」ことを一番の価値としています。多くの企業や団体と同様、私たちも「どうやって活動を続けようか?」と、悩ましい時間を過ごしていました。
一方で、「世田谷の街にこんなにも人がいる」ということに、驚きと希望も感じていました。
世田谷は「住宅街」とよく言われます。
実際、世田谷区の面積の約半分は住宅が占めています(専用住宅+集合住宅で約5割)。
世田谷の生産年齢人口は約7割と、東京都の平均を大きく超えています。
働き手の多くは、区内を走る私鉄に乗って、都心部に通勤しています。
しかもいわゆるホワイトカラー層の方々も、とっても多い。
そんな中、突如「在宅勤務」が一斉に始まり、日中の時間を自宅で過ごす人が増えました。
さらに、休校が始まり、小中学生も、高校生も、大学生も家にいる。
つまり、昼間人口が突然増えたように感じたのです。
(ちなみに普段は昼と夜とを比べると、4万人くらい、夜の方が人口が多いそうです。)
そして“Stay Home”とメディアが繰り返すのと同時に、言われていたのが「適度な運動」でした。特に散歩やランニングの大切さは、ニュースや情報番組で日々言われていました。
SNSの中の世界では友人・知人の多くが家の周りを散歩している様子をUPしていました。
季節は春。住宅地の中に埋もれていた木々が芽吹き、公園や緑道には桜が咲き、若葉が芽吹く。人間の世界の混乱をよそに、自然はいつも通り季節を刻む。
そんな変わらぬ日常の風景が、非日常を余儀なくされていた2020年春には、とっても貴重なものに思えました。
それで、思ったのです。
「こんなに街に人がいるのに、何もしないのはもったいない」
「自分の家の半径3キロ圏内を、こんなに熱心に歩き回る機会は、そうそうないんじゃないか」
「感染予防は大切。それならば、オンラインとオフラインを組み合わせて、世田谷の街を知る機会をつくればいいんじゃないの?」
と。
(3)そして始まった「みんなでソロさんぽ」
幸いなことに、世田谷コミュニティ財団の周囲には、貴重な人材が多く揃っています。
お一人は、先にも記した財団理事の千葉晋也さん。
世田谷で2002年から始まった「地域風景資産」の取組みに当初から関わっており、地域の風景を見る視点や、長く培われてきた住民による街の風景を守る実践を、惜しげもなく教えてくれました。
もう一人は財団専務理事の市川徹さん。
世田谷社という名前でまちづくりのサポートを20年以上続けている市川さん。世田谷の街の本当に細かな情報や人を、千葉さんと共に教えてくれました。
そしてプロボノチームの皆さん。
世田谷コミュニティ財団では、2019年秋ごろからプロボノチームを立ち上げ、色々と試行錯誤していました。東急世田谷線・松陰神社前駅周辺で、一日だけのスナックを開催してみたり、ランニングのイベントを企画してみたり。
春以降、より本格的に動き出していこうか…、と言っていた先に起こったのが、新型コロナウイルス感染症の世界的な大流行でした。
そんな背景を踏まえて、「みんなでソロさんぽ」はスタートします。
「ソロでさんぽ」、だけど「みんなで」つながる。
「みんなでつながる」、だけどソーシャルディスタンスは守って、感染症予防には協力する。
そんな気持ちを込めて、スタートした企画でした。
(4)開催してみて、感じたこと
「みんなでソロさんぽ」を開催してみて感じたことは「やっぱりつながるって楽しい」ということでした。
そして「知れば知るほど、まちが好きになる」ということ。
「みんなでソロさんぽ」はオンラインを通じて人とつながり、めいめいが世田谷近郊の好きな場所を散歩します。
しかし気づけば
「同じ緑道を、同じ日に、東西それぞれから散歩していた」
「〇さんと、おなじパン屋さんに立ち寄った」
なんてことも。
私自身も、Facebookグループに投稿された、等々力渓谷や野毛公園の風景を見て、翌日思わず自転車で出かける、なーんて出来事もありました。
中には、「世田谷区内に複数ある緑道を辿り、暗渠の謎に迫る」お散歩をする方も。
世田谷の街は、武蔵野台地を多摩川が削った「国分寺崖線」と、区内を筋のように走る小さな「沢」で地形が構成されています。
実際、地名にも、「北沢(下北沢の駅が有名ですね。小田急線と京王井の頭線です)」や「駒沢(駒沢大学の駒沢です。こちらは東急田園都市線)」、「奥沢(こちらは東急目黒線)」など、「沢」のつく地名が沢山あります。
「沢」があるいうことは、その下に「水の通り道」があるということ。
普段はアスファルトで舗装されてしまっている暗渠。しかしソロさんぽを通じて、実は私たちの足元には、たくさんの自然が眠っている。そんなことも改めて発見しました。
また、撮影した写真をGoogleマップにプロットする、通称「マップ部」、なーんていう活動も始まりました。
回を重ねるごとに、ポストされる写真が増え、「こうした蓄積が何よりの財産だなあ」、と、しみじみと感じます。
そして何より、純粋に楽しい!
季節の変化や、まちの不思議な風景、美味しいパン屋さんやスイーツのお店、などなど、新しい発見が盛り沢山でした。
(5)これから
“Stay Home”の大合唱の中で始まった「みんなでソロさんぽ」。
コミュニケーションが深まる中で、「いつかリアルで会いたいね」という声が聞こえてきました。
緊急事態宣言が明けてから数か月。
以前とは同じではないけれど、「新常態(ニューノーマル)」が言われる中で、少しずつ、リアルな場も戻ってきたように思います。
プロボノチームでは、そろり・そろりと次の企画を進めています。
まだまだ感染症予防が必要な局面。それぞれの事情と気持ちを大切に、感染症予防に気をつけながら、少しずつ、活動が再始動しています。
最後に、私が緊急事態宣言の渦中に学んだことをちょっとだけシェア。
それは、「ご近所の楽しさ」と、「繋がりは、塞いだ気持ちを前向きにする」ということ。そして「繋がりは励みになり、力になる」ということです。
遠くに行けなくても、いや行けないからこそ、自分の街で、自然を感じられることの大切さをしみじみと感じました。
そして、何気ない日常の風景が、毎日の暮らしを彩っていることも、改めて実感しました。
何より、その彩りを「見てみて!」と共有できる友人・知人が、自分の住んでいる場所の近くで暮らしていることは、とっても幸福なことだと感じました。
そんな喜びや嬉しさを確かめられた2020年春~夏を経て、また新しいチャレンジを少しずつ、始めていきたいと思います。
この先のnoteでは、この先のチームでの活動を時々発信していきます。
どうぞお楽しみに!