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未来のコーヒー農家を救う、ダイレクトトレードの仕組み

  皆さん、こんにちは。Scala Global noteへようこそ。
  このnoteでは私たちが事業開発の中で取り組んでいる重点テーマ【農業】【医療】【教育】の中から、気になるスタートアップや関連ニュースを取り上げ、我々なりの視点でその「本質」に迫りたいと思います。今回は【農業】分野から、コーヒーについて取り上げていきたいと思います。

将来美味しいコーヒーが飲めなくなる?

 国際的なコーヒーの研究機関であるワールドコーヒーリサーチ(WORLD COFFEE RESEARCH)の2017年次報告によると、コーヒー生産地について2050年までに以下の2つのことが指摘されています。
1) 世界最大のコーヒー生産国ブラジル(コーヒー総生産量の3割を占める)
    では、生産地の60%以上が失われ、
2) さらに世界全体では54%のコーヒー生産地が失われます。
 これに伴い、現在最も消費されているアラビカ種の生産量は2050年までに50%減少してしまうと予想されています。
 それが、今、将来美味しいコーヒーが飲めなくなる?と見出しをつけた理由です。

 それでは、なぜ、生産地が減少してしまうのでしょうか?いくつかの理由があります。

1)コーヒー豆の価格変動と小規模生産者の関係
 コーヒー豆の市場価値は、主にニューヨーク先物取引所で、その年の需要と供給予測で決定します。需給バランスに加えて、為替相場の影響も大きく受けるのがコーヒーという商品の特徴です。
 こうした変動の影響を最も受けやすいのは、生産農家数全体の97%ほどを占める小規模農家(グアテマラコーヒー協会の定義によると生産量20トン未満)と言われています。大規模農家(生産量201トン以上)は、需給バランスを見越して、ある程度生産量をコントロールできるのに対し、小規模農家はその影響を大きく受けてしまう構造にあります。

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(出所:グアテマラコーヒー協会「コーヒー栽培のバリューチェーン 強化の重要性」https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzl3d-att/20200220_data06_jp.pdf

 2)生産者が十分な利益を享受できていない
 コーヒーが消費者に渡るためには、多くの仲介業者が介在しており、生産者は十分な利益を享受できてないとも言われています。
 例えば、下の図は日本国内での生産者から消費者までのスペシャルティ
コーヒー( 日本スペシャルティコーヒー 協会に認定されたコーヒー)の流通プロセスの一例ですが、農園で1kgあたり250円で取引されているコーヒー豆
は消費者の手元に届くまでは1kgあたり3万円で取引されています。

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(出所:グアテマラコーヒー協会「コーヒー栽培のバリューチェーン 強化の重要性」https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzl3d-att/20200220_data06_jp.pdf
LIGHT UP COFFEE MAGAZINE vol.7
https://lightupcoffee.com/magazine/6086/

 小規模農家は、こうした影響を受けやすい構造にあり、他の農作物への転作、農園面積の売却などを余儀なくされています。そのことがコーヒーの生産量にも大きく影響を与えるのです。
  ワールドコーヒーリサーチによると、コーヒーの消費量が現在と同
率の年2%で増加を続けた場合、2050年までに現在の世界のコーヒー生産
量の2倍にあたる2億9,800万袋の生産量が必要になると言われています。
それに対して、コーヒー生産が今のままの傾向で続くとコーヒー生産は需
要の増大に追いつくことはできず、需要に対して6,000万袋以上が不足する
と予測されています。

各コーヒーチェーンの取り組み

 スターバックスジャパンやカルディなどの各コーヒーチェーンは、「フェアトレード」という方法を用いて、コーヒー農家の支援を行っています。
 フェアトレードとは、生産者が十分生活できるようにコーヒー豆の最低買取価格を設定したり、各仲介業者が仲介料を取り過ぎないように監視役を設けたりなど、生産者に公平な利益を保証することで未来のコーヒー生産を支援していくという取り組みです。
 例えば、スターバックスジャパンでは、自社が買い付ける全てのコーヒー豆の倫理的な調達を目指し、C.A.F.E. (Coffee And Farmer Equity)プラクティスという独自の認証基準を設け、生産者に適切な対価が支払われているかをチェックしています。
 他のコーヒーチェーンもフェアトレード認証を取得したコーヒー豆を使用したり、生産者の支援をする基金を立ち上げたりなど、各社がさまざまな取り組みをしています。

新たなダイレクトトレードの仕組みとは

 ダイレクトトレードとは、仲介業者を挟まずに生産者から直接買い付ける仕組みです。中間コストが減る分、生産者の利益が増えるため、生産者支援の観点から注目されています。フェアトレードとの違いは、バイヤーが高品質な商品を低価格で入手できる点です。
 しかし、仲介業者を通さないため、バイヤー自身が農園に訪れて生産者と交渉するコストがあり、ダイレクトトレードを行っているのはブルーボトルコーヒーなどの一部のコーヒーブランドのみでした。

