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「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」 後半を改めて見返す/あの雨に入ってたものは何?
俳優のチョン・ヘインが好きなので、ここ数ヶ月はずっと「となりのMr.パーフェクト」の最新話を見ることを最優先に生活していた。土曜と日曜の23時頃配信だったので、土曜の夜はできるだけ早く家に帰り、日曜の夜はドラマを見た後にファンの感想やミームをさんざん追って結局夜中3時頃まで起きて、月曜の朝は常に寝不足でほぼ記憶がなかった。でもそれこそが一週間を乗り越える楽しみだった。
残念ながらその生活も少し前に終わってしまったので、ぽっかり空いた穴を埋めるため、同じくチョン・ヘインの出世作「よくおごってくれる綺麗なお姉さん」(英題:Something in the Rain)を改めて一から見ることにした。今回は改めて、その感想をとりとめなく書いていきたいと思います。見てる前提のうえ、ネタバレしまくりで書いていきますので、意味がわからなかったらごめんね!読んでみて気になったらぜひ見てみてください。
とりあえず拾った相関図とあらすじ置いときます。雑に説明すると、久々に再会した親友の弟との恋愛ものです。
35歳のジナ(ソン・イェジン)は親には結婚を急かされ、職場でのセクハラや浮気した彼氏との破局など、息が詰まるような毎日を送っていた。そんなある日、大親友のギョンソン(チャン・ソヨン)の弟で、自分の弟スンホ(ウィ・ハジュン)の親友でもあるジュニ(チョン・ヘイン)が海外赴任から帰ってくる。3年ぶりに再会したジナとジュニは、会社が同じビルということもあり、一緒にランチをしたり、飲みに行って他愛のない会話を重ねていった。そうして多くの時間を共有するうちに、いつしか2人は恋人関係に。しかし、互いの家族の目は厳しかった。ジナの母親はジュニの家柄や年の差を理由に交際に大反対。ギョンソンとの関係もギクシャクし…。
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前半、久々にふたりが再会して一緒にご飯を食べたり、映画を見に行ったりしてどんどん距離を縮めていく様子は本当に楽しい。カップルになってからは夜中に家を抜け出して遊びに行ったり、こっそりお泊りしたり、そういう他愛もない遊びが息の詰まるような会社員生活の中での楽しみで、そのうえ音楽やロケーションも全部素敵、もはやこの世の贈り物のような作品。
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この間このドラマのショート動画のコメント欄に「最初の半分は癒しのドラマだった。後半の半分はなかったことにしてる」というコメントがあり、まさにそれな!!!となった。私もこのドラマ大好きだけど、後半があまりにもしんどすぎて、もはや「好き」と言っていいかさえわからなくなってくる。でも今回はあえてその後半の話をしたいと思います。
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うちは、フィクションの中で描かれる男の中で一番といっていいくらいソ・ジュニのキャラクターが好きなんですが、このドラマって前半は最高なのに、問題が後半になるにつれて展開がどんどん地獄になっていくところなんですよね。
後半から周りにオープンにせずこっそり恋愛をしてた二人の関係が周囲の人間に伝わりはじめて、結局ジナの親から大反対をされるようになるけど、本来ロマコメだと有利に働くはずの「昔から家族ぐるみで知ってる」という関係がこれでどんどん崩れていく。そもそもこのドラマのジャンルはロマコメじゃなくて「ヒューマンドラマ」らしい。
親がいない親友と弟ジュニにジナの親が今まで「家族の一員だ」と言ったり、親切にしていたりしたのは、本当は親がいない二人を見下して「この子たちより自分たちはマシだ」と踏み台にして哀れんでいたから。実際本当に彼らと家族関係を結ぶかもしれないとなった時、ジナの親が主に彼らの出自のこと、具体的には「家柄がダメ」だと、変えようのないことを散々言い、親友との関係を含め、全員の関係がボロボロになっていく。今まで見た作品の中で、このジナの母親が一番のヴィランなんじゃないか?と思わされるくらいはっきり差別者で、超えてはいけない線を越え続けるので、見ているこちらの心もズタズタになる。
