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社長のひとりごと(31)
『環境整備の実際について』
これまでもこのコラムでは環境整備については何度も触れてきました。
環境整備の考え方は、自己啓発書の元祖とも言われているジェームズ・アレンの「原因と結果の法則」に通ずるところがあります。
環境を正しく維持する習慣を持ち続けることで、正しくない状態に違和感を覚えられるようになる。
形から入って心に至る。
つまりは、座学ではなくて「気づきの感性」を育むための具体的な行動実践をするのが環境整備なのです。
これまであまり触れてきませんでしたが、ではどのように具体的に実践していくかというのが今回のお話となります。
まずは、一番肝心な「整理」から。
整理とは「要らないものを捨て去る」ということ。会社での不要物とは、一年間誰も使用していないもの。
目に見える範囲の大きなものから、机の中のボールペンに至るまで、とにかく使用していないものは全てゴミです。今後再び使用することはまずありません。
要るものだけを残したら、あとは「整頓」。物の置き場所を決めるわけですが、せっかく物を動かせる状態ですから、その前に全ての場所を磨きます。
磨くルールは、「上から下へ」。
考えたら当たり前なのですが、床を磨いた後に天井やら書棚の上やらを拭くと、せっかくピカピカにした床がまた汚れます。
汚れは上から下に落ちて溜まりますから、磨くのは上からの方が効率がいいのです。
そして、埃は水拭きはしないこと。これも考えたらすぐに分かりますが、濡れた雑巾だとくっついてしまいますからね。かえって埃が取り除きにくくなります。
掃除機や乾いた雑巾で埃を拭き取った後に、いよいよ磨いていきます。
何よりも時間をかけなければいけないのが、一番汚れているであろうトイレです。
トイレの担当者は、皆が仲良く床を磨いている間も、ひとりで便器に向き合うこととなりますが、その分、集中もできますし、徹底して磨くことはつまりは妥協せずに自分自身と向き合うことにも通じます。
トイレの場合だと、1つの便器を磨いて汚れを全て取り除くのに一日がかりとなることもあります。
「激落ちくん」のような摩擦力のあるメラニンスポンジなどと洗剤を組み合わせて使用して、
天井・電灯の周りから壁、書棚の上、床、目に見える箇所全てを磨いていきます。
その都度集中して磨く範囲は、あくまでも「A3サイズ」で。
気づきは、物事の比較から生じます。
ですから、磨いたところと磨いていないところの比較を、常に目に見える形で進めていきます。
床磨きは、皆で列を作って、片方の壁からもう一方の壁に向かって引いていくようにバックして進めていくと拭いたところの上に立たずに済みます。
また、並んで拭くことで会話もできますし、皆で同じ目的に向かって行動をするというのは、一体感を得られます。
磨き終わったら、ワックス。当社では必ず2回以上塗ります。ワックスは重ねれば重ねるほど、信じられないほどピカピカになっていきます。
業務用の送風機があれば、早くワックスを乾かすことができますから最高ですね。
乾いたら、ようやく整頓。事務所のレイアウトを今までよりも更に良いものに変えていきます。
理想は、壁をつくらないこと。オープンスペースにすること。
上下分けられるような棚は、全て下に降ろす。
玄関を入ったら、事務所内の全てが見えるようにする。
各部門の机の島と島の間にも書棚などで高い壁は作らないこと。
パーテーションや書棚で作る壁は、外部に向けても内部においても実際の関係性の壁にもなってしまいます。
実践を通して、手っ取り早く、結果と過程の両方に手応えを確実に感じられるのが環境整備であり、それをやり続けることが仕事やサービスにこだわる「質」につながっていくのだと信じています。
自分たちが働きかけた分だけ反応してくれるのが、環境です。
「環境は心のあらわれ」、私たちの姿勢を表しています。