「給与が低い」と悩む人へ
デザイン業界の若手から給与の悩みを聞いた。
給与がなかなか上がらない。どうやってきましたか?
というのが鬼端折りした問いなのだが、僕からすると「わかるぅ〜!」と元気に返してしまった。わかんないよね。誰も教えてくれないし。
少し僕の話をしておくと新卒からWEB制作会社のプランナーとして働き出して、転職は1回。創業は2回。みたいな流れです。新卒時代は今から20年前なので今の時代よりもっと見えない状況だったかな。
自分の経済的価値に気づけ!編
20年前のWEB制作シーンを想像できる人は若手にいないと思うけど、超ブルーオーシャン。まだFlash(懐かしい)全盛期で表現のしのぎを削り合う天下一武道会みたいな感じ。非常に楽しく濃密で寝るまもなく働いていた。
時代も良かった。WEBクリエイティブ業界には先人の積層がまだ浅かった。若くてもすぐに打席に立てて現場を預けてくれた。そういった背景もあって早熟ではあるがメキメキ結果を出せた。国内外のアワードを色々取れたのが1年目を超えたあたり。うわー給料めっちゃあがるんじゃないかなぁーと無知故のキラキラを抱えて、給与の面談へ。
…給与5,000円アップっすか…そうっすか…了解っす。
行きはキラキラ、帰りはどんよりといった面持ちでデスクに戻り天を仰ぐ。
社内で誰も取れてなかったアワードもいっぱいとったのに。なんでだろう。
イライラではなく、もやもやしたわからなさが頭を覆う。
お金とクリエイティブの関係性がよくわからない。
仕事で学んだことは、わからないことがあったら、まず自分で調べる。
すぐに聞くやつは伸びない!って先輩にも言われてたので、自分で調べる。でも調べ方がわからない。20代新卒平均給与とかどうでもいい情報しか出てこない。クリエイティブで結果を出し、給与が上がらなかった情報なんて、当時のインターネットには落ちていない。
給与が上がらない=評価されてない
そりゃもう転職を考えるいいトリガーである。しかしお世話になった会社。給与が低いから辞めたらぁ!という気持ちにはならない。せめて、自分がいた価値を残さないと…ん?自分がここにいる価値?これ大事じゃないか?
この思考の流れに自然と入れたのが良かった。
当時のオフィスは目黒。見渡すと無数のチームの島。目の前の僕のデスク。当時はマックではなくシンクパッドのノートPC。無数の資料や紙とペン。今自分が座っている椅子。これ、、、全部自分のために会社が買ってるものだ。
はたと気づく、自分の給与、家賃補助、交通費、社員旅行、もっと考えると僕を採用してくれたタイミングの採用コスト、あーーこのオフィスの俺のデスク一坪にも家賃が発生している。あれ、俺ってめっちゃコストかかってない?
新卒の面白いことを世の中に見せつけたい時代だ。全然、お金のことなんて視野に入っていなかった。でもこの時はじめて「自分というコスト」という維持コストに気づけた。当時、額面23万、手取り20万ちょっと切るみたいな世界線だ。それに対して、自分が携わった案件は話題性を狙いにいった原価率が非常に悪い仕事。クリエイティブばかり見て、商売を見ていなかった。
松倉くんを1名雇用するのに給与だけで23万x12ヶ月=276万が最低でも必要だ。これにさらに細かなお金が乗っていく。このオフィスビルの家賃を調べ坪単価に置き換える。結構いくんだなぁ。パソコン1台どのくらいだろう。20万くらいかぁ。とかとか。色々エクセルで積み立てていく。年間で松倉くん維持するのにこんなにもお金かかってるのかと驚く。
その隣に自分が携わった案件の請求金額と外注費をざっくり記載し、粗利を出す。合算すると赤じゃないがそんな大きな数字じゃない。腑に落ちた。アワードは1円にもならない。運動会でもらう金メダルくらい。会社はアワードを取ることが仕事じゃない。経済活動を通じて社会に役立って利益を生むことだ。社会人1年も経ってやっとわかった働く意味。若かったなぁ。
色々、自分なりの憶測で叩いた数字で計算すると松倉くんを採用して、利益化できるタイミングみたいなものが見えてくる。年間いくらくらい稼いでおくと会社にいてくれてありがとうなのか、損はしないが利益は産まないねなのかのラインが見えてくる。
勝手ながら自分で引いた松倉を採用してお金的にも利益が出たというラインを設定して、死に物狂いで利益つくって2年お世話になった会社を円満退職&転職をしました。途中でなんか合わないから転職した同期もいたけど、このことに気づいてから会社に対してめっちゃ不義理やなとわかるようになった。その損失額はまぁまぁな金額でお金の理解がないとワガママをいう子供のようにさえ見えた。
そこで自分自身の価値を設計してみようと考えだした。
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🍺ビールに代わる日記🍺
プランナーとして考え続ける日々や経営しながら苦悩する日々をつらつらと書いていきます。読者の質問には全て答えていこうと思っています。 頻度:…
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