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【証券外務員一種試験受験生必見】オプション取引入門①


1.証券外務員一種試験とオプション取引

証券外務員一種試験では、オプション取引が出題されます。
予想配点は440点満点中、34点です。

オプション取引は「『ある商品を、将来のある期日において、あらかじめ定められた価格で、売買する権利』を売買する取引」をいいます。
しかし、この「売買する権利を売買する」というところが、直感的に理解することが難しいため、参考書や問題集で初めてオプション取引を学んだ方の中には苦手意識を持った方が多くおられるのではないでしょうか。

また、そのような方の中には、一瞬、「捨て問にしてしまおうか…」という考えも浮かんだ方もおられるでしょう。しかし、予想配点は高く、丸々捨ててしまうのはかなりのディスアドバンテージになると思います。
また、この証券外務員一種試験は、「とにかく受かってしまえばよい」という毛色が強い試験ではありますが、仮に捨て問にしてこの証券外務員一種試験を上手くやり過ごせたとしても、その後の実務や上級の試験において、オプション取引の理解が必要不可欠になり、結局一から勉強せざるを得ないということになるかもしれません。

証券外務員一種試験は、「金融系資格の登竜門」や「金融機関で働くための運転免許証」ともいわれるため、オプション取引についても、必要以上の高度な知識は問われません。
どうせ試験を受けるなら、オプション取引の素養は身に着けてしまおうという気持ちで取り組むのが良いと思います。
また、一度何となく理解をしてしまえば、「意外に簡単」と思えるようになるかもしれません。

筆者自身、初めてオプション取引を学んだ際には、参考書が何を言っているのかが分からず、理解に大変苦労しました。それは、オプション取引が何を目的に行われているのか、損益図は何を意味しているのか、どのようにして導き出されるのか等が分からなかったからです。
この記事は、そのような疑問に丁寧に答えること、そして、読者の方がオプション取引の問題を、暗記ではなく、できるだけ理解して解けるようになることを目指して作成しています。
「難しい」「分からない」と参考書や問題集を放り出さず、是非この記事を読んでみて、諦めずに取り組んでみてください。

2.オプション取引とは

オプション取引とは、上述の通り、「『ある商品を、将来のある期日において、あらかじめ定められた価格で、売買する権利』を売買する取引」をいいます。

堅苦しい具体例としては、「『日経平均株価を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、30,000円で買う(売る)権利』を、100円で売買するという取引」が挙げられます。

ただ、「日経平均株価」のように難しい具体例を取り上げると理解しにくいですので、もっと簡単な具体例を考えてみましょう。「ある商品」は正直、何でもよいのです。

簡単な具体例としては、例えば、「『リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う(売る)権利』を、10円で売買する取引」が挙げられます。

ここで、用語の確認をしておくと、上記の例のうち、
✓ 「リンゴ」のことを「原資産」
✓ 「1個100円」のことを「権利行使価格」
✓ 「10円」のことを「プレミアム」や「オプション料」
といいます。

3.「コール・オプション」と「プット・オプション」

続いて、オプションの種類について解説します。
普通に日本語で言えばいいものを、カタカナのかっこいい名前を付けただけですので、心配しなくて大丈夫です。

(1)コール・オプション
「買う権利」です。
「リンゴ1個を買う権利」は、コール・オプションになります。

(2)プット・オプション
「売る権利」です。
「リンゴ1個を売る権利」は、プット・オプションになります。

4.「買う権利を買う」・「買う権利を売る」・「売る権利を買う」・「売る権利を売る」

ここからがオプション取引の理解を難しくしてしまっているところですが、コール・オプション(買う権利)とプット・オプション(売る権利)それぞれに対して、「買う」と「売る」が存在しています。
従って、オプション取引のパターンは2×2で4通りになります。

そして、権利(買う権利・売る権利)の買手は、その権利を行使することも放棄することも選択できます。一方、権利の売手は、権利の買手が権利を行使してきた場合には、それに応じる義務が生じます。権利の売手は、「権利の買手が権利を行使する場合にはそれに応じること」を保証する代わりに、権利の買手から権利料を受け取っています。そのため、権利の売手は、権利の買手が権利を行使してきた場合には、当初の契約通り、それに応じなくてはなりません。

さて、かなり話が複雑になってきたと思いますので、具体例として、「『リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う(売る)権利』を、10円で売買する取引」で考えていきます。
登場人物は、
✓ 八百屋さん:来年、リンゴは値上がりすると考えている。
✓ リンゴ農家さん:来年、リンゴは値下がりすると考えている。
です。

①「コール・オプション(買う権利)」を「買う」
コール・オプション(買う権利)の買いのイメージは、「先に買っておいてよかった!」です。

コール・オプション(買う権利)を買う人として八百屋さんを考えます。
八百屋さんの頭の中は以下の通りです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来年、リンゴは値上がりして、1個200円になるはずだ。
 ↓
今のうちに、「リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う(権利)」を買っておけば、リンゴが1個200円になってしまっていても、1個100円で買えるぞ。
 ↓
確かにこの権利を買うために10円を支払うことにはなるが、リンゴが値上がりしたときに多く払うことになるはずの分(100円)を考えれば、全然得だ。
 ↓
仮に予想が外れてリンゴが値下がりしたとしても、権利を行使しなければよく、その場合、どんなに損を多く見積もっても権利料の10円だけだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このようにして、来年、リンゴが本当に値上がりして、1個200円になった場合、八百屋さんは「先に買っておいてよかった!」と思うはずです。これがコール・オプション(買う権利)の買いになります。

