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喜んでもらえるということ
最近、少しずつだけれど自分の時間を自分なりにコントロールできるようになってきた気がする。笠置に移住して、まず時間の流れ方の違いに戸惑った。いわゆる田舎暮らしのステレオタイプなイメージは”スローライフのようなのんびりとした暮らし”だと思うけれど、僕の場合は全く違ったのだ。
毎日が目まぐるしく過ぎていく。どんどん過ぎていく。
気づけば一週間、二週間と、時間の流れについていけていなかったように思う。当然、はじめてのことだらけだからこその感覚ではあるとは思うのだけれど、それでも自分の”やりたいこと”や”やらなければいけないこと”との間でぐるぐるぐるぐると回っていた。
それでも、楽しみながら毎日を精一杯生きている自負はある。それは自分がこの町で写真家として生きていることに深く生きがいを感じているからだ。どこかで書いたかもしれないけれど、
僕にとって写真家とは職業ではなく、生き方そのものなのだ。
僕は写真歴が非常に短い。知識も経験もまだまだで、毎日が新しいことの連続。常に色々なものに感化されて、たくさんのものに感動しながら、自分の表現を模索している。写真をはじめて一年未満のやつが何言ってるんだと思われるかもしれないけれど、いまの僕は「写真家です」と堂々と名乗ることができる。
撮りたいものがあり、撮りたいテーマがある。上手い写真ではなく”いい写真”を撮り続けたい。なにかを五感で感じるような写真。その人がそこにいるような写真。そして、その人自身が自分のことを好きになれるような写真。それを追求し続けていきたい。
嘘偽りなく、僕の生き方は”写真家”だ。
さあ。やっと本題に入るけれど、笠置町に移住して最初に撮った町民である御年百歳の中西さんにプリントした写真を渡すことができた(もちろん家族や知り合いの方は撮っていたけれど、はじめましてで撮ったのは一人目)僕にとっても非常に思い入れのある写真だっただけに、ご本人に渡すのがとても楽しみな一枚だったのだ。
「こんにちは、この間のお写真お持ちしました」
ワクワクする気持ちを抑えながら、そっと手渡した。喜んで受け取ってもらえたことは表情でわかった。小さく微笑みながらしばらくの間、写真をじっと見つめていた。邪魔をしないようにそっとシャッターを切っていると、小さな声でぼそりと呟いた。
「これが遺影やなーー」
その表情を見れば冗談などでは決してないことがわかる。感慨深いのと同時に、写真をはじめてから一番嬉しい瞬間だった。僕は写真家としてこの町になにができるのか、誰かのためになっているのかーーと日々悩んでいるけれど、そんな悩みが吹き飛んだような気持ちになった。
撮らせていただいた方が喜んでくれる。こんなに嬉しいことはない。いい写真に正解はないんだ。だからこそ、写真への探求に終わりはないんだと思う。
これでいいんだ。
シバタタツヤ
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