見出し画像

「助産所分娩を1件でも増やすセミナー」(第9回)開催要旨

SBSK自然分娩推進協会では、代表の荒堀憲二(産婦人科医師)よりメルマガを配信しています。今回は、2024.12.11配信のメルマガ内容です。


今回の講師は弁護士と経営コンサルタントという、医療者ではないお二人からの、経営に関する講義です。


第9回セミナー(2024.12.07開催)

講演1「助産所経営について(事故・トラブル関連)」

講演「助産所経営について(事故・トラブル関連)
講師:井上清成(弁護士)

まず判例が提示されました。
事例は「妊産婦と約束した医療機関への転院・搬送の義務違反」。

助産所で健診を受け助産所での出産を予定していたけれど、妊娠高血圧のため、当初約束していた大学病院ではなく、B医院(おそらく嘱託医)を紹介された。そこで少し様子を観ようということになり同意したが、吸引分娩中に胎児心音聴取不能になり、大学病院に搬送されて帝王切開したが死産であった、という事例。

原告(被害者側)はB医院を訴えると共に、助産所に対する契約違反も訴えた。つまり、患者との契約があったにも拘らず大学病院に初めから送らなかったのは契約違反だとする訴えである。1審の地裁では過失なし2審の高裁では過失ありで、220万円の慰謝料が命じられた。

この事例について、どうして初めから大学病院に送らなかったのか?について受講生との質疑がありました。

「大学病院では帝王切開になりやすいので、慌てなくてもよいなら、信頼関係もある嘱託医に意見を聞くのは、患者さんにとっても良いと考えたのではないか?」との意見が数人から出ました。 

井上弁護士は、「高裁でひっくり返されたように、法律は一律ではなく実は裁判は水もの」であることを覚悟するようにと説明しました。

「判例を見ていると、帝王切開しなくて結果が悪いと責任が問われ、逆に帝王切開さえしていれば結果が悪くても免責される傾向にある。これは産科医の作り出したトレンドではないか」という説明もありました。

井上弁護士の見解を要約すると「モニター重視と帝王切開第一主義の機運を作ったのは、産科学会の医療安全原理主義」らしい。

それは私も、当たっている気がします。

そのあと講義は、厚労省の出産費用の保険適用(詳細は次回)に関する検討会の説明や、医療事故調査制度の話や産科医療保障制度の話に移りました。

「産科医療保障制度の問題は、産婦人科医会の原因分析委員会が独自に自己の分析を行う方式である。当事者が入るのではなく、他人が行いこれを公表しているので、裁判になった場合は、相手方の資料に使われてしまうこともある。」

なるほど、これは医療訴訟を増やし、逆に医療を委縮させる恐れがあります。

すると医療は「ともかく帝王切開をしておこう」という方向に走ります。WHOの報告か何かで読んだことがありますが、「帝王切開率が10%を超えると公衆衛生学的な問題が出る」という意見には賛成です。

一方、医療事故調査制度は、事故予防を最大の目的に方針が是正されたため、以来医療紛争は減少しています。「医療崩壊 立ち去り型サボタージュ」(小松秀樹著)は辛うじて免れているのです。


講演2「医療連携が進む背景と助産所連携の必要性 について考える」

講演「医療連携が進む背景と助産所連携の必要性 について考える
講師:荒木信生(医療コンサルタント)

病院・介護施設の経営は今大変厳しい。厚労省は医療財源医療資源もその「適正化減らすという行政用語)を目指している。
その原因の第一は人口減少であり第二は労働力の奪い合いである。
また2025年問題(日本人の5人に1人が75歳以上の後期高齢者となるため労働力確保や社会保障制度の負担増が求められる)や、医療需要の減少(患者数のピークが過ぎた)も大きな原因である。

医療界はグループ化と連携推進法人

厚労省の医療保険部会では、正常分娩の保険適用が少子化に拍車をかける懸念や、産科医院が閉鎖してしまう心配がある、との意見が医師会関係者から出されている。
(荒堀注:保険適用と診療所の減少は別に考えるべき、というのが医療関係者以外の共通認識で、それで事態は進むと思います)

人口減少の中で外国人の増加が

病院の倒産数は過去最多のベースであり、病院は現在大変な経営努力を迫られていて、民間病院はグループ化公的病院は地域連携推進法人として、やはりグループ化し、共同購入や若手医師の指導体制強化と相互派遣を目指している。

歯科医の経営はさらに厳しさを増している。

また老人福祉も介護事業も報酬見直しで倒産も増えている。特別養護老人ホームでさえ入所基準の厳格化と介護職員の減少のため倒産が出現してきた。

地方では大学入学者が減りつつあるので、今後地方での大学が閉鎖する可能性があり、さらに若者の地方離れはすすむだろう。

以上から病院が社会的使命を果たすためには

  • グループ化

  • 医療連携 

  • 経営の統廃合(民間に譲渡も)が必要となっている

このような人口減少と医療をめぐる環境変化の中で、助産所が経営を維持するのも厳しいので、助産所経営安定化策として、助産所業務を行いつつ空いた時間で次の様な業務も行うことを提案する。

  1. 養護教員

  2. 保育所

  3. 放課後等のディサービスにNSとして働く

そして、助産所が地域包括ケアシステムに参画できるよう市町の行政に働きかけることが重要というアドバイスがありました。

質疑応答の中では、伴走型相談支援に助産師を認めて欲しいとの意見がありました。

「そのような国や行政への働きかけは重要であるが、しかし結局、今のままでは厳しい立場に置かれ続けることに変わりない。助産所や自然分娩が日の目を見るようにするには、抜本的な改革が必要で、保険適用のタイミングに併せて助産師が声を上げることが大切だ」、という意見を、心に留めるべきだと思います。



動画コンテンツ、DVD販売中です!

SBSK制作の動画コンテンツ「自然なお産の再発見 ~子どもの誕生と内因性オキシトシン~」は好評発売中です!
DVDでの購入は SBSK-momotaro's STORE からどうぞ!
動画配信でご覧になりたい方は memid.online よりご購入ください!

2023年2月18日開催の講演会「頑張れ助産院 自然なお産をとり戻せ」のアーカイブ動画をDVDとして販売しております。

数量限定のため、売り切れの際はご容赦ください。
ご購入は SBSK-momotaro's STORE からどうぞ!


こちらもどうぞ。
SBSK自然分娩推進協会webサイト
メルマガ登録(メールアドレスだけで登録できます)


いいなと思ったら応援しよう!