②「コール・オプション(買う権利)」を「売る」
コール・オプション(買う権利)の売りのイメージは、「しめしめ…」です。

コール・オプション(買う権利)を売る人としてリンゴ農家さんを考えます。
リンゴ農家さんの頭の中は以下の通りです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来年、リンゴは値下がりして、1個50円になるはずだ。
 ↓
馬鹿な八百屋が「来年、リンゴは値上がりする」などと言って、「リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で買う(権利)」を買うと言っている。
 ↓
リンゴは値上がりするわけはないのだから、どうせこの権利が行使されることはないだろう。そうしたら、権利料10円を丸々いただくことができる。しめしめ…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この後、来年、リンゴが値下がりした場合には、八百屋さんはわざわざ権利を行使して1個100円で買うということはしませんので、リンゴ農家さんは権利料10円を丸々いただくことができます。
これがコール・オプション(買う権利)の売りになります。

③「プット・オプション(売る権利)」を「買う」
プット・オプション(売る権利)の買いのイメージは、「先に売っておいてよかった!」です。

プット・オプション(売る権利)を買う人としてリンゴ農家さんを考えます。
リンゴ農家さんの頭の中は以下の通りです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来年、リンゴは値下がりして、1個50円になるはずだ。
 ↓
今のうちに、『リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で売る権利』を買っておけば、リンゴが1個50円になってしまっていても、1個100円で売れるぞ。
 ↓
確かにこの権利を買うために10円を支払うことにはなるが、リンゴが値下がりしてしたときに儲からなくなるはずの分(50円)を考えれば、全然得だ。
 ↓
仮に予想が外れてリンゴが値上がりしたとしても、権利を行使しなければよく、その場合、どんなに損を多く見積もっても権利料の10円だけだ。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

このようにして、来年、リンゴが本当に値下がりして、1個50円になった場合、リンゴ農家さんは「先に売っておいてよかった!」と思うはずです。これがプット・オプション(売る権利)の買いになります。

④「プット・オプション(売る権利)」を「売る」
プット・オプション(売る権利)の売りのイメージは、「しめしめ…」です。

プット・オプション(売る権利)を売る人として八百屋さんを考えます。
八百屋さんの頭の中は以下の通りです。

~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~
来年、リンゴは値上がりして、1個200円になるはずだ。
 ↓
馬鹿なリンゴ農家が「来年、リンゴは値下がりする」などと言って、「『リンゴ1個を、来年の8月1日に、たとえその日にいくらになっていようが、1個100円で売る権利』」を買うと言っている。
 ↓
リンゴは値下がりするわけはないのだから、どうせこの権利が行使されることはないだろう。そうしたら、権利料10円を丸々いただくことができる。しめしめ…。
~~~~~~~~~~~~~~~~~~~~

この後、来年、リンゴは値上がりした場合には、リンゴ農家さんはわざわざ権利を行使して1個100円で売るということはしませんので、八百屋さんは権利料10円を丸々いただくことができます。
これがプット・オプション(売る権利)の売りになります。

これまで見てきたことは、以下のように整理することができます。

①「コール・オプション(買う権利)」を「買う」という戦略を取る人
→原資産価格(リンゴの値段)が上昇すると予想する人(八百屋さん)

②「コール・オプション(買う権利)」を「売る」という戦略を取る人
→原資産価格(リンゴの値段)が下落すると予想する人(リンゴ農家さん)

③「プット・オプション(売る権利)」を「買い」という戦略を取る人
→原資産価格(リンゴの値段)が下落すると予想する人(リンゴ農家さん)

④「プット・オプション(売る権利)」を「売る」という戦略を取る人
→原資産価格(リンゴの値段)が上昇すると予想する人(八百屋さん)

原資産価格の上昇や下落を予想する人が、「先に買っておいてよかった!」や「先に売っておいてよかった!」、時には「しめしめ…」と思えるような取引を実現すること、これこそがオプション取引の目的になります。

なお、上述の例では、八百屋さんはリンゴを買うという選択肢しかなく、また、リンゴ農家さんはリンゴを売るという選択肢しかありませんでした。
しかし、実際の原資産は、リンゴなどではなく、日経平均株価(日経225)や東証株価指数(TOPIX)、有価証券オプション等となります。
そのため、現実には、八百屋さんも原資産を売ることもでき、また、リンゴ農家さんも原資産を買うこともできます。
その結果、八百屋さんとリンゴ農家さんそれぞれが「買う権利を買う」・「買う権利を売る」・「売る権利を買う」・「売る権利を売る」という戦略を取ることができるわけです。

5.第1回のまとめ

いかがでしたでしょうか。第1回は、オプション取引の概要や、「コール・オプション」や「プット・オプション」の意味、そして、「買う権利を買う」・「買う権利を売る」・「売る権利を買う」・「売る権利を売る」の意味について解説しました。
「売買する権利を売買する」というところがややむずかしいと思いますが、コールの買いは「先に買っておいてよかった!」、プットの買いは「先に売っておいてよかった!」、コールの売りとプットの売りは「しめしめ…」とイメージすると、何となく理解できるのではないでしょうか。
次回以降は、損益図やプレミアム、オプション取引の投資戦略(ストラテジー)について解説します。

ご質問やご意見等がございましたら、コメント欄にてご記入いただけますと幸いです。

6.参考文献

(1)フィナンシャル バンク インスティチュート 株式会社「うかる!証券外務員一種 必修テキスト 2022-2023年版」(2022年)
(2)野崎浩成「トップアナリストがナビする 金融の「しくみ」と「理論」」(2015年)


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