オンラインプラットフォームの登場

 そのような中、ダイレクトトレードの仕組みを使って、生産者・ロースター・消費者の3者を繋げる、オンラインプラットフォームが登場しました。

企業概要

企業名   TYPICA B.V. (オランダ)/ TYPICA株式会社(日本)
設立年    2019年11月1日
所在地   Liendenhof, 1108 HS Amsterdam, Nederland
      大阪市中央区南船場4丁目12-8 関西心斎橋ビル7

 TYPICAはコーヒー生産者とロースター間のコーヒー生豆のダイレクトトレードを可能にしたオンラインプラットフォームです。このプラットフォームの誕生により、バイヤーはプラットフォームを通じて、農園にいくことなく、直接生産者から生豆を購入することができます。
 TYPICAはプラットフォームを通じて、1つのコンテナを、複数のロースターがシェアすることで、従来18tでの取引が基本とされていたコーヒー生豆の輸入を麻袋一袋単位60kgから可能にし、小規模生産者でも輸出業者を介することなくコーヒーを簡単に輸出できる仕組みを実現したのです。

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(出所:グアテマラコーヒー協会「コーヒー栽培のバリューチェーン 強化の重要性」https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzl3d-att/20200220_data06_jp.pdf
LIGHT UP COFFEE MAGAZINE vol.7
https://lightupcoffee.com/magazine/6086/

 このプラットフォームを使うと、どんなことができるのか?それぞれの立場で考えてみます。

1)生産者
・生産者は市場価格に左右されることなく金額を決めることができる。
・仲介業者を通さずに輸出できるため、利益を十分に確保することができる。
2)ロースター
・従来、ロースターは今まで商社や卸売業者りからコーヒーの生豆を購入していたが、プラットフォーム上で直接購入できる。
・プラットフォームを利用するため、生産地に行かずに生産者と直接繋がることができる。
・多種多様なコーヒー豆を消費者に届けることができる。
・農園や生産者、流通経路が明確になっているコーヒー生豆を購入することができる。(トレーサビリティの担保)
3)消費者
・ロースターがの提供する多種多様なコーヒーを楽しめる。
・今まで知り得なかったコーヒー生産者情報や農園情報などをロースターから知ることができ、自分の味わっているコーヒーの背景に思いを馳せることがきる。

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https://typica.jp/about/より)
 このようにこのオンラインプラットフォームを利用することで、生産者・ロースター・消費者の3者が繋がることができるのです。

 TYPICAは2021年4月6日にローンチされた新しいサービスですが、プレローンチ期間に全国で500店舗以上のロースターが参加するなど注目を集めています。今後、より多くのロースターがこのプラットフォームに参加することでダイレクトトレードのコーヒーが気軽に飲めるようになるのではないでしょうか。

【独自予想】今後のダイレクトトレードの展開

 今後、コーヒーのように小規模農家の支援が必要で、加工工程が多く、仲介業者が多い流通システムを持つ商品は、今後ダイレクトトレードの仕組みに乗って消費者に渡りやすくなることは考えられます。例えば、チョコレートやワイン、ココナッツオイル、オリーブオイルなどが同様の仕組みに乗る可能性があると思います。

さいごに

 今回はコーヒー農家が抱える課題、そしてその課題を解決しうる、ダイレクトトレードの仕組みをご紹介してきました。今後もダイレクトトレード商品がどんどん増えてくると思うので是非チェックしてみてくださいね。皆さんのご参考になれば幸いです。
 今後も皆さんのビジネスのヒントになるような記事を書いていきたいと思っています。それではまた次回お会いしましょう。

出所
1.ワールドコーヒーリサーチの2017年次報告
https://worldcoffeeresearch.org/media/documents/Annual_Report_2017_Japanese.pdf
2.グアテマラコーヒー協会「コーヒー栽培のバリューチェーン 強化の重要性」 コーヒー栽培のバリューチェーン強化の重要性について
https://www.jica.go.jp/activities/issues/agricul/jipfa/ku57pq00002kzl3d-att/20200220_data06_jp.pdf)
3.LIGHT UP COFFEE 記事ページ(https://lightupcoffee.com/magazine/6086/
4. Crunchbase TYPICAページ(https://www.crunchbase.com/organization/typica
5.PR TIMES  (https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000002.000069170.html
6.Starbucks Webページ(https://www.starbucks.co.jp/socialimpact/glocallyresponsible/ethicalsourcing/#ethicallysourced

トップ画像出所:https://publicdomainq.net/coffee-beans-0001144/



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