講演会要旨①「頑張れ助産院 自然なお産をとり戻せ」(2023.02.18開催)
SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ83号(2023.02.25)の配信内容です。
講演会「頑張れ助産院 自然のお産をとり戻せ」
日時:2023年2月18日(土) 14:00~17:30
会場:名古屋駅前 安保ホールで開催(オンライン配信あり)
講演を終えて
名古屋のSBSK講演会「頑張れ助産院 自然なお産をとり戻せ」にご参加頂きありがとうございました。
皆さんと講師のおかげで熱い講演会となりましたことを、心よりお礼申し上げます。
演者6名、指定発言3名の構成でテンポよく進行しましたので、3時間半が非常に短く感じられるコンパクトで濃密な講演会でした。
さて本メルマガでは今回の講演内容を複数回に分けてお伝えします。
内容は第一部と第二部の2部構成としました。今回は第一部の講演要旨をお伝えします。
第一部 旭川調停を応援するワケ
旭川の問題は全国の問題であり、日本の将来の問題であることを念頭に構成しました。
演者は市川きみえさん、旭川の北田恵美助産師、井上清成弁護士です。
1-1「助産所の未来に光を!」
講師:市川きみえ(清泉女学院大学准教授、助産師)
かつて旭川で助産所を開業した経験のある、清泉女学院大学准教授の市川きみえさんによる「助産所の未来に光を!」で始まりました。
市川さんはプライベート出産についての研究もあり、トップバッターとして相応しい内容でした。
助産所分娩が減った理由は、2005年の厚労省通知による嘱託医療機関の義務付け、日本助産師会によるガイドラインの厳格化とのことです。
この結果、分娩を扱う助産所は減少し、北海道では札幌だけとなりました。助産所は全国で減少していますが、特に近年では関東・関西の都市圏での減少が顕著とのことでした。一部長野県や滋賀県、中部4県では若干の増加が見られていますが、全体に減少傾向は著しく、それだけに北海道も全国もプライベート出産が増えていることをデータで示しました。
最後に産み場所や出産方法の選択の危機を訴えました。
1-2「助産師として未来に何を残すか、助産院のお産を取り戻すために」
講師:北田恵美(助産院あゆる院長・旭川調停申込人の一人)
次に旭川の「助産院あゆる」の院長で、旭川調停申込人の一人である北田恵美さんが「助産師として未来に何を残すか、助産院のお産を取り戻すために」と題して登壇しました。
北海道は14の医療圏に分かれており、旭川のある上川医療圏は東京23区の広さがあるそうです(余談ですが私のいる飛騨高山の医療圏も同じ広さですが、人口はずっと少ない)。今は分娩を扱う助産院が札幌の5件だけになってしまいましたが、かつて助産院あゆるには、網走、留萌、稚内、えりも岬近くの浦川などの圏外からも分娩に来てくれたそうです。
今回の閉院問題は、かつて務めていた嘱託医療機関の院長の病気・死亡に端を発します。隣町の病院の産婦人科医に嘱託医療機関を依頼し、病院の了解も得て安堵したところに、旭川医科大学の加藤教授からストップがかかったとのこと。
「もし受けるならその病院からの患者は受けない」という恫喝に近い内容のため、「現地の病院としては抗えない」として断りの連絡があったとのことです(事実ならこれは3次救急病院の指定要件に関わる違反です)。
結果、地元の産婦人科医会会長からも「協力する医師はいない」と拒否されました。
そこで北田さんたちは、地元の人たちの署名を集め、北海道助産師会とともに、旭川市をはじめ、旭川医科大学や、旭川厚生病院、市立病院などにお願いに行ったそうです。がどこもまともに取り合ってくれないため、最終的に旭川医大の加藤産婦人科教授、地元産婦人科医会の光部会長、旭川市役所の中村副市長を相手方として調停を申し入れました。
しかし調停が決まると、これまで支援してくれた北海道助産師会は「調停には加わらない」と伝えられ、さらに日本助産師会からは「お産はなくとも産前産後ケアの仕事があるではないか」と調停を叱責するかのような電話がかかってきたと言います。
北田助産師は、
「一体この団体は誰のための、何のための団体なのか、ご飯が食べられればそれで良いのか、助産師がお産を通して産前産後の母子に関わっていくことの大切さをわかっていない人たちによって運営されている」
と落胆したと言います。
最後に北田さんは
「産前産後ケアをやっていて、お産が辛かったと涙を流す病院分娩の人が多いことを知っているので、今後も助産所を守りたい」
と結びました。
この迫真の訴えはあなた自身の問題でもあります。
1-3 「旭川調停の背景と今後の予想」
講師:井上清成(井上法律事務所 所長、旭川調停の申立人代理人)
次に、井上清成弁護士より「旭川調停と今後の予想」についての講演がありました。
まず井上さんは「普段は全国の大学や病院を守る立場の弁護をしているが、今話題の東大理3の学生の単位不足認定では東大も訴えているし、調停では旭川医大の教授とも議論する。このようにたまには大学を相手に仕事することもある」とジョークを交えて自己紹介しました。
そもそも、厚労省は「嘱託医療機関や嘱託医を受けたからといって、その助産所に特段の責任を負うものではない」し「緊急の場合は嘱託医を経由せず直接医療機関に搬送してもよい」と再三通知しています。よって「責任が持てない」や「嘱託医の紹介を条件とする」のは通達違反の疑いがあり、ぜひ調停で確認してみたいと話しました。
なるほど調停の意義はそこにあるのですね
このような情報を伝えるために、大学や市役所などに足を運びましたが、その過程で教授が「すべての分娩は異常であるから助産所で扱うべきではない」と言い放っていたことが分かりました。正常な妊婦を患者として対応することは、産婦に対する人権侵害と思われ、この点も調停で確認したいといいます。
また、加藤教授が学長に「嘱託医療機関を受けている大学病院などない」と言ったそうですが、現在浜松医科大学と滋賀医科大学では嘱託医療機関を受けていることが分かっています。調停応援のために、「もし他にそのような大学病院があればぜひ知らせてほしい」と結びました。
嘱託医療機関になっている大学病院や3次病院があればぜひお知らせください。
井上さんの講演は、際どい内容ながらトークショーか講談にも似たユーモアがあり、事態の深刻さと調停への期待を楽しく理解することができた人が多かったのではないかと思います。
第二部 自然なお産を応援するワケ
第二部の講演要旨は「講演会要旨②」をご覧下さい。
第二部では「自然分娩を残さないといけない理由」について医学的見地から、また「海外特にヨーロッパやWHOがこの点にどう言及しているか」など幅広い見地からアプローチしております。
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