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マーガレット・マーヒーの『足音がやってくる』は怖いというより家族の絆に泣ける物語
児童文学の大家マーガレット・マーヒーの代表作『足音がやってくる』の原題はThe Haunting 。「とり憑く」とか「憑依」とかいう意味なのでゴーストストーリーかと思ったし、確かに路線的にはホラーなのですが、
オープニングからの展開はたしかに怖かったけど、主人公のバーニー少年を取り巻く家族のキャラクターが温かくて、実に良い。後半はむしろ胸熱くなります。
とりわけ主人公の二人のお姉さん、トロイとタビサのキャラクターが秀逸でした。
お節介で行動的だけどぶっちゃけあんまり役には立たない次女のタビサ。妹や弟に全く興味を持たない冷たいお姉さんだと思いきや、クライマックスで決定的なキーパーソンとして駆けつけてきてくれる長女のトロイ。二人の姉の、弟に対する愛が行間から溢れてくるようで、なんともさわやかな読後感でした。
ラストについては「甘い」と思う読者もいるかも知れない。でもどんな超自然的で凄まじい事件に巻き込まれても、最後には家族の絆がすべてに打ち勝つというのがマーガレット・マーヒー流儀の大団円。これはもう素直に味わっていただきたい!
それにしても、著者が女性だからということもあるかもしれませんが、父親キャラクターが見事に影が薄いままですねw。幼い男の子のピンチを救う力があるのは母と姉達という徹底した母系家族物語の前に、父親はほとんど出番なく終わってしまうのでした、、、。