【vol.2】なぜ今、学校統廃合なのか
◆はじめに~少子化と公立小中学校統廃合の現在地~
日本で少子化が進んでいることは広く知られていますが、子どもの数が減って地域の人口減少に繋がっていくことは、小さな町村にとってはもちろん、大きな自治体にも焦りや不安をもたらしています。全国の小学校の児童数、中学校の生徒数の推移をグラフにすると、次のようになり、1971年から1974年にかけて生まれた第二次ベビーブーム世代が在籍した80年代以降、小学校児童数は一貫して減少傾向にあり、追いかけるように中学校の生徒数も減少しています。
こうした少子化が影響し、近年は公立小中学校の統廃合が進んでいます。学校数は年々減少しており、1997年度~2017年度の20年間では、全国で5,823校の公立小学校、1,739校の公立中学校が廃校となりました。
◆小さな学校の統廃合・存続にまつわる様々なプロセス
学校統廃合と一口に言っても、様々な事例があり、地域の事情によってたどるプロセスは全く異なります。
これまで実習で調査を行った事例には、学校の小規模化による学習環境の変化を不安に思う保護者からの要望や、人口減少に備えた町づくりを早めに進めておきたいという行政担当者の思いから、学校統廃合へと踏みきる事例も見られました。
また、地理的な事情により、例えば他の集落から遠く離れた地にある学校を、どんなに小規模になろうと残さなければならないという事例や、保護者や地域住民との議論を重ねた上で、地域の核としての学校の機能や、少人数教育のメリットを重視する観点からしばらくは小規模校を存続することにしたという事例もありました。
人口減少が問題になる以前は、地域に学校があるのが当たり前で、残すのが当たり前でした。しかし近年、少子化に伴う人口減少が深刻になると、財政的余裕のない小さい町村では特に、小規模化した学校を「残すことはできない」「統廃合するしかない」という判断がなされるようになっていきます。
このような、「できれば元ある学校を残したいが」、人口減少や財政的事情を背景に、統廃合を選択するという事例を消極的な統廃合とすると、学習環境を整えるため、小規模校や複式学級を解消して学校規模を標準化しようと行政が主導して行う積極的な統廃合は、むしろ人口の多い市部の自治体に典型的に見られます。
大規模自治体では、末端の学校を「残してはいけない」「統廃合するべきだ」という方針が立ちやすく、それがさらに地域住民の「『残したい』という思いを認めない」という方向に先鋭化してしまうこともあります。
◆人口減少社会の学校と地域
子どもの数が減っている限り、計画的に学校を減らしていくほかないのでしょうか。学校が子どもの教育のための施設であることは否定しようのないことですが、地域住民にとっては、地域の将来を担う子どもたちが成長する場であり、地域の人びとを結び付ける拠点として、また災害時の拠点としても、欠かせない施設であるものです。人口減少社会だからこそ、学校をうまく利用した地域づくりを模索し、地域と学校が支え合って地域全体で子どもを育てていくという考え方に立つこともできるのではないでしょうか。
◆おわりに
子どもの数が減り続ける中、今後も小中学校の小規模化は進んでいくと見込まれます。公立小中学校のあり方は、地域のあり方や、私たちの暮らしのあり方にも大きな影響を与えている以上、学校統廃合をどう進めるかということだけにとどまらず、今ある学校を起点とした「地域づくり」を見つめなおすことを含め、改めて考える時が来ているのではないでしょうか。
K・H
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