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出産の医療保険化について②

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。
今回は、メルマガ91号(2023.06.07)の配信内容です。

出産の医療保険化でお産が変わる!

前回(出産の医療保険化①)は出産費用の医療保険化の経過、そして目的は何なのか?についてお話しました。
今回は続いて「保険化の目的」についてお話します。

保険化の目的は何でしょう?

私の知る範囲では、財政難の国が歳出を抑えるために、自費診療という行政が手出しできない診療空間を閉鎖すべきと判断したためだと思います。

自費で診療するのだから国の関与は関係ない、と思う人がいるかもしれませんが、それは間違いです。
分娩費は自費であってもそれに対する行政や社会保険から一時金や祝い金など様々な形でお金が支出されています。

例えば法律上の問題で日本ではできない心臓移植手術を、お金を集めてアメリカの病院で行った、というケースでは日本の行政は全く関与せずに済みます。

しかしお産はそのようにはいきません。
深刻化する少子時代にあって、産んでもらうための負担軽減は政府の責任でもありますから、分娩が自費診療という枠で行われていても政府は様々な補助を行います。妊婦健診も産後の健診も産後ケアも、全て公的なお金が付与されています。

自費診療の額が上がれば、さらに公的支出が拡大していくことになります。
もし分娩費が青天井に上昇していったら、一体いくら補助が必要になるのか、財務省が気にしないはずがありません。

政府は防衛費を上げます。「次元の異なる少子化対策」も進めます。
が、これ以上消費税も所得税も簡単には上げられないので、歳出削減を極力進めることになります。

それは財務省の仕事です。

厚労省は権限外の自費診療費に対してものをいう立場にはありませんが、医療保険制度の枠組みになれば、管轄の保険点数で分娩費をコントロールすることができます。つまり財務省の歳出削減の意向を受けて、政治も厚労省も動きだしたということです。

ではなぜ日本産婦人科医会はこれに同調するような態度に出たのでしょうか?
分娩数が年々減って経営的に苦しくなっている施設が多い中で、本音を言えばもっと分娩費を上げたいはずです。

しかし自費診療だからと一方的に上げても自治体や社会保険などからの支給費が増えなければ、結果として産婦の自己負担額だけが増えることになります。
一方で市立や県立などの自治体病院は分娩費を上げるには議会の承認が必要ですし、日赤や済生会などの公的病院も自治体の意向を無視することはできないので、どちらも簡単に分娩費を上げることができません。すると現状では多くの産婦は自己負担の多い施設より、安くて安全の高い大きな施設に流れることになり、クリニックでの分娩が減り、逆に経営難が拡大することが容易に想像できます。

つまり産婦人科医会としては分娩一時金のような支給金を国や自治体に増やしてもらって、その分を分娩費の増額に充てて収入減を補うという方針を維持しなければなりません。それが種々の原因で維持できなくなったことが、保険化に同調的になった最大の理由だと思います。

そこで、日本助産師会と組んで、安全かつ満足度の高い分娩を目指す、という方針に転換したのかな?と思います。
↓次号に続く↓


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