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堀田善衛『時間』読書会(2023.8.11)

2023.8.11に行った堀田善衛『時間』読書会の模様です。

私も書きました。

中国は農夫の国である

 

YouTubeにアップされていた堀田善衛のインタビューを聞いていたら、戦後上海から日本に引き揚げてきたら『リンゴの唄』が流行っていてがっかりしたと語っていた。二・一ゼネストがGNQの介入により中止になり、国民主権の戦後民主主義の実践としての労働運動が、初っ端から挫折したおりに『リンゴの唄』を口ずさむような世間に失望したそうである。

 

陳の伯父は、愛国者を装いながらも日本軍部の協力者として、薬物の売買に従事していた。

 

日本の傀儡国家「満州国」で製造した薬物を、日本の軍部が中国で売りさばき、活動の資金源にしていた。(『中国近現代史』岩波新書 P.153参照) 本作には、大陸で暴走を起こした日本軍部の、諸々の悪事が描かれていいるが、日本の政府のコントロールを超えて、なぜこういうことが起こったかということを今も学問的に考えていかないと同じ轍を踏むと私は思う。

 

『ある種の政府官僚というものは、どんな職業の人よりもおどろくほどに無政府主義(アナーキイ)なものである。』(P.213)

 

助成金の不正受給や、薬物などで経済産業省の役人が逮捕されている昨今、私は、「ある種の官僚がアナーキーだ」と指摘は、言い得て妙だと思う。戦前も戦後も、日本人の為政者の気質は決して変わっていない部分を持っているとつくづく思う。桐野大尉みたいな人は、今もたくさんいる。自分の中にもいる。そういったものをチェックして、抑制していくのが、民主制の本来の機能だと思うが、『リンゴの唄』を口ずさんでいるだけでは済まないのである。

 

私は、最近中国語を少し勉強しはじめた。簡単な日常会話程度である。論語の精読コンテンツも細々と作って公開している。私は中国のことをよく知らないし、日本が中国の文化をさまざま取り入れて発展してきたとはいえ、中国と日本は似ているようでいて、実際は、あまりにも違うのである。

 

中国は農夫の国である。『あの農夫たちは敗者であるが、断じて敗者ではない、彼等はまず第一に、農夫なのだ。彼等が抵抗に参加するときには、決して敗者としてではなく、農夫として参加するのだ。」(P.219)

 

私が日本人と中国人が違うと思うのは、中国人の方が自然の巨大なサイクルの中に抗うことなく存在している姿勢である。それは、テレビなどで見る現代の中国にいる農村の貧しい人々に顕著に感じる姿勢である。近代という人工的な構築物に収まることのない、農夫のあり方が、人工的に構築された国家間の敵味方を超えてしまうという指摘は、なるほどと思った。

 

(おわり)

読書会の模様です。


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信州読書会 宮澤
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