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出産の医療保険化について ⑩

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ99号(2023.07.30)の配信内容の続きです。
↓前回の内容はこちら↓


出産の保険点数化の考え方

分娩の料金が自費から保険点数の制度に変わるということは、これまで自費扱いであった正常分娩の管理やケアを保険点数によって評価し、保険点数×10倍の金額を保険者が医療機関(助産所も含む)に支払うということである。

分娩の管理やケアに対する評価についていうと、病院分娩が増えるにつれ、例外なく助産師は主役から脇役に追いやられ低く評価されてきた。と同時に産婦自身も主役から脇役に追いやられてきた、というのが20世紀以降の世界の潮流である。
それは自力で正常分娩が可能な9割の女性や子供や家族にとって決して幸福な潮流ではなかったはずだ。

出産の保険化という激震

この潮流を変えることはもはや不可能という諦めが多くの助産所にはあったと思う。しかし、財政難と少子化対策の中での出産の保険化という激震は、助産所や助産師の役割を見直し本来のお産をとり戻すには絶好のタイミングである、ということを認識する必要があるだろう。いやむしろラストチャンスと見做すべきかもしれない。

そのために個々の助産師やその職能団体は、己の利益はさておき、数千年来の伝承者の末裔であることを自覚し、その責任において、幸せなお産をとり戻すべく評価内容を提案すべきである。

現行制度の分娩料について

ここで現行の自費制度について確認しておこう。

現行制度における分娩料とは「お産に要した料金」という意味ではなく、正常分娩の場合の料金という意味であって異常分娩の場合はこのような表現はしないことに注意が必要である。
表1に示すように現行の分娩料はあくまで正常な分娩で、保険を使わないお産にかかる料金である。その中身は医師の技術料助産・看護料からなる。ただしこれらは分娩料として一括して請求されておりその比率は分からない。自費だからこの料金に関して法的な縛りはないが、民間は業界団体の取り決めで、また自治体病院は議会においておよそ決められている。

一方、異常分娩では、医師の技術料は手術や処置に対応した保険点数で算出される。
同時に異常分娩においては正常分娩の助産・看護料に相当するものとして分娩介助料という自費料金が設定されている(保険診療必携 表1)。

表1 分娩時保険の取り扱い基準

保険扱いで医師の手技料を算定しつつ、助産師の介助料を別に自費で徴収する、という自費と保険の2本立て徴収の制度になっているのである。
これは混合診療であって他の診療科では許されない産科特有の料金体系である。つまり現状の分娩に関する料金は下記の表1-1のようになっている。

表1-1 現状の分娩に関する料金体系

しかし予定されている分娩の保険化によって、料金は保険に統一され、混合診療は解消されることになる。

新分娩時保険の取り扱い基準 (荒堀案)

「分娩介助料」から「助産介助料」へ

しかし「分娩介助料」という表現は、分娩全体に関わる漠たる料金のようで、誰が主体か不明確である。
正常産も異常産も産婦に対して助産師は大きな役割を果たすので、助産師の働きに関しては正常/異常に関わらず分娩介助料助産介助料と統一した方がすっきりするので、表2のように変更してはどうかと思う。

表2 新分娩時保険の取り扱い基準(荒堀案)

助産師介助料は助産師役割に対する対価であるが、もし助産師がいない所で産科医がお産を介助した場合も、助産師等の介助とみなせばよいと思うが、どうだろうか? (文末の質問に続く)

また医師の役割に対しても、正常産では医師の技術料としてきたが、異常産の場合の手術や処置は保険点数によって算定されており、間違いなくこれらも医師の技術料である。こうすると表2のように正常産も異常産も、分娩の料金は医師の技術料+助産介助料となり、枠組みが統一できる。

異常またはハイリスク分娩の助産介助料は正常産のそれより高く設定すべきではあるが、表1のように、現行の取り扱い基準では「分娩介助料は正常分娩の分娩料を上回らないこと」との但し書きがある。それに従って助産介助料は、上限の分娩料と同額に設定することも方法であるがどうだろうか。

「助産師直接介助料」「特定助産師継続介助加算」の提案

一方で医療保険化を機に助産師本来の仕事であるMidwife業を評価するために、つまり寄り添う女性としての役割を評価するために、助産師が医師の立ち合い無しで行った分娩に対しては助産師直接介助料なる加算を、さらに少数(1~3人)の特定の助産師がチームを組んで介助した場合は、特定助産師継続介助加算をつけることを提案したい。
これらは助産所の助産師業のみならず、病院の助産師業を評価するとともに減少する産科医の働き方対策としても有効であるので、政策的には受け入れられやすいものと考えられる。

(尤もこれ以上産科医を集められない大学や学会が、それでも医師主役の分娩管理体制を主張するなら、さらなる集約化とそれに伴う10か月産婦の集団移住しかないが、それが少子化対策や地方創生に益するとは思えず、働き方改革にもならないので、逆に研修医を遠ざける結果になろう)

帝王切開の場合も枠組みは同じであるが、保険点数や介助料が大きいので、これまで通り別に定めた。帝王切開分娩の助産介助料を、帝王切開助産介助料とした。

以上を前提に、次回分娩の保険点数案を提示しますが、私自身迷っているところがあります。皆さまの意見をいただければ参考にしますので教えて下さい。

皆さまへの質問

  1. 陣痛発来して助産所で2日間寄り添った上に病院に運んで分娩となった場合に、分娩費用はどのように設定すればよいか?

  2. 助産師なしで医師だけでお産を取り上げた場合、助産介助の費用をそのまま医師にプラスすればよいか、それとも寄り添う女性としての役割は果たせていないから減額すべきか?
    つまり助産師がチーム内にいるお産といないお産で、料金に差をつけるべきか?

  3. 周産期センター等におけるハイリスク分娩の助産介助料について、他に何か意見があれば・・・

ご意見等について
sbsk.momotaro@gmail.com (SBSK事務局)


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