言葉を頼りに「好みの香り」を探る新感覚体験!香りを言語化するAI×商業施設の可能性を探る【KAORIUM導入インタビュー:ルクア大阪さま】
「好みの香り」を言語化して、わかりやすく伝えてください。
そう言われたら、言葉に詰まる人は少なくないかもしれません。香りの感じ方は個人差が強く、多くの人は香りを感覚的にとらえているためです。
嗅覚のデジタル化に取り組むベンチャー「セントマティック」の開発する「 KAORIUM (カオリウム)」は、そんな表現の難しい香りを分かりやすい言葉に変換するAIシステムです。人の香りの感じ方と、インターネット上の膨大な言語表現を学習したAIが、香りの印象を的確に言語化。AIが表す言葉を頼りに、その人にとって「好みの香り」を導き出します。
今回は、2022年9月1日から1カ月間にわたり、大阪駅直結の駅型商業施設「LUCUA osaka(ルクア大阪)」に入る、香水専門店「NOSE SHOP(ノーズショップ)」にてKAORIUMを導入したポップアップを開催!ご来店のお客さまに、AIと自分にぴったりのフレグランス選びを体験していただきました。ここでは、導入にあたってご協力いただいたルクア大阪 前浦さま、寅屋敷さま、岡森さまに、商業施設におけるKAORIUM導入の感想や、活用の可能性など、詳しく伺ってみました!
いつもと違う「香りの体験」が創出する価値
ーー実際にKAORIUMを体験いただいた感想はいかがでしたか?
寅屋敷さま すごくユニークでした。「可憐」「品のある」「リラックス」など香りを表す言葉がズラッと並び、その言葉を基準に自分が求める香りを選ぶ行為、AIが導き出した香りをかぐ行為を繰り返して、好みを探っていく。こんなに真剣に香りのことを考えたのは、初めてだったかもしれません。香りの知識がない人にとっては、香りを選ぶハードルを下げてくれるツールだと思いました。
前浦さま 自分好みの香水を探すのは難しいイメージがありますが、それを解消するキッカケになりそうだなと。ブランド名も香料もわからない状態で、言葉だけを選んで香りをかぐ体験って普段はしないですよね。そういった新規性のある体験を自然に成立させているのは、おもしろいと思いました。
岡森さま 私は、嗅覚って案外あやふやだなと気付かされました。16種類の香りのうち、最初にいくつかをかいで好みを選び、そこからAIによる言語化が始まるわけですが、最初の香りを選ぶ時点で迷ってしまい……。嗅覚を鍛えなければと思いましたね。
ーー「嗅覚を研ぎ澄ませて香りをかぐ新体験」を感じていただけたのですね。体験により新しい発見はありましたか?
前浦さま 意外だったのが、以前Nishaneの「ウーロンチャ」という香水をかいだときに「あまり好みはないな」と思ったのですが、KAORIUMでは「ウーロンチャ」が好みだと判明したこと。「ウーロン茶の香り」という事前情報があるときと、ないときでは、香りの感じ方が違うように思いました。
寅屋敷さま 香水を選ぶときって、ボトルのかわいさを魅力に感じることもありますよね。一方、KAORIUMは視覚的な要素なしに「香りそのものを純粋にかぐ」という体験。「香りに集中してほしい」というサービス提供者側の思いを感じましたね。
KAORIUMが商業施設にもたらす可能性
ーー「NOSE SHOP」でのポップアップ期間中、KAORIUMは多くの方に体験されていましたか?
寅屋敷さま エレベーターを降りてすぐの場所に出展されていたこと、かつKAORIUMの見た目がスタイリッシュだったことから、KAORIUMの前に人だかりができている光景を何度も目にしました。置いておくだけで話題性が生まれ、人が集まるのは、施設側としては非常にありがたかったです。
期間中、NOSE SHOPさん目当てに来店してくださったお客様もいて、KAORIUMを見るなり「これこれ」という感じで、多くの方が体験されていました。ショップスタッフさんが体験されたお客様への声かけを積極的にされていて、KAORIUMの体験後に店内を回ってくださる方も多かったです。
ーーKAORIUMは、顧客体験をより楽しくするDXツールの一つだと考えています。商業施設の運営者という視点で、KAORIUMにはどんな潜在的ニーズがありそうですか?
