映画『セックス・アンド・ザ・シティ』を振り返ってみる
あなたは同じ映画をどのくらい繰り返して観たことがあるだろうか?
私はここ1ヶ月である映画を毎日3回、もしくはそれ以上の回数で観ている。
どうかしていると思われそうなので周りの人には隠していたけど、よく考えてみるとこのままでは同じ映画を繰り返し90回以上観ていることになる。NetflixやHuluなどの動画配信サービスがあり、劇場でも続々と新作が公開されている中でこの1ヶ月私が永遠に観ているのは『セックス・アンド・ザ・シティ』(以下SATC)だ。ドラマじゃなくて映画1作目のほうの。
なぜこんなことになったかというと、このSATCループにハマる前は『ギルモアガールズ』全7シーズンを3周して観ていた。そろそろ違う世界に行かなければ…と思い、私は急にハリーに会いたくなった。そう、あのハリー。最終的にシャーロットのパートナーとなる男、ハリーだ。私はSATCに登場する男たちの中でハリーが一番好きだった。あのつるつる頭にキュートなルックス、でも重要なのはそこじゃない、ハリーがシャーロットにかける言葉の数々がすばらしい。
「僕みたいな男に君みたいな素敵な人が現れるなんて」ハリーはSATCに現れた理想の人だ。私は結婚願望はほとんどない人間だけどハリーなら、そう思わせられるくらい私は強火のハリー推しだ。ハリー最高!
ということで、ハリーが登場するドラマのシーズン5からSATCを観はじめた。ハリーを見るためにシーズン5から最終シーズンまでを観るということを何度か繰り返した。ハリーを一目見たいがためにアレクサンダー・ペトロフスキー地獄を何度も乗り越えないといけなかったが、ハリーがいたので乗り越えることができた。それからだ。もちろんその続きが観たいとなれば映画編に突入するだろう。
そこから私はなぜかSATCの映画から抜けられないループにハマってしまった。第一、SATCの映画シリーズは色々なところで酷評されている。たしかにSATCはドラマシリーズが優れすぎていて、映画編はそれに劣るというのは理解できる。
だけど、私は考えずにはいられなかった。これはそんなにひどいものなのだろうか?
それに、「女性映画」には失敗が許されず、誰もが納得する傑作でなければいけない。そんなものすごくハードルの高いことが要求され、理不尽なプレッシャーをかけられているのではないだろうか?
最近9月に入って暑さが穏やかになってきた。でも私の部屋は狭い屋根裏部屋みたいな部屋なので無駄に日当たりが良くて暑い。クーラーをゆるくつけると、キンキンにつけた時よりもさらにゴミっぽい臭いがする。多分内部クリーニングが必要なやつだ。私もとりあえずキャリーが食べてたのと同じ日清のカップラーメンにお湯を注いで、おそらく何十回めかのSATCを再生して検証に挑むことにした。
この映画でミランダがスティーブの良いところ、悪いところを作っていたように、私もこの映画の良いところ、悪いところリストを作ってみた。
以下に続きます。
良いところ
・ まずオープニング。ニューヨークの摩天楼の景色の後にでっかい花がついたドレスを着たキャリーが現れて、シャーロット、ミランダ、サマンサと順番に仲間たちを紹介しながら招集していく。まるでマーベル映画のヒーローたちみたいでかっこいい!
・ 始まって数分でゲイ男性カップル(と思われる)が現れる。SATCの18番、ゲイ男性の存在の可視化!
・ はいハリーきた!!白馬(のメリーゴーランド)に乗ってきたよ!!!
・ ブルックリンがイケてなかった時期にミランダが買ったブルックリンの家が素敵に改装されてる!先見の明があるミランダ!
・ 実は3冊しか本を出してないキャリー。
・ ビッグが料理をしているシーン、おじいちゃん感ある
・ レストランでキャリーが結婚することを聞いて叫んで、周りの人たちに婚約を伝えてレストラン全体で祝うシーン、アメリカで本当に見たことある うらやましい文化
・ ミスタービッグとの結婚話よりボトックスの話するほうが盛り上がってたサマンサ
・ 朝食中にお犬たちに餌をあげているハリー♡♡♡
・ キャリーがいろんなブランドのドレスに着替えて撮影してるときに流れるシアラの曲最高か
・ 仕事中にキャリーの撮影写真を見てるミランダ。テーブルの上にあるハーバードのマグ、ずっと使ってるんだね!
・ キャリー、撮影の時にヴィヴィアンのドレスを着てくるくる回ってるけど、こっちのスタイリングほうが当日のよりもかわいい
・ セックスのことをメイクラブっていうの、めちゃくちゃシャーロット!
