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新刊 米光一成・著『思考ツールとしてのタロット』
『思考ツールとしてのタロット』(銀河企画)は、タロットカードを通じて思考の新たな扉を開く指南書です。ゲーム作家として有名な著者の米光一成(よねみつ かずなり) 氏は、単なる占いの道具としてではなく、思考を広げるためのツールとして、タロットの役割を再構築しています。
本書は、過去に著者自身がおこなった講演に準拠して、初心者でも理解しやすいように構成されており、カードの象徴や歴史を詳細に解説しつつ、それを現代の生活にどう活用できるかを丁寧に教えてくれます。
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特に魅力的なのは、タロットカードの持つ象徴を通して、自己理解を深めるプロセスが明示されている点です。各カードの意味や象徴についての解説はもちろんのこと、カードを使った具体的な思考ツールとしての活用方法が実践的に示されています。
本書の中で解説しているカードから、例えば『愚者 (The Fool)』を説明しましょう。キーワード:冒険、自由、無軌道。象徴:愚者は、冒険と自由の象徴です。若者が空を見上げて進んでいる姿は、無限の可能性と未知への挑戦を表しています。
『愚者』のカードの場合は、次のように多角的な解説がされています。まず、愚者のキーワードである「冒険」「自由」「無軌道」をもとに、その象徴的な意味を掘り下げます。愚者は、新たな旅に出る若者の姿で描かれており、持ち物は最小限で軽やかに進む様子が示されています。これは、未来への無限の可能性を象徴し、決まりきった道から外れ、自由な発想で物事に取り組む姿勢を示しています。
『愚者』のカードは、様々なタロットデッキで描かれ方が異なりますが、米光氏は1909年のウェイト・スミス版の愚者に注目しています。この版では、愚者は断崖の上を歩いており、その足元には警告するかのように吠える犬が描かれています。愚者は危険を顧みず、冒険心に満ちて進む姿を象徴します。この若者の姿は、希望に満ちた未来を感じさせると同時に、無謀さや無計画も示唆します。
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また、『愚者』のカードの歴史的な変遷にも触れています。例えば、1450年頃のヴィスコンティ・スフォルツァ版では、『愚者』は放蕩息子のように描かれ、下着姿のおっちゃんという、かなり異なるイメージです。これにより、『愚者』が持つ象徴の幅広さと、時代や文化によって解釈が異なることが分かります。
更に、カードが示す象徴を日常生活にどう活用できるかも詳細に解説しています。例えば、『愚者』のカードであれば、新しいプロジェクトに取り組む際の心構えとして、既存の枠にとらわれず自由な発想で挑戦することの重要性を説いています。また、『愚者』のカードを思考ツールとして使うことで、固定観念にとらわれず、クリエイティブな解決策を見つける手助けとなることを示しています。
本書では、タロットカードを用いた「コレポン (コレスポンデンス)」の効果についても詳述されています。コレポンとは、無関係と思われる事象の間に共通点を見つけ、関連付ける技法です。この技法を通じて、タロットカードの象徴を日常生活や思考に結びつけることができます。
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例えば、『愚者』のカードを見て、現在の自分の状況や心境を考えることができます。愚者の「冒険」「自由」「無軌道」という象徴を、自分の新しい挑戦や自由な発想に当てはめることで、日常の中に隠れている新たな可能性や解決策を見出すことができます。コレポンを活用することで、物事の関連性を再発見し、より深い洞察を得ることができるのです。
挿絵には、米光一成氏のチームが特別にデザインしたタロットカードが登場します。伝統的なウェイト・スミス版をベースにしつつも、独自のデザイン要素を取り入れています。特に、漢字を大胆に用いた直観的で分かりやすいイメージが特徴で、これによりカードの意味を視覚的に捉えやすくしています。
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米光一成氏の文体は、軽妙で読みやすく、時にユーモアを交えながらも本質を突く内容で、読者を飽きさせません。また、豊富な図版やイラストも理解を助け、視覚的にも楽しめる一冊となっています。
タロットに興味を持つ人と、クリエイティブな発想法を求める人の双方にとって、本書は必携のバイブルと言えます。単なる占いの枠を超えて、思考を広げ、新たな視点を得るための道具として、タロットの魅力を存分に味わえることでしょう。
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目次
はじめに
第一部・基礎編
第1章 師をつくる
1-1 タロットの構成
1-2 混沌の世界へもどる
1-3 欠落が起こる
1-4 他者と出会う
1-5 偶然の出会いを必然に
第2章 カードの象徴を知る
2-00 愚者
2-a * コレポンとは?
2-b * カードをシーズンに分ける(シーズン1)
2-01 I 魔術師
2-c * タロットの歴史
2-02 II 女教皇
2-03 III 女帝
2-04 IV 皇帝
2-05 V 教皇
2-06 VI 恋人
2-07 VII 戦車
2-08 VIII 力
2-09 IX 隠者
2-10 X 運命の輪
2-d * 螺旋の二周目(シーズン2)
2-11 XI 正義
2-12 XII 吊された男
2-13 XIII 死神
2-14 XIV 節制
2-15 XV 悪魔
2-16 XVI 塔
2-17 XVII 星
2-18 XVIII 月
2-19 XIX 太陽
2-20 XX 審判
2-21 XXI 世界
第3章 22 の視点を得る
3-1 日常生活でコレポンする
3-2 師匠との関係を深める
第二部・実践編
第4章 人を占う・思考ツールの意味
4-1 相談は失敗する
4-2 なぜ相談は失敗するか
4-3 主語を置き換える
4-4 世界体系×ランダム
4-5 人を占う方法
4-6 思い当たり例
第5章 思考ツールとしてタロットを活用する
おわりに
参考文献
書誌情報
遊びのアイデア選書 <14>
思考ツールとしてのタロット
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2024年8月11日 初版発行
著者:米光一成
企画:太田ユリ
イラスト:
(カバー)米光ゲーム
(挿絵)岡本麻梨絵
(タロット)米光 -N
テキスト化:与儀明子
シリーズ構成:柴崎銀河
装丁:双星たかはる
出版社:銀河企画
Code: ISBN 978-4-909793-15-7 C0376
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