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ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス3

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今回は、メルマガ32号(2021.10.24)の配信内容です。

では今回も微生物叢に関する話題をお送りします。

ヒトの細菌叢(Microbiome)とプライマル・ヘルス3

セクション1 姙娠と胎児の生命
Chap.1 妊娠中の微生物叢の変化

1 健康な微生物叢の重要性と役割

健康な状態では、私たちの身体には多種多彩な微生物の集団が棲んでいます
あるものは好気性で、あるものは嫌気性。それぞれ特有のpHや栄養環境で生息しています。
また彼らの生息状況は、宿主の免疫やホルモンの状態に大きく影響されるので、微生物叢はA君とB君とでは異なるし、腸内と膣や口腔でも異なります。
なぜかというと、腸内微生物叢は免疫、ホルモン、代謝に関して重要な役割を果たしますが、皮膚、膣、および口腔の微生物叢は外部の病原体の侵入を直接バリアーとなって防ぐため、機序が異なり微生物も異なるからです。

代謝に関して腸内微生物叢は、食物の消化、短鎖脂肪酸への炭水化物の発酵(SCFA)、タンパク質のアミノ酸への消化、ビタミンの産生、薬物および生体異物の代謝、などができます。
また脂質代謝、胆汁酸の変換、ポリフェノールの分解にも関与しています。

免疫に関しても腸内微生物叢の役割が数多く知られています。
病原体を防ぐためのバリアーの形成、免疫細胞集団のバランスの維持、炎症促進サイトカインの数の調節などです。

さらに腸内微生物叢は、宿主のホルモンレベルを調節し、脳機能と行動に影響を与えます。

宿主のホルモンは特定の細菌の増殖とその機能に影響を与えるのですが、逆に細菌は、行動、食欲、代謝、ジェンダー、免疫に影響を与えるホルモンを産生することができます。
つまりホルモンと微生物叢の間には相互作用があるわけです。

さらに腸内微生物叢は、脳の影響を受けつつ脳の発達に影響を与え、食欲、感情、ストレス応答、認知、不安や攻撃性、などの行動に影響を与えます。
その結果、腸内微生物叢は、大うつ病、統合失調症、自閉症を含む様々な精神疾患で変化することが分かっています。
腸内微生物叢は人間のいくつかの脳神経伝達物質を生成することができるからです。

微生物叢は、私たちの生涯にわたる発達の変化(幼児期から小児期、老後まで)、食事の変化環境の変化に応じて変化しますが、通常の微生物集団からの大きな逸脱(ジスバイオシス)はほとんどの場合病気と関連しています。

ジスビオシスには微生物の多様性の減少が伴い、病的状態を強め長期的な弊害をもたらします。
病的状態の例としては、肥満、炎症性腸疾患、糖尿病、およびメタボリックシンドロームがあります。
実際、ほぼ全ての疾患は、健康な微生物叢が不安定で病的な微生物叢に変化することによって生じています。
健康は私たちの微生物叢の組成と密接に絡み合っているのです。

ところで妊娠中に起こる微生物の変化のいくつかは、病的状態で見られるものに酷似しています。
しかしその変化は健康な妊婦を病気に導くのではなく、むしろより柔軟な免疫状態や必要な代謝機能を促進し、妊婦に利益をもたらします。
これは実に不思議なことです。

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