・ サマンサの彼氏スミスはいつまでも若く美しくかっこよくいなければいけない夢男子的な役割を担っている。多くの作品で女性のヒロインが当たり前のように背負わされてるあれだ。垂れ下がった腹など許されないし、彼はいつまでもこの作品でこの完璧な男を演じ続けなければいけない。さぞプレッシャーの大きいことだろう。老けるな、太るな、美しくあれ。同時に「ヒロイン」が多くの作品で背負わされているプレッシャーはこんなにも大きいのかと改めて感じる。
・ 服の整理するのに17年くらいかかるって言うときのキャリーの表情何回でも見れる
・ 服の整理してるときにサマンサが玄関に現れてシャンパンを「ほっ」って出すときの動作、表情全部が最高
・ サマンサが80年代のベストヒットのCDをかける瞬間に世代を感じる。この間ヴィレヴァンで00年代にヒットしたJ-POP曲のコンピレーションアルバムが売ってて、友達と「うちらもついに記憶力が衰えたと思ってこんなの売りつけられる世代になったか」と文句を言ってたらそれがけっこうオリコンランキング上位に入っててショックを受けた。サマンサは音楽にあまりこだわりがないというか、オタクじゃないんだよな。ドラマSATCで3人がバーブラの『追憶』の話で盛り上がってる時に「は?」ってなってたサマンサ様を思い出す。
・ キャリーのクローゼットをみんなで整理するとかドラマ版SATCだったら絶対やらないけど映画だからスペシャル版として楽しむことにしよう…
・ シャーロットの養女リリー役のアジア系の子がかわいい。
・ マグダがいるとはいえスティーブに比べてミランダがどうも家事に育児に仕事に介護で追い詰められて割りを食ってるんじゃないかという臭いがする
・ スティーブが浮気したとミランダに告白する時の追い詰められたスティーブ役の彼の演技のすばらしさ
・ 人の不幸を通して自分の幸せを再確認するシャーロットパイセン
・ 結婚の前夜祭で嫌な冗談を言う男を黙らせるサマンサ様「そこのやなやつ!あたしがしゃべってんだよ!」
・ 喫煙者が外でタバコ吸ってるとき4人並んだらサマンサがいちばんイケてる件
・ みんな朝方人間。寝るのが早い
・ キャリーがドレスを着て出てきた時にリリーの手を引いて「ほら花嫁さんだよ!」って言ってるときのハリー♡
・ 結婚式場にビッグが現れなくてキャリーが電話かして!って言ったらiPhone出されて使い方わかんない!って突っぱねるの、超キャリーっぽい
・ キャリーを置いて式場を離れて「なにやってるんだ」って我に返った感じの表情をするビッグ、ロボットっぽい
・ キャリーのビッグに花をぶつける迫真の演技!これ何度も撮ったと思うとすごい。
・ ビッグを睨んでこっちに来るなというシャーロットの演技!そのあとも怒ってぷりぷり歩くのもシャーロットっぽくてすごい!気まずそうにビッグをちらっと見るミランダもすばらしい!
・ シャーロットの家に連れてこられたキャリーがかぶってる毛布、めちゃくちゃ心地よさそうで羨ましい。Hってかいてあるからエルメスかな?ソファーも座り心地よさそう。チラチラ見えるリリーの部屋もかわいい。この家にもらわれて住みたい。
・ 意識高いシャーロット家、リリーが寝る時のお供の人形もアジア系の顔したお人形になってる
・ メキシコについた時のメイクをしていないキャリーの姿。私がキャリーと同世代だったらこういうシーンあったら「わかるぜ…」ってちょっとほっとするとおもう
・ サマンサがキャリーにご飯食べさせるシーン、今見るとなんとなく居心地が悪い。でも2人とも神級に演技が上手いので運良く騒動のことを忘れてる、もしくは知らなければとてもいいシーン
・ 足の脱毛してないことに文句言われて「結婚したら他にやることいっぱいあって大変なの!」とミランダが言ったらサマンサが「結婚のせいにしないでよ、シャーロットも結婚してるけどあんたみたいに森を育ててない。あんたを森の中で見つけるのが大変になる前にスパの予約しなきゃ!」って言ったらそのまま怒って出て行って、シャーロットは働いてないでしょ、とか返さないミランダ。
・ ジムでピラティスしようというシャーロットをガン無視する3人
・ キャリーのアシスタント募集に酒に酔って現れたキャシーという女性。「あんたの本最高にイカしてるよ!!!」普段何してるのかめっちゃ気になる。キャリーが手に持ってる履歴書(らしきもの)、ボロボロのノートちぎったやつ…
・ アシスタントの面接してるときのキャリーのファッションがすてき。この映画の中で一番キャリーらしくていいファッション
・ ニューヨークマガジンを見て部屋探しをするミランダ。なんかアナログでいい。時代を感じる。
・ ハロウィンコスチュームの買い物してるときのミランダさん「女が選べるのはセクシーな猫か魔女だけ。2つしかない。」深い。
・ キャリーさんのビッグから来たメールの話「『言葉が見つからない。』じゃあメール送らないでくれる?」の言い方が最高
・ ムーランのコスチュームを拒否してシンデレラがいいと言い張るリリーちゃん。わかる。
・ 発情ドッグはどうやって撮影されてるんだろう?
