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ハンガリー~聖冠とドナウの真珠~
ハンガリーと聞いて何を想像するだろう?
小さな頭から絞りだしてもハンガリー舞曲しか出てこない。
しかし、この曲を聞いたところで
ハンガリーの風景はまったく思い浮かばない。
晴れ間の少ない冬が近づきつつある11月、
ハンガリーのブダペストへと向かった――
王冠の国ハンガリー
ハンガリーを歩き回って、イシュトヴァーン1世と王冠が今でも大切にされているということが分かった。
例えば、教会ではキリストの像が祭壇に置かれていることが多いが、
聖イシュトヴァーン大聖堂ではハンガリー王国の初代国王イシュトヴァーン1世の像が置かれている。
イシュトヴァーン1世はハンガリーのキリスト教化をすすめ、
国を統一した聖人である。
ハンガリーでは8月20日を聖イシュトヴァーンの日として祝日に定め、
彼の右腕は現在も聖遺物として同大聖堂に安置されている。
このイシュトヴァーン1世が戴冠によりハンガリー王国の成立し、
現在でも聖イシュトヴァーンの聖冠は憲法で重要なものと規定されている。
国旗や国章に加え、王冠を傷つけたり侮辱すると禁固刑に処されるようだ。
我々は、我々の歴史的な憲法の成果並びにハンガリーの立憲国家の継続性及び民族の統合を体現している聖なる王冠に敬意を払う。
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温泉大国ハンガリー
もう一つ分かったことは温泉文化が発達していることだ。
ブダペストだけでもGoogleマップで10以上の温泉が見つかる。
古代ローマの時代からモンゴルの来襲、オスマン帝国の統治などを経て、
その形態を変化させながら現在まで温泉文化が継承されている。
今回はその中でも最も有名なセーチェニ温泉を訪れた。
温泉はゆったり過ごすというよりアミューズメントパークのようだった。
複数の屋内風呂に加え、外湯、プールやサウナ、渦の流れる温泉もあり、
プールのように遊びまわる子供も多かった。
温泉兼プールで渦に身を任せ流されることでリフレッシュできた。
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イスラムチックな教会
王宮の丘にあるマーチャーシュ聖堂という教会に入ってみた。
内装が特徴的でこれまで見た教会の中でも印象に強く残っている。
オスマン帝国に占領された際に教会からモスクに変わり、
奪取後再び教会となったという歴史がある。
柱や壁の幾何学模様はモスクの名残だろうか?
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レトロなブダペストの地下鉄
ロンドン、イスタンブールに次いで3番目にできた地下鉄らしい。
柱頭の装飾がギリシャの神殿の柱みたいでおしゃれ。
駅員室が木製なのもなんだかいいね。
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多種多様な料理グヤーシュ
ハンガリーを代表するパプリカパウダーを
ふんだんに使った料理グヤーシュ。
画像検索すると材料が異なるとみられるグヤーシュがたくさん出てくる。
家庭でもよく作られる料理のようで、
作り方にレパートリーがたくさんあるようだ。
オーストリアにもグラーシュという料理があり、
冷凍食品のグラーシュを食べたとき微妙な味だったので警戒していたが、
ハンガリーで食べたグヤーシュはおいしかった。また家で作りたい。
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現地の小さなバー
宿のチェックインを済ませ、飲むところを求めてさまよっていた。
市内を歩き回った後だったので宿の近くで軽く済ませようと
宿のまわりで探しているところ、小さなバーを見つけた。
窓から弱い光がこぼれていたので
人がいることは分かったが鍵はしまっている。
意を決してドアをたたいてみたが、反応はない。
スーパーで酒を買って帰ろうかと
あきらめかけたときに中から現れたおばあさん。
英語でここで飲めるか、とジェスチャー付きで伝えると中に通してくれた。
そこは大型犬と猫を飼っている年を召したおばあさんのバーで、
奥の棚には酒瓶が所狭しとあったのでバーだと言われれば納得できるが、
普通の家のダイニングルームのような店だった。
頼んだウィスキーを飲みつつ、
おばあさんと会話を試みたのだがどうやら英語が通じないらしい。
Googleの音声翻訳機能を使うことで、
おばあさんがワクチン接種後で腕が痛いことや日本に関すること、
普段のことなど他愛のない会話をした。
わずかな現金しか持っていなかったことも相まって、
ウィスキーを飲んでいたがこのときはまったく酔いが回らなかった。
Google翻訳を駆使した会話をしつつ、
翻訳技術と言語学習の必要性をぼんやり考えた。
翻訳機能の利用は機械を通すワンステップが必要となること、
画面を見るために視覚も使うことでかなり会話のテンポが悪くなることを身をもって実感した。
翻訳に関する技術が向上すれば言語を学ぶ必要がないという人もいるが、
「どこまで技術が進んでも何も使わない会話と比べるとストレスがたまるだろうし言語学習はやはり必要なんだろうなあ」とか考えながら残っていたウィスキーを飲みほした。
現地人と現地の雰囲気の中で会話できたのは良い経験だったと今は思う。
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その他の見どころ
ヨーロッパといえばクラシック。
ハンガリーを代表するピアニストのフランツ・リストが晩年を過ごしたアパートが記念館になっており、自筆譜やピアノ、弦楽器が展示されている。
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ブダペストは"ドナウの真珠"と称されていることを旅の途中で知った。
ライトアップされた国会議事堂は非常に美しく、
ドナウ川の対岸からみると曇っていても幻想的に見えた(トップの写真)。
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こんな感じで書いてたら2,000文字を超えてしまった…!
まだ10か国以上に残っているのに気力は持つのだろうか…!