岡森さま 商業施設のようなマスマーケットにおける売れ筋は、価値が視覚化されたものです。そんな背景から視覚的にわかりやすいものに注力していましたが、近年は、お客様が見た目ではない要素に価値を見出し始めている様子が見受けられます。エシカル、サスティナブルといった製品背景の文脈しかり、記憶に残る体験しかり。
体験の提供は、すでに成功事例が生まれています。例えば、ルクア大阪内のセレクトショップでは、お客様の手持ちの洋服を中心にスタッフがコーディネートを考える体験を30分1,000円で販売したところ、大変好評でした。手持ちの洋服の写真を事前に送っていただき、それを中心にコーディネートを考えるというものです。顧客は新しい洋服を買わなければいけないというプレッシャーから開放されて、スタッフも無理に新品を勧めなくてもいい。少額のお金を払うことで顧客は「買わない権利」を得て、スタッフも気持ちよく接客ができるのはメリットだと思います。
そのほかに、1時間5,000円でラテアートレッスンを提供するカフェもあります。体験の切り売りと聞くと、「接客でお金を取るなんて」と躊躇(ちゅうちょ)するテナントさんもいますが、プロの接客は顧客にとって「価値のある楽しい体験」になりえます。ボランティア的に接客を消費するより、お金を払う価値があるものとしてコミュニケーションを提供するのは、顧客と事業者の双方にとって良い取り組みだと感じています。
KAORIUMにおいても、「好みの香りを探る体験」をプロの接客とセットで販売するのは、おもしろいのではと思います。テクノロジーにプロの視点が加われば、お客様がより深い香りの知識を得られ、香水に強い興味関心を抱くことにもなるのかなと。お客様が求めるベストな香水探しもアシストできれば、売上につながりやすい気もします。
コミュニケーションを売る、入場料を取るなど、モノと引き換えではない価値を提供する場合、熱量がある方が集まりやすくなります。熱量が高い事業者と顧客同士だからこそ、伝えたいメッセージを伝えやすいのではないかなと。
寅屋敷さま 施設の使命は、お客様に未知なるショップに多く出会っていただくことだと思います。それを踏まえ、新しいフロアやショップに立ち寄るキッカケづくりにKAORIUMを活用してみたいですね。例えば、今の気分を香りから導き出し、おすすめの飲食店をご紹介するなど。
半強制的にショップに立ち寄るような仕組みは、お客様側も求めていると思うんです。旅行先を決めるガチャガチャ(※)がヒットしたのは、もはやどこでもいいけれど楽しみたいという欲求の表れですよね。それをKAORIUMで再現できたら、事業者とお客様の双方にとって価値的な体験になるかもしれません。
※編集部追記・・・ピーチ・アビエーションが2021年8月に発売開始した、行き先を選べない「旅くじ」を指す。ガチャガチャで購入したカプセルには、1枚の紙と缶バッジが入っている。紙には、指定された行き先(空港)と旅の「ミッション」、成田空港と指定された行き先間の航空券のみに使える6,000円以上のポイントと交換できるコードが書かれている。最初に設置された心斎橋パルコでは、2ヵ月で3000個以上売れるヒットとなった。
存在意義を模索する商業施設。何が人を魅了するのか
ーーコロナ禍で集客、接客が難しくなるなど、多くの商業施設が課題を抱えていると聞きます。実際、どんな課題感がありますか?