そもそも、ソ・ジュニのキャラクターの良いところって、自信に溢れているところだと思うんですよね。親はいないけど、仕事でそこそこ成功していて、おそらく姉や他の誰かを養えるくらいのお金も働いてそこそこ稼いでいて、シンプルにかっこよくてモテる。文章で書くと若干嫌味があるけど、チョン・ヘインが演じると愛らしさがあり、姉を大切にしてて、自分の才能で自分の食い扶持を稼いで生きている。それが自信に繋がってるタイプで、それがなんともセクシーなんですよね。まあただの私の好みの話かもしれないんですけど。
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それが後半にいくにつれて、出自を否定されることでその自尊心の部分までズタズタにされていく。演技がまた上手いから、余計にしんどい。
まあ、そんなこんなでいつもこのドラマを見るときは楽しい前半ロマコメっぽい部分だけを見て、あとはもう見ないようにしてたんですが、そうすると後半の印象がどんどん薄れてきて、「どんな風に終わったんだっけな?」となってきたので、今回久しぶりにちゃんと最後まで観た。結果、前回よりかは納得がいった気がするので、見てよかった。
とはいえ、やっぱりひっかかったのが、後半でジュニを捨てた父親が急に現れるところ。いくら大人になったとはいえ、親に捨てられる体験はトラウマだから、ジュニは珍しく大激怒して取り乱す。しかもその父親がジナを通して接触してくるもんだから本当に苦しんでいるんだけど、ジナは「それでもあなたのお父さんでしょ」と言って、父親に会って、ジュニの親に対する拒否を子供っぽいと言ってしまう。
ジュニは少し年下の彼氏だけど、今まで悪い意味での子供っぽい態度を取ったことがなくて、時にはもはや親か?みたいなレベルでずっとジナのケアをしているのに、自分を捨てた親を拒否する行為が「子供っぽい」!?!
ほんとに「はあ?!」展開すぎてジュニが可哀想になった。こんなに尽くしてきた人に自分の一番つらい体験さえも認めてもらえず、肩を持ってもらえないのか?!?別れな!!!と言ってしまいたくなるくらい。
劇中歌の”Stand By Your Man”で「Stand by your man〜」ってずっと歌ってるけど、「そこはさすがにあんたの男の味方をしてやれよ!!!」と、もはやつっこみしか入らない。しかもまさか、このジナの対応に怒ったジュニが悪いことになってる。というか、ジュニがジナのことが好きすぎて、そのあたりがなあなあになってしまうんですね。しかもなぜか最後ジュニが謝ってるし。なんでやねん!!!!!!(はあ、息切れ)(2018年のドラマを今この熱量で書いてる人、います?)
ちょっともう、ジナのことが好きなのは分かったけど、こんなに自分の大事な部分まで引き渡してしまって、明らかにこの関係性は健全じゃない、もうやめたほうがいいんじゃないか。。と思っていたら、やはり色んなこと(主にジナの親)に耐えられなくなったジュニはアメリカ転勤を希望して、もはや国を離れようとするんですね。プロポーズして一緒に着いてきてくれないかというジュニに対して、なぜかこの関係の傍観者みたいな回答をするジナ。
急すぎるのはわかるけれど、ここまで追い詰められた人の気持ちもわかってやれよ、、と思っていたら、プロポーズを断られたジュニが一人で歩く帰り道のシーン、ほんとにすごかった。こんな悲痛なシーン見たことがない。見てる方も体調壊すわ。チョン・ヘインってとんでもない俳優、とはっきりわかるシーン。Youtubeで抜き出し見つけられなかったけれど、21話のはず。
後のエピソードでそれから3年後、久々に二人が再会してしまう。(最初見た時離脱しかけたわ、なんで3年も間が開くのよ!) 新しい恋人(クズ)と一緒にいるジナを見て取り乱して家に帰ってきたジュニが、事情を知ってる同僚に対して「この3年間ユン・ジナが幸せじゃなければいいと思ってた」とぽろっと言う。このシーンがすごい。演技もだけれど、ジュニもそんなトキシックな気持ちを持ってたんだ!!と逆に感動した。あれだけジナが傷つかないようにと自分が全ての壁になって、全力でケアをして生きてきた人が、こんなふうに言うなんて。念の為、ジュニはDVするようなキャラクターではない。というか、そういう人がこういう感情を持ってたことに意外性があって、伝わるものがある。
しかも、再会しても全然何事もなかったかのようにジナに接することができなくて、なんかずっと苦しそうに怒ってる。ここはさすがにいや全然吹っ切れてないな笑笑、となる。笑 でもそのトキシックな未練とか、態度にそれが出てしまうところ含め、過去に親密だった人同士の割りきれなさが出ていて、それがなんかまたセクシーなんですよね。ていうかもうそこまで好きならもう仕方ない、正直どうかと思うけど、「もうあんたがそんな好きなんだったらしょうがないわ。。」と納得させられるものがある。長くなったけど、前回この辺りをちゃんと見てなかったので、今回見直してよかったところ。
