映画プロデューサーの視点。TCP最終審査会から探ってみた2020
2020年も、TSUTAYA CREATORS' PROGRAMの最終審査会に伺ってきました。
TSUTAYA CREATORS' PROGRAMとは……
『TSUTAYA発の映像クリエイターと作品企画の発掘プログラム。「本当に観たい映画作品企画」をプロ・アマ、年齢、性別、国籍など一切の制限なく募集』公式サイトより https://top.tsite.jp/special/tcp/
で、昨年の模様もnoteでまとめたので、今年の模様も「プロデューサーってどんな視点で企画を見るのか?」を、ぼくなりにまとめたいと思います。
シナリオ・センターは、1970年に優秀なシナリオライター・脚本家、プロデューサー、ディレクターの養成を目的に、新井一が創立。
ジェームス三木さん、内館牧子さん、岡田惠和さんなど600名以上の脚本家、小説家を輩出するの学校です。2020年で50周年!
URL:https://www.scenario.co.jp/
TSUTAYA CREATORS' PROGRAMの最終審査のスタイル
まず、TSUTAYA CREATORS' PROGRAMの最終審査はどのように行われるのかというと、脚本部門、監督部門、企画部門それぞれの部門の最終審査に残った方が、プロデューサー陣にプレゼンテーションを行い、質疑応答を行うというもの。
今年のプロデューサーは以下の方々。(TCP公式サイトより)
小川 真司
株式会社 ブリッジヘッド 代表取締役プロデューサー
代表作品:『浅田家!』(20)、『ノルウェイの森』(10)、『ピンポン』(02)
久保田 修
C&Iエンタテインメント株式会社 代表取締役社長 プロデューサー
代表作品:『のぼうの城』(12) 、『NANA』(05)、『ジョゼと虎と魚たち』(03)
瀬戸 麻理子
エイベックス・ピクチャーズ株式会社 プロデューサー
代表作品:劇場版『きのう何食べた?』(21) 、『さよならくちびる』(19)、『溺れるナイフ』(17) (03)
山内 章弘
東宝株式会社 映画企画部長 プロデューサー
代表作品:『TRICK』シリーズ、『シン・ゴジラ』(16)、『アイアムアヒーロー』(15)
この方々に向けてプレゼンするんだから、みなさん、緊張が半端ないと思います。それでも毎年素晴らしいプレゼンばかりです。
お客さんは誰なのか?
さて、プロデューサーの方の視点。
昨年もよく出てきた話でしたが、「どんな人に見てもらいのか?」というのを、プロデューサーの方はプレゼンターによく質問します。
作家集団の新井講師は、『商品化計画』という考え方のもと、ゼミを運営しています。それは、やはり、映像化するに足る作品にするには、まず『誰に観てもらいたいのか』を意識すべきという考え方が根っこにあります。
そして、案外、観客は誰かが練れていない企画が多いようです。
【最終審査員のコメント】
『ターゲットを、広くすると誰にも伝わらない』
『シニア層は本当に観に行くんだろうか?』
『企画パッケージとしては面白いけど、誰が観るのかなと思ってしまう』
その素材でなくてはいけないわけは?
企画の素材についても、プロデューサーの方々は突っ込んで質問する印象があります。
【最終審査員からのコメント】
『柄本明でなくては、ならないわけは?』
『アニソンダンスバトルでなくても描けてしまわないか?』
その素材でないと描けないドラマか否かというのは、とても重要な要素だと思います。
たとえば、スポ根ものであれば、そのスポーツでなければ描けない人間ドラマなんだ、という説得力が必要になります。
「このお話、サッカーじゃなくて野球でも描けるんじゃない?」と思われてはけないわけです。
何が一番重要なのか
最終審査会に残った作品には、当然ですが作者の思いが強烈に入っています。ときには、入りすぎてしまうくらいに……
そうすると、さまざまな要素がてんこ盛りな企画が多くなります。そう感じた時、プロデューサーの方々は、どこを一番描きたいと思っているのか、気になるようです。
【最終審査員からのコメント】
『要素が多い映画。予算の都合でけずるなら、どこは最後まで残したい?』
『何を一番重要と考えている?』
企画を考えたら、一度、のっぴきならない理由で相当削らなきゃいけなくなったときに、ここだけは削れないところはどこか?という視点で、企画を見直してもいいかもしれません。
TSUTAYA CREATORS' PROGRAMならではの厳しさ
TCPは、公式サイトにも載っていますが、5000万円超の総製作費をバックアップしてくれます。商業ラインに乗る映画作品をつくっていくんだという意気込みが伝わってきます。
そういう意味では、TCP独自の突破する難しさがあります。
『実際に作るという基準が特徴のひとつ』
『作品に対して、価値を感じるかを検証しながら審査をしている』
少なくとも、5000万円というお金を出す価値があると思わせる企画を求められるのが、TCPの特徴です。
製作費から逆算すれば、どれくらいの興行収入を想定して審査しているかも、自ずと見えてくるのではないでしょうか。
企画の根っこになるのは、作者の体験や興味関心だと思います。そこからどこまで『三方よし』な企画にするのか、それがどのコンクールよりもビビットに求められるのがTCPかもしれません。
受賞のその先の観客を意識するコンクールという意味では、挑戦することで視点が広がる稀有なコンクールなのかもしれませんね!
実は、今年からシナリオ・センターは、協力企業として参加しています。近々インタビュー記事が出るかと思いますが、TSUTAYA CREATORS' PROGRAMとシナリオ・センターは、クリエイターを支援していくという意味で、向っている方向は同じだよね的なところから、ご一緒しています。
映画作りに興味がある人は、名作や好きな作品の逆箱にもチャレンジを!映画の楽しみが増えますよ。