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回復の二重生活

こんばんは、SCAメンバーのゆうきです。
11月も中旬になり、すっかり寒くなりましたね。

今日は「回復の二重生活」というテーマで記事を書きたいと思います。
どうぞ気軽に覗いてみてください。


「理想の回復者」を演じること

12ステップメンバーとして活動していると、ついつい「理想の回復者」を演じてしまうことがあります。
誰かに回復のメッセージを運ぶとき。その相手にとって、輝かしい回復者でいなければ、と自分の回復を理想化してしまうのです。

もちろん、病んだ人たちや絶望的な状況に置かれた人たちにとって、「絶望的な状況から回復した人」という生き証人は希望となります。

しかし、それは本来、ハイヤーパワーの恵みを受けているのであれば、自然と滲み出てくるオーラのようなものであり、わざわざ自分で取り繕う必要のないものです。

では、回復者としてのオーラを取り繕うと、つまり「理想の回復者」を演じ続けると、どんな問題が発生するでしょうか。
僕自身の失敗談も交えて、解説していきます。


回復の理想化と「脱価値化」

最大の問題は、回復を理想化することにより「脱価値化」が生じることです。
簡単にいうと、「完璧に回復できていない自分には価値がない」と思い込んでしまうことです。

例えば、「回復=完璧でクリーンな状態になること」という誤った方程式が頭の中にある場合、「完璧ではない自分」を感じるたびに、「自分はダメダメだ。全然回復してないじゃないか」と自分を責めてしまうことになります。

正直に言って、回復のプロセスというのは、とても綺麗な言葉だけでは言い表せないほどに生々しいものです。

自分が進行性の治らない病気にかかっていて、そのために生涯をかけて「回復のプログラム」に取り組み続けなければならない、という事実を知って喜ぶ人がいるでしょうか。

・・・だとしたら、あなたは霊的な体験をすることによってしか、克服できない病気にかかっていることになる。

A.A., p.65

正直、僕がこの真実を知った時(当時24歳)は、大変ショックで、受け入れ難いものでした。

「回復できるのはありがたいけれど、そのために、霊的な生き方をむこう50年以上も続けていかなければならないなんて、そんなこと出来るはずがない…」

「僕はまだまだ若くて、身体も悪くないし、人生これからなんだ。まさか自分が進行性の不治の病にかかっていて、しかも“神の力”に頼らなければ生きていけないなんて、そんなことあるはずがない!」

そんな否認や葛藤の狭間でもがき苦しみながら、それでも暗闇を照らし続ける作業は、とても痛々しく恐ろしいものです。

にも関わらず、その苦しみや葛藤をひた隠しにして、「完璧な回復者」を演じ続けていると、「本当の自分」は奥へ奥へと押しやられてしまい、遅かれ早かれアディクションが再発することになりかねません。

From Wikipedia, "Strange Case of Dr Jekyll and Mr Hyde"

「回復者としての理想の自分」と、実際にプログラムで経験した「じんわりとした回復の実感」は、それほどまでにかけ離れたものでした。
包み隠さずに言うならば、僕にとっての回復の道のりは「失敗だらけ」でした。
もちろん、今だってその途中です。

そして、この理想化と脱価値化の負のサイクルから抜け出すいちばんの方法は、霊的な完成をではなく、霊的な成長を求めることです。(BB p.87)


与えられた役割とハイヤーパワーへの信頼

僕の短い経験によると、「理想の回復者」を演じているうちは、まだ本当の意味で、ハイヤーパワーのことを信じることができていない状態だと思うのです。

僕たちは自分が思っている以上に、ちっぽけな存在です。

かつては僕も、「自分は特別なんだ。他の人にはできない何か素晴らしいことが成し遂げられるんだ」と信じて疑いませんでした。
しかし、今は「神様に与えられた役割を行えますように」と、意識的に思い直すようにしています。(もちろん、厨二病的妄想は今でも頭をよぎります)

「カリスマ」への憧れと現実のギャップ

12ステップメンバーは、皆無名で活動していますが、中には「カリスマ」的なメンバーがいるのも事実です。

その人たちは、他のメンバーや一般人では到底集めきれないほどの、アディクションやプログラムに関する膨大な知識やデータを持っており、またそれを発信する能力にも長けた人たちです。
しかも、その人たちはプログラムに取り組み続けた結果としてソブラエティ」も手にしています。

「カリスマ性」と「ソブラエティ」。

この2つを兼ね備えたメンバーは、僕にとってまさに「憧れ(ヒーロー)」でした。

しかし、その人たちは決して努力だけで回復を手に入れたわけではないはずです。
もちろん、彼らが寝る間も惜しんで他の人たちを手助けし続けていることは紛れもない事実ですが、結局のところ、彼らが回復したのは「神の力」によるものです。

ここを勘違いしてしまうと、大変なことになります。


僕は以前、彼らのような「カリスマ」に憧れて、12ステップ界のカリスマ」になろうと心に決めたことがありました。
しかし、それは同時に、「回復の二重生活」の始まりでもありました。

結局のところ、彼らはたまたま神様に、その役割や能力を与えられた人たちです。

AAの共同創始者である「ビル・W」や「ドクター・ボブ」でさえも、たまたまAAの共同創始者という役割と、それを遂行するための能力や情報を神様から与えられたのであり、全員がビルやボブのような有名人になれるわけではありません。
僕たちが見習うべきは、それは彼らが「神様から与えられた役割を果たした」ということではないでしょうか。

だから、僕たちも自分がハイヤーパワーに与えられた導きに従い、それをただ実行すればいいはずなのです(それがどんなに些細で、自分の「憧れ」とは程遠い導きだとしても…)。

与えられた役割を果たす

僕たちは12ステップに取り組んだ結果として、「カリスマ」になる必要も、特殊な能力や話術を習得する必要もありません

もちろん、それが必要であれば、神様は私たちに特別な能力を与えてくれるかもしれませんが、あくまでもそれは「役割を果たす」という目的のために与えられた「手段」にすぎません。

僕たちは、これを肝に銘じておく必要があると思うのです。


まとめ

回復を理想化すると「脱価値化」が生じる
「完璧な回復者」を目指す必要はなく、「霊的な成長を求める」ことが重要。
失敗や葛藤も回復の一部
回復のプロセスは決して完璧ではなく、むしろ失敗や葛藤から多くを学べる。
ハイヤーパワーに与えられた役割を全うする
特別な能力やカリスマ性は不要。自分に与えられた役割を果たすことで十分。

最後まで読んでいただき、ありがとうございました。

ゆうき