・ ルイーズと飲みに行った時のキャリー先輩「わたしゃメールはしないけどさ、夜11時半にかかってくる電話なんてセックスが目的に決まってるよ」「楽しんできな。20代なんだからね。30代で色々学んで、40代で飲み代を払うのさ」かっこいい
・ 結局行かないでキャリーと飲むことを選ぶルイーズもいい
・ 妊娠してから悪いことが起こるのが怖くて毎日走るのをやめてしまったシャーロットに「怖いからって自分を見失っちゃだめ。走り続けなきゃ」って言うシーン、これもしシャーロットに何か起こったらとんでもないことになるよな…と思ってこの助言の危うさに震える。もし何かあったら責任とれないじゃん… でもそのあとのシャーロットが走り始めてセントラルパークの季節が変わっていく描写が美しくてとてもすてき。
・ キャリーがルイーズにあげるヴィトンのバッグがダサい
・ ルイーズからもらった『若草の頃』を観てあっさり消してしまうキャリーさん
・ 『Auld Lang Syne』(Shazamした)って曲が流れる中でそれぞれの大晦日の様子が描写されるこのシーンがこの映画で一番好き。とっても美しいと思う。パートナーとの楽しい時間を過ごすサマンサ、家で新しい命の誕生を待ちながら穏やかに過ごすシャーロット、つまんないパーティでアンソニーを見つけてほっとするスタンフォード(そのあとなぜか恋愛関係になるのはSATC七不思議のひとつ)、パーティでかつての恋人を見つけるルイーズ、大晦日を孤独に過ごしているミランダの元に「あなたはひとりじゃない」と言ってかけつけるキャリー。ふたりで楽しそうにデリバリーの中華料理を食べてるシーン、大好き!
・ バレンタインデーにクィアなネイバーフッドのレストランでキャリーとご飯食べてる時のミランダ、超ホット。
・ 乳首にきゅうり貼り付けてるサマンサはん。
・ 謝るのに花贈る文化すてき。
・ ミランダとスティーブの夫婦セラピーでスティーブがさんざん屁理屈をこねた上、なぜか喧嘩両成敗みたいな終わりかたになるのなんなん?
・ ルイーズがキャリーに「いいニュースが2つあるの!」って言ってそのいいニュースの1つに自分の婚約ニュース入れるメンタル見習いたい
・ ブルックリンブリッジにミランダを見つけた時にアップになるスティーブの嬉しそうな表情の素晴らしさ。最高に演技上手いふたり。
・ サマンサが自分を抑えすぎて太ったことについてキャリーの「どんな体型でも素敵だけど、あなたはそれで幸せ?」って聞きかた、よい。
・ サマンサとスミスの別れ、理想の別れかたなのでは?!
・後世に残したいサマンサ先生の偉いお言葉「 I love you, but I love me more!!!」
・ パートナーとの安定した生活を置いて自由、そしてリスクのある道を選ぶサマンサに対して「君はどうなる?」とサマンサの心配をするスミス。こんな美しい別れ方あるんでしょうか。
・ ビッグとシャーロットが偶然会ってしまったレストラン、素敵で行ってみたかったのに調べてみたら閉店してた。
・ 娘が生まれた時にハリーがキャリーに言うセリフ「美女に囲まれる人生なのさ」これ、シャーロットと娘だけじゃなくてシャーロットの女友達、つまりキャリーたちのことも入ってるよね?!あの強烈な女たちに囲まれるのに怯まない、いい男ハリー。
・ ビッグがシャーロットを病院に連れてきたことをキャリーに知らせるハリーの見せ場!大仕事!!シェイクスピア芝居みたいな立ち姿!!ピンクのネクタイ!!!出た、ハリーの口癖「シュマック!」後ろからのショットの頭と首がつながってて肉がぷにゅってるところまでキュート。こんなにキャリーと絡むハリーはじめてじゃない?!大役おめでとう!!!!
・ 終盤、結婚式のあとの食事シーンから流れ出すジェニファー・ハドソンの音楽!!!
・ サマンサの50歳の誕生日、4人が集合して祝う。「50歳、そして最高にファビュラスな女!私たちに乾杯、そしてこれからの50年に乾杯!」感極まってしまい泣いた。
・ 若い世代のそれぞれの女友達たち、新たなキャリー、サマンサ、シャーロット、ミランダたちの姿が写って画面がフェイドしていく終わりかたが素晴らしい。最初も若い女の子4人組から始まるんだよね泣
悪いところ
・キャリーとビッグが結婚する
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