頭山
ある日、右傾化したおじいさんの頭にバオバブの木が生えてきました。その、おじいさんのバオバブの木に、極右の排外主義者が群がり、ヘイトスピーチを繰り広げます。すると、オリーブの枝を掲げた反戦平和主義者が集まって、カウンター活動を始めます。警察もやってきて、付近は、護送バスが立ち並び、交通が制限されて、大迷惑です。おじいさんのバオバブの木の周りは、プラカードやら投石やらHIPIHOPやらが飛び交って、夜もおちおち眠れません。
怒ったおじいさんは、バオバブの木を抜き取りました。すると頭に大きな穴ができて、雨水が溜まって、そこに、外来の危険生物が住みつきました。するとテレ東がやってきて、『池の水ぜんぶ抜く』という特番をやるので協力してほしいと言います。おじいさんは、この際、池の水を全部抜いて、埋め立ててもらおうと思いました。すると、その埋立地に、駐留基地を移設するという話になってしまいました。おじいさんの家は、反対派に取り囲まれ、何度も住民投票が行われましたが、政府は工事を強行しました。おじいさんの頭の中の池に住んでいたジュゴンは、ある日、絶望して死んでいました。
元号が変わり、首相は、大統領を、国賓として招きました。おじいさんも晩餐会に招かれました。迎賓館を案内した後、大統領は、首相と一緒に、おじいさん頭の中の池の錦鯉に、餌をやりました。大統領も、首相も、最後はめんどくさくなって、えさ箱ごと池に投げました。マスコミは、非礼極まると非難しましたが、大統領は、ツイッターで、それは、フェイクニュースだとメディアと罵詈雑言の応酬しました。仲直りの印に、首相と大統領とおじいいさんは、ゴルフに行きました。世界のAokiも、戸張捷も、一緒に回りました。大統領は、ショートホールで、おじいさんの池に打ち込みました。怒って、「ドレイン・ザ・スワンプ!」と叫んだので、怖くなったおじいさんは、池に潜って、ボールを探したのですが、見つからないので、おじいさんのおでこからノーペナで打ち直しました。夜は、おじいさんの頭の中の池でとれたエビで炉端焼きを楽しみました。その席で大統領に頼まれて、おじいさんと首相はある中東の産油国に和平の仲介に行きました。その帰りにおじいさんの頭の中の池を航行していた石油タンカーが革命防衛隊に奇襲されたというニュースが飛び交いました。おじいさんは、なんとか無事でしたが、その日からふさぎこむようになりました。
おじいさんは、この世に嫌気がさして、自分の頭の池に身を投げて、死んでしまいました。
(おわり)
※この物語はフィクションです。登場する人物・団体・ 名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。