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光って消える。ただそれだけ。
💫 💫💫
さっきからぼくは、体育座りをしながらあなたと星を見ている。特に何を話しているわけでもない。誰もいない真っ暗な草原。たまに冷たい風は吹いていたけれど、それがむしろ心地よかった。少し見上げたあたりで一番光っている星を見ている。しばらく同じところを見つめていると、それはパチパチ光って消える。瞬きをすると、今度はまた光り出す。なんでこんなことをしているのか、どれくらい時間が経ったのか覚えていない。とにかく夜空はただただ綺麗で、ぼくらを囲んだ周りの茂みに縁取られ、まるで覗き穴に顔を近づけるようにして、こちらを見下ろして黙っている。
あなたに見えている星がどんな姿をしているのかはわからない。でも、それでもいいと思う。ぼくとあなたは別の世界に生きていて、お互いのことをわかるようにはならない。でも。と思う。でもそれでいい。
また少し時間が経つと、あなたは指で暗い空をなぞりながら星座を教えてくれた。ぼくは一生懸命たどるけど、何度試しても指の差すところに星は見えない。ほら、あそこ。やっぱりどの星かわからない。追いかけても追いかけても、気付いたと思ったときにはもう、あなたの指はすでに違うところへ伸ばされている。
とうとうあなたは全部の星を数え終わってしまって、こちらに視線を寄越す。ぼくが全部わかったと笑い返すと、あなたは満足したように寝転んだ。それでいい。
📝📝📝
ぼくらは気づいた時から、この世界に投げ込まれていた。なぜここにいるのかわからない。どうやってこんな場所が出来上がったのかもわからない。でも、いつかぼくらは消えていなくなるらしい。一人残らず。みんなそうらしい。
それでもやっぱり、ぼくらはこうしてここにいる。同じ世界を見ているはずもないけれど、ぼくとあなたは確かにいる。ぼくは光っている。あなたも光っている。そうしないと周りの世界に溶けていってしまうから。自分の輪郭を保つためだけに、必死になりながら光を絶やすまいと歯を食いしばっている。それが正しいのか誰にもわからない。でもきっと、光っていないといけない。光が失われた瞬間、全てがどこかへ葬り去れられてしまうのだから。
時間がない。今までどれくらいの時間を過ごしただろう。ぼくらは、一度も消えることなく、休みなく、ただただ光っていた。そんなことをしていても結局いなくなるだけなのだから無駄だと誰かが言う。その通りだと思う。いつか終わってしまうことなんて、みんな知っている。でも、そんな人にはこう言ってやりたい。だからこそ、ぼくらはここで光っているんだよ。
ぼくとあなたが本当の意味でわかり合えることはない。一緒になりたいけれど、どうしてもできない。ぼくらは一人で生まれてきたし、これから消えていなくなるときだって一人だ。
だったら、だったらせめて今、このときだけはあなたと一緒にいたい。この理不尽を背負うには、ぼくはあまりにも小さくて耐えられない。あなたもそうだったらいいのに。心の底からそう思う。
ぼくがここにいるために、あなたは光っていないといけない。光りなさい。光れ。
💫💫💫
あした世界が終わるらしいね、とあなたは言う。そうらしいね、と僕は頷く。嘘だ。そんなことは知らない。おもむろにあなたは立ち上がって、ポケットから黒い種を取り出す。なんの種かもわからない。植えようとあなたが言う。あしたで全部終わるのに、、、?
そんな小さな抗議には構わず、あなたは地面に小さな穴を掘って、種をポロポロと落としていく。しょうがないからぼくも、じょうろを持ってきて穴を隠すように水をまく。
あした世界が終わるらしいね。あなたはもう一度言う。少し引き攣ったように笑っている。なぜか泣いている。そう気づいた瞬間、視界が一気に明るくなって、思わず目を閉じる。
目を開けるとあなたは見当たらない。周りを見渡してみても、背の低い草が左右に体を揺らしているだけだ。さっきの穴の方を見ると、そこには青白い花がポツンと咲いていた。どこかで声がした気がして、振り向く。それでもやっぱり、誰もいない。
空は少し白み始めていた。遠くで森の茂みがもぞもぞ動いている。星は今にも消えそうだ。もう一度じっと眺めてみる。またパチパチ光って、消える。瞬きをしてもう一度見つめる。けれどもう、星はなくなっていた。どこかで鳥が鳴いている。聞いたことのない鳴き声。
そういえばあなたって、誰だったんですか?
光って消えるただそれだけと知りながら
光る僕はきれいでしょう?
だからね 痛む胸に光る種を乗せて
幸せだねって言えるまで
光ってたいの
奪って逃げるただそれだけの命なら
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