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夢の対決、バシュラール対クーン!
まず断っておきますが、科学哲学というジャンルにおいて、バシュラールとクーンというオオモノ哲学者2人を並べた時、私はだんぜんバシュラール派です。
自分は決して科学哲学の専門家ではないので、あくまで読書家としての意見ですから、冷静な判断ではなく好みの問題となりますが。
どうにもクーンの哲学については、「もしこの人の言っていることをぜんぶ認めてしまうと、科学に対してあまりにも犠牲が多いのではないか」と思えてしまう。
なんとか、バシュラールにクーンをやっつけてもらえないだろうか、そんな夢の架空対決があってもよいのではないか。
そんなことを考えながら、岩波科学ライブラリーの「ブックガイド文庫で読む科学」を読んでいたら、藤永茂先生がバシュラールの本を紹介しながら、
「クーンは回顧録の中で、バシュラールのことを『少なくともある程度は物が見えていた人だった』などと評しているが、物が少ししか見えていなかったのはクーンのほうである」とバッサリとクーンの失言を叩き、
ニュートン科学とアインシュタイン科学の違いについての説明という点で、クーンよりもバシュラールが正しいことが明白である、と断じている!
ありがたい、専門家によるバシュラール対クーンの模擬対決といえるような内容だw。
それにしても科学哲学という世界で、ここまで「誰かが誰かより正しい」と断言しちゃうブックガイドも珍しい。勇気ある論評。でもバシュラール派である私にとっては超強力な援護射撃で勇気づけられた気分。
この「ブックガイド文庫で読む科学」には、他にもファラデーの『ロウソクの科学』やファーブル『昆虫記』など、日本語の文庫で気軽に読める科学の古典がたくさん紹介されています。
「文系と理系の壁をぶっ壊す読書家でありたい!」という(私のような?!)読書マニアには、なんとも最適な「理系側の名著乱読へのみちしるべ」になってくれるブックガイドでしょう!座右に置くべし!