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『海賊の大パーティ』原語版が英語のリーディング教材としてオススメな三つの理由
ニュージーランドが生んだ児童文学作家マーガレット・マーヒーの作品、The great piratical rumbustification (日本語翻訳版は『海賊の大パーティ』)を英語原文で購入したのですが、
これはリーディング対象としてかなりオススメと思いました!
その理由は、三つあります。
ひとつめ:Kindle版だと安い!
マーガレット・マーヒーの本などを日本で洋書で探そうとすると一昔前ならえらく大変だったはずが、今ではAmazon.jpで普通に洋書版が電子書籍化されており、しかも安い。ぱっと買える。凄い時代です!
ふたつめ:向こうの小学生低学年向きくらいの本なので、一章ごとが短く、展開も早く、読みやすい
十三章からなる物語ですが、一章ごとが短くまとめられていて、読みやすい。凝った構文なんかも出てきません。すいすい読めます。
みっつめ:それでいて「海賊らしい野卑なセリフVS現代人の上品なセリフ」対決などがオトナにもめちゃくちゃ笑えて、楽しくて、語彙の勉強になる
何が言いたいかというと、この物語は、
子供を顧みないお父さんが、ひとばん子供の世話を任せるためのベビーシッターを雇うと、派遣されてきたのは、どう見ても『宝島』の世界から飛び出してきたような海賊!
というユーモラスなファンタジーなのですが、この海賊の英語セリフがとても面白いのです!
笑い方は、Yo-ho-ho!
他人であっても大人に対して気安くmatey(「あいぼう!」くらいのニュアンスですかね)と呼び、子供たちにはladsと呼びかける。
などなど、たぶん英語圏の文化の中で、「海賊キャラというのはこういう喋り方をする」というパターンがあって(日本の児童文学でいえば、忍者キャラは必ず「拙者は〇〇でござる」と話すことになっている、みたいなものでしょうか)、どうやらそれをパターン通りになぞっているらしい。
それが現代ビジネスマンである「お父さん」と対話すると、お父さんがビジネスマンらしく丁寧な英語で応対しているのと噛み合わなくて、めちゃくちゃ笑えます。
私なりにニュアンスを翻訳すると、
「失礼ですが、あなたは、そのう、経験豊かなベビーシッターなのでしょうね?」
「おいおい、あいぼう!お前さんがオレに正直モンでいろってんならオイラもいうけどさ。ぶっちゃけベビーシッターの仕事は今日が初めてなんよ!」
「なるほど。いえ、こんなことを言うのもね、あなたの格好や話し方は、ベビーシッターというか、わたしには何か別のキャラクターを思い出させるのでしてね、、、」
もちろんお父さんは、片腕がフック、片足が義足で、眼帯をつけているというこのベビーシッターが「海賊に見える」と言いたくて仕方ないのですが、奥ゆかしく直接指摘できないうちに、なあなあに押し切られちゃうわけです。
こうやってお父さんは仕事に送り出されたあと、海賊は、
「さあ、邪魔者は消えた!ぼうずたち、何をして遊ぶ?」と言うところで、「get rid of」と、まるでお父さんを「始末した」とも聞こえるような野卑な言い方をするのですが、そんなのも含めて、子供たちはノリノリに。
でも、ラストまで読むとわかるのですが、この物語でいちばん成長する主人公は、実はこのお父さんのほうだったりするのです。巧い構成!
英語圏のマンガやドラマで、よく「海賊」というキャラクターは出てくるわけなので、そんな彼らの「典型的な喋り方」というものを本書で学ぶのもいいのではと、オススメです。
特にこれはぜひ、お子さんに英語で読み聞かせてあげましょう!海賊のセリフのところを、しゃがれ声にして、いかにも野卑に喋ると、子供たちはきっとオオウケです!
※日本語対訳で読みたい方には、以下の「てのり文庫」版がオススメ。同時収録の「図書館員と山賊」の話も面白いオトクな一冊↓
※そして今回ご紹介した英語原版のKindleバージョンはこちらです!↓