キミが男の娘だから好きなんだ! 第3話
第3話 プロット
あの男嫌いの智夏が、「私とデートしてくれ!」と篤丸に頼み込んでいる。
しんとなる店内、誰も彼もが呆然とした表情で彼女を見つめていたが、ハッと心兎は我にかえる。
「デート!? 何言ってんだ智夏! こんな出会って間もない奴に!」
そう声を荒げるが、智夏は「心兎は黙っていてくれ」と、引く様子もない。想い人が盗られるのではないかと気が気ではない心兎は、仕方なく「そいつだって、本当は男なのに」と伝えるが。
瞬間、智夏の体はハッとこわばり、案の定隠し持っていた木刀を喉元につきつけられてしまう。
しかし、心兎はしめたとばかりに「ほら、やっぱりまだ男嫌いが直ってないだろ。だから行くなよ」と智夏に伝えるが。
突然、今まで黙っていた篤丸が智夏の顔を見て「うん、いいよ。行こう、僕とデート」と、答えたのだった。
その夜、寮の自室で勉強をしながら、とある日付に◎のついた9月のカレンダーを見つめる智夏。何か思いつめるような顔をして、ため息を吐くが……。
そうこうしている間にやってきた、智夏と篤丸のデートの日!
場所は若い人々であふれる原宿駅前。いつもどおりに男の娘の恰好をして、大きなボストンバッグを持ちながら、智夏のことを待っていた篤丸は心兎にバックヤードで言われた「智夏の笑顔は世界一可愛いんだ。いいか、もし好きにでもなったら呪い殺す……!」という言葉を思い出して、フッと怪しげに笑っていた。
そんな時、「待たせたな、篤丸くん……」と声がして篤丸が顔をあげるとそこには(馬用の)メンコで顔を隠し、息苦しさと興奮から熱い呼吸をしながら、「今日も可愛いなぁ……」と呟く、不審者スタイルの智夏がいた。
「キャー! 不審者!?」と悲鳴をあげる篤丸だったが……。
そんな2人を、電柱の影からこっそり見つめている人影がいた。一人はもちろん心兎。そして、もう一人はバイト後にいつまでも泣き続ける心兎に声をかけた結果、なぜか見張りに参加することになってしまった巽だった。
「距離が近い! 智夏が襲われたらどうしよう。男はオオカミなのにぃ~!」といちいち絶望する心兎に、「君はあの子のパパなのかい?」と呆れながらも一応ついて行ってあげる巽。
そんな心兎と巽のやり取りなど知らず、2人が初めにたどり着いたのは映画館だった。
「へぇ。案外普通にデートさせてあげてるんだ」と、篤丸の行動に驚く巽だが、隣の心兎は「映画館…!?」と崩れ落ちる。
どうやら心兎にとって、映画館は密室にカウントされるらしく「いやらしい、2人っきりで何をするか分からない!」とその顔は不安でいっぱい。
そんなことは絶対ない。と巽は思いながらも、長年の片思いでこじらせてしまった心兎を不憫に思い、一緒に映画館に潜入捜査をしてあげるのだった。
こうして、篤丸と智夏の少し斜め後ろの席をとった心兎と巽。上映しているのはいわゆるアメコミ映画で、智夏もメンコを脱ぎ大人しく映画を見ていることから、別にムードもなくただ普通に映画を楽しんでるだけだな~と気を抜いていた巽だったが。
その時、彼は衝撃的なものを見てしまう。驚いて隣の心兎に声をかけようとするが、彼は智夏と同じ空気を吸っていることに恍惚とし酩酊状態。仕方なく「えぇ~!?」と一人で混乱しながら、篤丸たちを監視する巽だったが……。
その後も、喫茶店や古着屋に向かい、普通のカップルのようにデートをする智夏たちを追い続け、ふと心兎は気が付く。
「なんか、アイツら密室ばかりいってね?」と。
そうなのだ、一見するとただのショッピングなのだが、どこも個室のある喫茶店だったり、ビルの中にある隠れた狭い服屋だったり、どうにも物理的に距離をつめようとしている……いやらしい雰囲気がぬぐえない。
「まさか、アイツもうすでに智夏に気があったりして」と思わずつぶやく心兎に、瞬間ビクッと怯えたように反応する巽。
「え、なんですか今の反応。巽さん、もしかして何か知って……」と心兎は問い詰めようとするが。その時、智夏が次に選んだデートスポットにたどり着いてしまう。
さぁ、今度はどんなところかな。ファミレスにでも向かうのかなーと店内に入って行く2人を観察する巽だったが、なんとそこは、想いのある人々が行くにはうってつけの、ザ・密室の集まったカラオケ店!
映画館でアレを見てしまったあげく、まさかのチョイスに「まさか……2人は」と、狼狽する巽。心兎が「智夏―!」と泣いて暴れるのではないかとハラハラするのだが、何故か彼は静かにカラオケ店を見つめ……。
そしてその頃、2人っきりになったカラオケボックスの個室では、メンコを外した智夏が緊張した面持ちでうつむいていた。
そこにドアを開け入って来る篤丸。
「それにしても大胆だね、まさかオレを脱がそうとするなんてさ」
そう言った篤丸は、いつもの女装姿ではなく、長髪のカツラも外した青年スタイルだった。赤面して震える智夏にそっと近づき、「さ、それじゃあやろうか。アンタの望みってやつを」と囁くが……。
【終】