ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス 8
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今回は、メルマガ41号(2022.02.21)の配信内容です。
今回も微生物叢に関する話題です。
前回の内容は下記をご覧ください。
セクション1 姙娠と胎児の生命
Chap1 妊娠中の微生物叢の変化
7)妊娠中の健康な微生物叢に対する食事療法の潜在的な影響
微生物叢の組成に影響を及ぼす環境のうち、食事は最も顕著な影響を及ぼす。
多くの研究は、食事の変化が微生物叢を大きく変えることを示している。例えば肉食者とベジタリアンの間には微生物組成上の違いが認められる。
また短期間の食事変化は可逆的な微生物叢の変化を引き起こし、長期的な食事の変化は恒常的な変化を引き起こす。
高脂肪食(HFD)は、低脂肪食 や普通食と比較して、ヒトやげっ歯類の微生物組成を変化させる。
一般的にHFDはバクテロイデスを犠牲にしてフィルミキュートを増加させる。これらはBMIとは無関係なので肥満とも直接関係はない。
妊娠中の高脂肪食と標準食を比較したヒトの研究では、食事の影響が生後6週の新生児でも持続していた。雌マウスが受胎前にHFDで飼育された場合でも、微生物叢の組成効果は妊娠後期まで観察された。
HFDによる妊娠微生物変化は、脂質代謝、糖代謝、および糖新生経路における遺伝子発現の違いを生じるらしい。
さらに、HFD食の微生物叢を移植されたダム(4つ足獣のメス親)の雄の子は、低脂肪食のそれに比べて探索・認知・および強迫的行動に大きな混乱を示した。特にフィルミキュートの減少は、オス動物の行動異常に関連していた。またHFDダムのメスの子は体重と脂肪の増加を示した。
妊娠中のビタミンや他の栄養補助食品の摂取も微生物叢に影響を与える可能性がある。
60人の妊婦のコホートでは、脂溶性ビタミン、特にビタミンDの高い食事摂取は、腸内微生物の多様性を低下させ、プロテオバクテリアの相対的な増加を示した。
さらに、太りすぎ妊婦における腸内微生物叢の多様性もビタミン、n-3 PUFA、および繊維の摂取で低下するので、腸透過性のマーカーである血清ゾヌリン濃度の低下と関連していた(腸の透過性が上がると病原体が血中に入りやすくなる。補助食品の摂取は腸内細菌叢の多様性を低下させるので結果として腸の透過性を下げるらしい)。
以上の結果は、妊娠中の食事バランスが微生物組成に影響を与え、母親と胎児の両方の代謝の改善につながることを示唆している。ビタミンD補充は、妊娠中の細菌性腟症や特定の膣内細菌の変化と逆相関している。
8)妊娠中の微生物の変化とホルモンの変化
ホスト(妊婦)のホルモンは腸内微生物叢と相互に関連している。
微生物はホルモンを産生し、調節し、かつ既存のホルモンレベルの影響を受ける。妊娠週数に伴いプロゲステロンおよびエストロゲンレベルが劇的に上昇するので、これらのホルモンが微生物組成に影響を及ぼすことが推定される。微生物叢は母体ホルモンレベルにリンクしている。まず、エストロゲン受容体(ER-β)が腸内微生物叢に影響を及ぼし、次に、プレボッテラ・インテルメディスを含むいくつかの微生物は、その成長のためにエストラジオールとプロゲステロンを利用する。さらに、多嚢胞性卵巣症候群などのホルモンの不均衡が明らかな疾患では、腸内細菌叢に明確な変化が見られる。
最近の研究は、プロゲステロンがビフィズス菌量の劇的な上昇を含む腸内微生物叢の変化につながることを実証している。
膣内微生物叢は、ホルモンの状態によって強く影響を受ける。
最も顕著なのは、ラットの卵巣切除で、膣内の乳酸桿菌と嫌気性菌がいなくなり、クロストリジウム・ペルフェンゲン、バクテロイデス、ブドウ球菌、および黄色ブドウ球菌が優性となり膣炎を起こしやすくなる。これらの効果は、エストラジオールの補充によって逆転した.さらに、エストロゲン(17β-エストラジオール)は、カンディダ.アルビカンスの感染効果を抑制し、それによって潜在的な感染から宿主を保護する。
ヒトとヒヒの膣内微生物叢は、生殖状態、卵巣周期および性的行動に対する反応において変化することも示された。
妊娠中の微生物叢とホルモンを結ぶメカニズムと経路は解読されている。内分泌系、免疫系、および微生物叢の調節のすべてが妊娠を通じて変化する可能性がある。
最後に, 妊娠中の口腔内微生物叢の組成と、唾液中のE2、Pレベルの関連性も明らかにされている。ホルモンレベルに正の相関が見られる菌種には、プレボテッラ属とトレポネーマ属が含まれていた。
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