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きむらゆういち先生×杉上アナ対談ー『心をはぐくむ読み聞かせ』
日本テレビアナウンサー・杉上佐智枝さんの初著書『絵本専門士アナウンサーが教える 心をはぐくむ読み聞かせ』、好評発売中です!
絵本専門士養成講座の第8期の募集が始まりましたね。毎年倍率が上がっている・・・という噂も聞きます。
そんな人気資格を約3年前に取得した杉上さん(4期生)。
資格取得後は、外部の読み聞かせイベントに出演したり、社内で絵本を使った研修を取り入れたりと、活動の幅を広げることができたと語っていました。
『心をはぐくむ読み聞かせ』には、活動のひとつで出会った、きむらゆういち先生との対談が収載されていますよ(^^)
絵本作家の絵本の読み方 対談 きむらゆういち×杉上佐智枝
『あらしのよるに』「あかちゃんのあそびえほんシリーズ」でおなじみの、きむら先生が作家目線で読み聞かせのコツを教えてくれました。
さらに「赤ちゃんに読み聞かせしても意味あるのかな?」という疑問にも、ずばりおこたえいただいています!
乳児と幼児では絵本のとらえ方が変わること、絵本に動物のキャラクターが多い理由、コロナ禍で感じた絵本の存在など、「なるほど!」という知識や「へ〜!」となる体験談が満載です。
おふたりのお話はとても盛り上がって、対談時間はたっぷり2時間以上でした! 対談が終わったのに、編集担当の私も加わっておしゃべりを続けてしまったほどです(笑)
そこで今回は、対談の内容を少しお届けします!
本には約20ページにわたって対談の模様が載っていますので、ぜひ読んでみてください! 電子版もありますよ〜。
作者だからできる読み聞かせ
杉上:私は先生と、学研プラスさんの読み聞かせ会でご一緒して、先生の生声の読み聞かせを体験せていただきました。やっぱり、いちばん印象的だったのは『あいたくなっちまったよ』ですね。わりと小さいお子さんが、しーんとなって聞くっていう、先生の読み方にすごく感動がありました。先生はどういうお気持ちで、読み聞かせというものに向かわれていますか?
きむら:じつは、ここに来る途中で事故があって……。
杉上:あらっ!
きむら:車が3台ぶつかってて……、っていうのは嘘ですが。
杉上:え!? 先生、なんの嘘ですか!
きむら:フフフ。今のは嘘ですが、実際に見てきたことを、今ここで話したら、思わず聞き入りますよね。読み聞かせは、そういうふうにできたらいいなと。なんの力も入れずに、まるで見たかのように話せれば、誰だって「えっ、それで大丈夫だったの? けが人いなかった?」って思うようになるじゃん。
杉上:うんうん。
きむら:っていうことは、絵本を描いた人は、頭の中でその場面をすでに描いているわけですから、すごい自然に伝えられるかなぁと。初めてその本を読む人は、まず字を読むわけですよ。だけど、作者は字の向こうにある映像を先につくってるから、そういう意味では作者が読み聞かせをする強みっていうのは、見てきたかのようにしゃべれるというところかなと思ってます。
杉上:私たちのアナウンサーの仕事ともすごく通じます。ニュース原稿もただ読むだけだと伝わらない。ちゃんと内容を理解して、頭の中にイメージを浮かべて、それで初めて伝わるんだ、っていう指導をずっと新人アナウンサーにしています。読み聞かせも少し似たところがあるのかなと。いかに頭の中で、映像で世界を描けているかで、伝わり方が変わる。
きむら:そうですね。
杉上:先生は読まれるときに、ここで間をどうしようとか、ここはこういう声で読もうとか、そういった技術的な戦略は練らないんですか?
きむら:じつをいうと、読み聞かせが嫌いで。
杉上:えっ!?
きむら:苦手で、講演会でも絶対読まなかったんですね。なんでかというと、全部知ってるので、このあとにもっとおもしろい場面があるんだよな、とかいっぱい考えちゃうんですよ。そうすると、はやくその場面を読みたいなと思って、飛ばしたいなってとこは、速くなっちゃうし(笑)。聞く人の、じゃなく、こっち(読み手)の都合で読んじゃう。
杉上:なるほど。
きむら:見せたいところとかそういう、こっちの気持ちを優先で読んじゃうと、うまく読めない。なので、苦手だったんですが、たまたま、音楽家の人がうちのスタッフになったんですよ。で、壇上にピアノがあるとBGMで弾いてくれて。
杉上:音楽つきだと気持ちがのりますよね。
きむら:ね、のりますよね。それから、できるようになったんです、読み聞かせが。
赤ちゃんは絵本と対面している
杉上:「赤ちゃんに読み聞かせしたって、わからないじゃん」って考える方もいると思うんですけど。実際に読み聞かせてみて、先生のお感じになったことってありますか?
きむら:そうですね。子どもに絵本を与えるいちばんのよさは、その物語を読むと、子どもが主人公の気持ちになれること。カーチェイスしてドキドキするのは、やっぱり主人公の気持ちになってるわけですから。そうすると、主人公がかわいそうなクマだったら、自分がクマになったような気持ちになるわけで。それが絵本の素晴らしさで、10冊読めば10人の主人公の気持ちになってる。主人公がいじめられたら、「いじめられるってすごい嫌だな」って思ってくれるわけだし。ところが、あるとき気がついたんです。「あかちゃんのあそびえほん」は、そうならないから売れたんだって。
杉上:赤ちゃんは、その主人公の気持ちにならない?
きむら:主人公の気持ちになるっていうのは、人間の成長の段階で高度なんですよね。だって自分じゃない、向こうにいるその人になるんですよ。
杉上:たしかに、そうですね。
きむら:「あかちゃんのあそびえほん」を出して何年か後に、NHKの「いないいないばあっ!」っていう番組のブレーンをして、そこで「むしむしくん」っていうキャラクターをつくった。むしむしくんは、テレビの前の相手に話しかけるんですよ。向こうからやってきて「よっ! 今日なに食べた?」って。子どもがなんて答えても「え、美味しかった? そっか、ぼくはチャーハン。美味しかったよ」とかいうふうに会話して、「じゃあね」っていなくなる。そのむしむしくんが、意地悪するんですよ。「これあげようか? やーめた」とかやると、うちの息子は本当に怒ってティッシュの箱を投げつけるんです、テレビに。
杉上:かわいい(笑)。
きむら:そこでハッと気づいたんです。赤ちゃん絵本って、それと同じ原理なんだって。つまり、対面絵本なの。主人公の気持ちになるんじゃなくて、自分は自分。本と対面しているんですね。
杉上:相手なんですね。
きむら:お母さんが自分に「いないいないばぁ」をするのと、絵本のコロ(犬のキャラクター)が自分に「いないいないばぁ」をするのは、同じ対面。
杉上:なるほど。
きむら:自分でも気づかないうちに、そういうのをつくってて、アンケートを見ると生後4か月からこの絵本に反応したと。それはきっと対面だから、お母さんに近いものがあったのかな。
杉上:そうか、全然ベクトルの違うものなんですね。本に自分を投影する幼児以上と、友だちに会ったみたいに思う赤ちゃんと。
きむら:そうですね。
続きはぜひ本で! Amazon等でレビューも投稿していただけるとうれしいです!
編集:市村