「福山市立千年小中一貫教育校」の整備に係る内海町内の教育環境の存続要望書に対する回答について【学校統廃合問題】

福教学再第6号 2019年(平成31年)4月9日
内海町教育環境整備推進協議会 会長 ――― 様
福山市教育委員会 教育長 三好 雅章

「福山市立千年小中一貫教育校」の整備に係る内海町内の教育環境の存続
要望書に対する回答について

 内海学区,内浦学区の地域,保護者の皆様には,平素から,内海小,内浦小及び内海中学校の教育活動に対し,御理解と多大な御支援をいただいておりますことに,深く感謝申しあげます。
 教育委員会では,2016年(平成28年)4月の義務教育学校の制度化,内海中学校区と千年中学校区の児童生徒数や学級数の将来推計, 学校施設の老朽化の状況を踏まえる中で検討を重ねた結果,両中学校区の五つの小学校と二つの中学校を再編し,千年中学校の場所に,施設一体型の義務教育学校として整備することが,両地域の子どもたちにとって最善の教育環境となると考えています。
 この整備計画にかかわり,2019年(平成31年)2月13日付けで御提出のありました要望書に対して,次のとおり内海町の教育環境のあり方などについてお答えします。

 まず,学校再編の考え方についてです。小規模校には、「子ども一人ひとりに教員の目が届きやすい」「友だち同士の人間関係が深まりやすい」「個別に役割を与えて活躍する場面を作りやすい」など、良い面もあります。
しかし,学校が小規模化することで,子どもたちが,意見を交わしながら理解を深める授業が展開しづらく,多様な価値観に触れさせることも難しいといった面があります。
 さらに,2020年度から小学校で,2021年度から中学校で実施する学習指導要領は,主体的・対話的で深い学びとする授業改善を求めています。

 例えば,小学校では、5・6年生の「外国語活動」が「外国語科(英語)」に変わり「外国語活動」が3・4年生に移行するとともに,中学校の英語も学習内容が変わる中で,外国語を用いて主体的に他者とコミュニケーションを図ろうとする態度を育てるため,話す,聞く, 読む,書くという活動中心の学習を行っていきます。必修化される小学校のコンピュータ等を活用したプログラミング教育,見通しをもった観察・実験などを行う理数教育では,グループ内,グループ間で、子ども同士が対話し,協働しながらより良い答えを導き出す学習を進めます。特別の教科「道徳」では,議論をしながら,物事を多面的・多角的に考え,多様な価値に触れる学びを大切にします。
 子どもたちが生きていく変化の激しい先行き不透明な時代を見据え,より多くの友達の意見を聞いたり,一緒に知恵を絞って考えたりといった「主体的・対話的で深い学び」となる効果的な授業を行うためには、一定の集団規模は欠かせません。
 次代を担う子どもたちに必要な力を確実に付けていくことのできる教育環境を作っていくことが,私たちの責任と考えています。

 より良い学びの環境づくりのため,(仮称) 千年小中一貫教育校の整備を進めていく考えであり,内海町に学校を残すことはできませんが,内海町を学びの場として 子どもたちの教育活動を展開できるよう取り組みます。「学校は、地域の方々の御協力をいただきながら,それぞれの地域の良さを生かした特色ある教育を行っています。内海中学校区と千年中学校区の小中学校を再編することで,学校とかかわる地域が広がり,豊富な地域資源を生かした教育活動が展開でき,より教育効果が高まります。(仮称) 千年小中一貫教育校にあっても,地域とのつながりを大切にし,広がった校区の歴史や伝統文化,人材,産業等豊富な地域資源を活用して,地域の人々と子どもたちが交流し,地域の方々から多くのことを学ぶことができるような教育活動を積極的に進めます。
 海洋生物の生態,海洋エネルギーの利用,生物の遺伝子解析等々,自然を素材に子ども主体の探究的な学習プログラムを展開します。子どもたちは、体験を繰り返したり,自由に自然に触れ合う中で,「不思議だ」「なぜだろう」という疑問を自ら発見します。そうした疑問を,子どもたちが自分の力で、何度も確かめたり試したり,時間をかけじっくりと観察したり実験したりする学習を進め、地域の皆様にボランティアティーチャーとして御指導いただきながら,子どもたちの学びを豊かなものしていきたいと考えています。
 また,内海町は,海に囲まれた豊かな自然環境があり,現在も体験型修学旅行のプログラム等において,様々な体験学習が行われています。こうした自然環境を生かした体験学習の場として,沼隈・内海の地域のみならず,市内全域の子どもたちの学びの場となるよう、皆様と意見を交わしながら検討していきたいと考えています。
 さらに,(仮称) 千年小中一貫教育校では,地域と協働した特色ある学校づくりや児童生徒による地域貢献活動を行っていくよう考えており,保護者や地域の意見を学校運営へ取り入れていくコミュニティスクールの導入を検討します。

 内海町におかれましては,地域の活力を維持するため,定住,空家対策,婚活事業など,子育て世代が内海町に住める環境づくりの取組を進めておられます。再編により通学距離は長くなりますが,通学支援をすることで,子どもたちが内海町に住み続けながら(仮称)千年小中一貫教育校に通い,より良い教育環境の中で学ぶことができるよう,整備を進めてまいりたいと考えています。地域の活性化については,今後も,企画政策部が中心となり、関係部局が組織横断的に連携する中で,地域と行政が継続的に話し合い,地域課題の解決や自然環境を生かしたより魅力ある地域づくりなどについて,互いに知恵を出し合っていきたいと考えています。

 貴協議会が,2022年に小中学生の子どもがおられる世帯の保護者を対象に実施されたアンケートでは,(仮称) 千年小中一貫教育校への期待度が低いという結果 が出ているとのことです。これまでの保護者の皆様との意見交換の中で,「再編後の学校の良さがわからない」「学校のイメージが湧かない」といった意見をいただいています。そのため,今後,義務教育学校の特徴や,(仮称)千年小中一貫教育校の教育内容,施設整備などについて,より具体的な内容を説明し,理解を深めていく必 . 要があると考えています。

 教育委員会としましては,(仮称) 千年小中一貫教育校の整備に向けて,地域, 保護者の皆様の理解を得る中で,皆様とともに学校づくりに取り組んでいく考えです。今後,早期に地域説明会を開催し,皆様と意見交換をさせていただきたいと考えています。皆様の御意見をお聴きしながら,子どもを通わせたい,子どもを学ばせたいと思っていただける魅力ある学校づくりを全力で進めてまいります。

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