心身に作用する香り
香り成分が心身を巡るルートはいくつかあります。
空間に香りを拡散させて楽しむなどの芳香浴では、嗅覚器官から脳へと伝わるルートを辿ります。
嗅覚は原始的な感覚と言われていて、動物が生きるために食べのもを見つけたり、異常を察知したりするための、本能的な感覚です。
鼻腔の天井部分には、匂いを知覚するための嗅神経細胞が1000万個ほど存在します。鼻の中に入ってきた芳香成分が嗅覚受容体にくっつき、匂い物質の情報が電気信号として嗅神経を介して嗅球に伝わり、大脳辺縁系に直接伝達され、匂いを知覚します。
大脳辺縁系は記憶や感情に関わり、私たちがもつ五感の中で、唯一嗅覚だけが大脳辺縁系にダイレクトに伝わるため、人の感情に働きかける力が強いと言えます。
ある説によると、私たちが日常生活で感じる感情の70%以上が匂いの影響を受けていると言われています。良い香りや好きな香りを嗅ぐと、気分が良くなったり、元気が出たり、リラックスした気分になるのは、香りが大脳辺縁系に直接影響を与えるためです。
香りの情報は、大脳辺縁系を経て、視床下部や下垂体に届きます。視床下部や下垂体は免疫や内分泌調整に関わっています。良い香りを嗅ぐと、副交感神経が優位になることでリラックスしたり、ホルモン分泌を調整したりといった働きがあります。その後、大脳新皮質の嗅覚野にも伝達され、匂いとして知覚されます。
このように、香りは感覚にダイレクトに働きかけることができるため、リラクゼーションやストレスの軽減、また、集中力や創造性を高めたい時にも役立ちます。香りは私たちの日常生活において重要な要素であり、その効果的な活用は健康や幸福感の向上に寄与することができます。