岡森さま 業界全体が行き詰まっている空気感はありますが、ものすごくネガティブにとらえているわけでもないかなと。転換を図りながら、新たな存在意義を見出だせるのか模索している過渡期といえます。
実際、店舗の床が埋まらなくなっているのは事実であり、それを打破するには、人の本能に寄り添う必要性を感じています。私たちは「エンタメ性」と呼んでいるのですが、自然に人が集いたくなるような仕組みってどんなものだろうと日々勉強しています。
ーーコロナ禍の商業施設各社の変革には、注目が集まっていますよね。丸井が2026年に木造の商業施設への建て替えを発表したり、メタバース上で開催されるVRイベント「バーチャルマーケット」に大丸松坂屋百貨店や阪急阪神百貨店が出店したり。何が顧客の心をつかむのか、模索しているところなのでしょうね。
岡森さま 会社全体の方針ではなく、あくまで当社内での議論を踏まえた個人的な考えですが、テンションが上がる顧客体験は「新しい自分を発見したとき」ではないかと思うんです。
私自身の体験だと、大阪で有名なヘアサロンでのカウンセリング体験が、まさに「新しい自分を知る」良い機会でした。同店には、カウンセラーが美容師と顧客をマッチングさせるシステムがあり、カウンセリング時に髪の毛を見えない状態にして、興味がある髪型、興味があるけれど未経験の髪型などを聞かれます。
チャレンジしたい髪型があっても恥ずかしくて言えないことって多いと思いますが、掘り下げて聞いてもらえたら言いづらいことも言えるのではないかなって。その後、マッチングした美容師さんに施術してもらい、最後に美容師ではない別のスタッフに感想を聞かれます。
サービスを体験したときに感じた喜びというか、エモーショナルな感覚をどう解析するかが課題ですね。私自身は「新しい自分を発見したからではないか」と仮定していますが、明確な答えを見つけなければ勝機をつかめない気がしています。
ーーヘアサロンのカウンセリングの仕組みは、美容師本人に直接言えないことを言いやすそうですね。本音を言える安心感も顧客満足度を左右する要素なのかなと思いました。本音を引き出し、顧客のニーズをつかめなければ、マッチする商品やサービスの提供は難しいですよね。
岡森さま そうですね。商業施設の運営としては、顧客の興味関心を広げる仕組みも必要だなと感じます。NOSE SHOPさんの香水ガチャがまさにそうで、遊びの要素を取り入れることで、強い興味がなくても「やってみよう」という動機づけになる。香水のように、購入のハードルが高いものは、入り口に遊びをもたせて顧客の興味を引く施策が効果的かもしれませんね。
ブランドの強みを生かした遊びの要素によって、0から0.5歩まで踏み出せる仕組みをつくり、モノの購入につなげていく。そんなカスタマージャーニーを描きたい企業にとって、KAORIUMは画期的なツールかもしれませんね。
KAORIUMその他の展開とご相談について
今回は、香水の専門店「NOSE SHOP」への導入事例をもとに、商業施設におけるKAORIUMの可能性について、ルクア大阪のご担当者さまにご感想を伺いました。この他にも、 KAORIUM を活用した飲食店向けメニューツール「KAORIUM for Sake」や、嗅覚の感性を育む小学校向け教育プログラム「カオリウム実験教室」など、さまざまな業界に対応するサービスを提供しています。
「香り」にまつわる新たな体験価値の創出をお考えの方は、ぜひ、お気軽にお問い合わせ からご連絡ください。
【LUCUA osaka | ルクア大阪について】
ルクア大阪は西館「LUCUA 1100」と東館「LUCUA」を「LUCUA osaka」と総称し、東西両館を一体として運営する国内最大級の駅型商業モール。便利で気軽に立ち寄れることに加え、ゆったりと時間を過ごせるお買い物の場を提案します。ファッションやトレンドに敏感な働く女性をメインターゲットに、「日常生活における手の届く贅沢」「高感度で洗練されたライフスタイル」を提案。“ここにしかない価値”を提供する、梅田地区でNo.1のファッションビルを展開します。
【NOSE SHOPについて】
世界中の新進気鋭のフレグランスブランドを一同に集めた香水の専門店。大きな鼻のオブジェを目印に、日本国内唯一のニッチ フレグランスのセレクトショップとして 2017年8月にスタート。現在、国内に10店舗を展開。香りの世界がもっている、どこかとっつきにくくて敷居の高い雰囲気からは距離を置き、カジュアルかつポップに、そしてちょっとクレイジーに新しい 香りの世界を提案。インディペンデントでハイグレードなフレグランス専業メゾンを世界中からセレクトしお届けすることで、 最上級の香りと共に暮らす喜びや楽しさをお伝えします。
https://noseshop.jp/