しかもジナもジナで「私の戦い方はしぶとい」と言っていたように、あれだけ親が結婚に対してプレッシャーをかけてるのに、40歳になっても結婚しないという形で、ジュニとの関係を壊した親に数年かけて間接的に復讐をするんですね。「あんたも大した女やな、、」とここで気が付くわけです。
そして最後、仲良い元同僚が始めたカフェを手伝うために済州島に移住して働くジナをジュニが迎えに来る。もちろん雨の中。それで一応ハッピーエンド。このドラマの英題が"Something in the Rain"なのだけど、これに関しては珍しくこっちのタイトルの方が作品に合っているような気がした。雨の中で関係性が始まり、再会する時もまた雨。「この雨には何か(変なもの/人を変えるようなものが)入ってる」というニュアンスなんだけど、ロマンティックで好きです。
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最後の最後は夕焼けが美しい海沿いを白いTシャツとジーンズで幸せそうに歩く二人を映して終わる。とにかく映像の美しさに圧倒されるけれど、同時に「この後ジュニはアメリカから帰ってくるのか?」「済州島にいるジナはどうするんだ?友達のカフェ手伝いはどうなる?」「ジュニは帰国したってオフィスはソウルじゃないか?遠距離?どうするの?」みたいなこっちの現実的な質問には一切答えてくれない。でももうそれはそれで、全部「雨の日の奇跡」でどうにかなるんだと諦めることにした。笑
今回見返してよかったなと思ったのが、11話でジナが元彼に交通事故で殺されそうになる場面。書いてて物騒すぎる。このドラマ、元彼からのジナへの加害→ジュニ激怒のシーンが多いんですが、11話になってもまだ元彼が出てくるから、もうそろそろお腹いっぱいかも…となるあたりで、このシーンが話題になっていたことを最近知ってちゃんと見てみた。
https://youtu.be/Ul2q7mrN2rc?si=3UYKt0FqnPCqkxvR
病院に運ばれたジナが検査をしてて、でも出てこないから待てなくて更衣室にジュニが入っちゃうシーン。本来だったらありえない、ノックしろよ!ってなるはずなんだけど、ジュニが本当に心配しているのが伝わってくるのと、この線を越えることも普段の親密さの延長上にあることが視聴者側も分かっているから(少なくとも私は)、逆に安心感さえある。着替え手伝ってくれるシーンなんてもはや保護者。この「彼氏」の空気感を映像に残したのが本当にすごいなと思った。本当によくこんなアングルで撮ろうと思ったな!!
この作品、おそらくシネマトグラフィーがすごいって話はどっかで散々されているはずなんだけど、ロマンスの親密さを撮るための撮影方面からの工夫と情熱が本当にすごい。これを見るだけでも、このドラマを見る価値があると思う。
ちなみに「親密さ」とはこういうシーンのことで、こういう「フィールヤング」的、大人の女性向け漫画みたいな世界観がここまで丁寧に映像になってるものを初めて見たときの衝撃が今でもある。
https://youtu.be/Cotuc-IY4PI?si=ffas71GKMIPNyZKP
そして素敵なレストランの食事シーンとか、夜に楽な服でこっそり出掛けるシーンとか、前半がやっぱり楽しすぎる!ジナの出張について行ってふたりの旅行にしてしまったり、夜に公園で話したあと、手ぶらで夜に映画館行って「フランシス・ハ」を見るシーンが特に好き。
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二人のロマンス以外にも、ジナが仲良い同僚との関係性も好きだし、この二人の関係に驚きながらもそれを見守って、いざ壊されそうになったら守ろうとしてあげるジナの弟も、すごく良いんですよね。
久々に見ると総合してやっぱり好きだなと思ったし、特にこのドラマがヒットしてからこういう映画みたいな撮影方法のロマンスがどんどん増えたという認識だけれど、このドラマが持ってる独特の雰囲気はやっぱり他のどこにもないと思った。
演出、撮影、演技全部素晴らしいし、もはや私が子供の頃から大女優のソン・イェジンの仕事の素晴らしさは説明いらず、あとやっぱりそんな大女優が相手でももはやずっと前のめりで「大好き」感が全面に出てるチョン・ヘインがまじで良い。ただのファンだね。
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ということで、久々のエンタメ記事でした。観た人がいたら語りましょう。ではまた!