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江戸と令和と人情

土曜日は母校の校友会に呼ばれたり、確定申告に追われたりと半日ほど労働に勤しんだ。今週は酒まみれの1週間で抜けるのは土曜のみ。読みかけの本を片手に早めに布団に突き刺さるも、あまりの物語の良さと美しい完結で目が覚める。

江戸時代の若き侍が自身の道を見つけ出していく話と聞くと退屈そうな話に聞こえるだろうが、町民の聞き込みや視点、そして彼らの人生を見ているうちにストレートだが人情という言葉が脳天に大きく現れる。

今まさにこの時代に失われつつある人の情が江戸時代と令和で巨大な差分を生み出し、今の世のひんやりとした無慈悲な冷たさを感じる。かたや江戸時代の人の温もりが伝わり涙腺が緩む。

どの時代も命は重くもあり軽くもあり、かつての戦は今の戦争で、無作為な人斬りはテロや誹謗中傷のように感じた。私たちは刀は持たないが言葉や情報という凶器にも変わるものを持っているし、それを悪意なく振るうことだってあるのだ。

読了後、一人布団で拍手して(素晴らしい本は毎回そうしてしまう)目を閉じるも、若き侍が得た自身の道やそこに多くの出会った人々の人情による支え合って今に立脚している様は他人事とは思えなかった。

色々思考が回り出して鳥がちゅんちゅん鳴き出す頃に睡魔が訪れ寝不足の有様だ。ささっと身支度を終え、家の猫たちの頭を撫で家を出る。目を細めるほど天気が良い。今日は友人らが京都マラソンに挑む日だ。いや、ちょうど今頃スタートを切っただろう。ジャックダニエルの給水所作っておく予定が外せない出張で東京へと向かっている。

あ、今ドクターイエローが横切りました。
ラッキー。

遠くには穏やかな太平洋が見え、その穏やかさを見ているとこの多忙さが間違ったもののように感じる。いや、確実に間違ってはいるのだとわかっているが、この狂気も嫌いじゃない。いつかどうせ、老け込んで動けなくなる。だったら今のうちに動いておくか。しょうがない。

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