社長のひとりごと(42)
同じ会社に25年も勤めていますと、長く一緒にいた仲間との別れも何度か経験しています。不思議と、道半ばで亡くなられた仲間については、今でもよく胸の内で語りかけたりすることがありますが、同じ別れでも退職した人に対して同じように思うことはまずありません。
上司もよく言っていましたが、これまでの道のりで振り返ってみて「あいつがいてくれて良かった」と思うことがあっても、これからの道のりを見据えた時に、会社を去っていかれた人について「今あいつがいてくれたらな」と思うことはない、ということです。
今いるメンバーがこれから先に進むにあたって必要なメンバーであり、過去にすがる必要はないのですよね。
自分のことではありませんが、管理者や所長やサービス提供責任者などの引継ぎでよくあるのが、前任者からの受け売りをそのまま呑んで運営してしまっている後任者。
マニュアル的な内容については、しっかりと引き継ぐ必要はありますが、そもそもマニュアル的な内容であれば、残っている社内の人間からでも引継ぎは可能です。
また、前任者が部下たちからみても総じて上手い人間関係を構築されていて、何らかの理由で他の部署に配置転換で異動されるとしたら、この人からの部下たちひとりひとりへ向き合うためのアドバイスはひょっとしたら有用かもしれません。そんな中で一番不要なのは、辞めていく前任者が作ったルールや文化の承継です。
組織全体としての文化や規律ではなく、前任者が取り決めたものなのであれば、それをわざわざ引き継ぐ必要はありません。
生真面目に引き継いだ結果、本人も部下たちも素直に実行すれども何のためにそれをやっているのか分からない、なんて業務は探せば結構あるはずです。今、これから先を見据えた時に、自分に、それから一緒に働く人に必要な業務は何なのか。それらを決めていくのは組織から去っていく人ではなく、新たに引き継いでいく自分自身です。
立ち去る前任者からの個人が定めたルールの押しつけは、無意味な「呪縛」でしかありません。
呪いはお祓いするのが一番。その人がいなくなったと同時に無意味なルールは全撤廃することをおすすめします。